中古住宅のアスベストとは?売買時の重要事項説明とリフォーム前の確認ポイント
中古戸建や中古マンションを購入するとき、重要事項説明書などで初めて「石綿(アスベスト)」という言葉を目にすることがあります。
「古い建物だからアスベストが使われているのだろうか」「調査結果の記録がないと書かれているけれど大丈夫なのか」と、不安になる方もいるでしょう。
アスベストは、かつて住宅を含む多くの建築物で使用されてきた材料です。現在は原則として新たな使用が禁止されていますが、それ以前に建てられた建物には、当時使用された建材が残っている場合があります。
ただし、築年数だけでアスベストの有無を判断することはできません。また、不動産売買時に確認する「石綿使用調査の記録」と、購入後にリフォームや解体をするときに行う「事前調査」は、別の場面の話です。
中古住宅を検討するときに、どこまで確認できるのか。売買と工事、それぞれの場面に分けて見ていきます。
- 中古住宅でアスベストが気になるのはどんなとき?
- アスベストとは?なぜ住宅に使われてきたのか
- なぜアスベストは法律で規制されるようになった?
- 2006年以前の住宅では使用されている可能性がある
- 中古住宅の売買ではアスベストについて何を説明する?
- 「調査記録なし」は「アスベストなし」ではない
- 中古マンションでは管理組合・管理会社の資料も確認
- 売買時の確認とリフォーム・解体前の事前調査は別
- リフォーム・解体前には石綿の事前調査が必要
- 80㎡未満・100万円未満でも調査不要とは限らない
- アスベストが確認されると工事費が増えることも
- 中古住宅を購入する前に確認しておきたいこと
- アスベストだけで中古住宅の良し悪しを決めない
- 参考情報
- 辰巳地所のご紹介
- ご相談はこちら
中古住宅でアスベストが気になるのはどんなとき?
中古住宅の購入でアスベストを意識するきっかけとして多いのが、重要事項説明です。
建物について過去に石綿使用の有無を調査した記録がある場合には、その内容が重要事項説明の対象になります。一方で、調査結果の記録そのものが存在しない住宅もあります。
ここで気をつけたいのは、「調査結果の記録がない」という記載が、必ずしも「アスベストが使われている」という意味でも、「使われていない」という意味でもないことです。
古い住宅を購入する場合には、アスベストの使用可能性だけで判断するのではなく、現在確認できる資料と、購入後に予定しているリフォームや解体工事まで含めて考える必要があります。
アスベストとは?なぜ住宅に使われてきたのか
アスベストは、天然に産出する非常に細い繊維状の鉱物です。
耐熱性や耐火性などに優れていたため、かつては建築物だけでなく幅広い製品に使われていました。住宅関係では、屋根材、外壁材、内装材、断熱材、保温材、耐火被覆材など、さまざまな建材に使用されてきた経緯があります。
問題となるのは、石綿繊維が空気中に飛散し、それを吸い込むことです。厚生労働省も、石綿は「そこにあること自体」が直ちに問題なのではなく、飛散した繊維を吸入することが問題になると説明しています。石綿繊維を長期間吸入することで、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などにつながるおそれがあります。
そのため、アスベスト含有建材が使われている可能性があるというだけで、直ちにその住宅に居住できないという話ではありません。
一方、建材の種類や劣化・損傷の状態、切断・破砕・解体などによって飛散の可能性は変わります。個々の建物について一律に「安全」「危険」と判断するのではなく、建材とその状態を確認することが基本となります。
なぜアスベストは法律で規制されるようになった?
現在は厳しく規制されているアスベストですが、過去には建築材料として広く利用されていました。
その後、石綿へのばく露と肺がん、中皮腫などの健康障害との関係について知見が蓄積され、国内でも段階的に規制が強化されてきました。
日本では1975年に石綿の吹付け作業が原則禁止され、1995年には発がん性の高いアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)の製造・輸入・使用などが禁止されました。
2004年には住宅屋根用化粧スレートや窯業系サイディングなどを含む一部の石綿含有製品が禁止対象となり、2005年には「石綿障害予防規則」が制定されました。
そして2006年には、石綿を重量の0.1%を超えて含有する製品について、製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則として全面禁止されています。
つまり、現在の中古住宅に石綿含有建材が残っていることがあるのは、建築当時には使用が認められていた建材が存在したためです。
「築古住宅にアスベストがある可能性がある=建築当時に違法な工事が行われた」ということではありません。
現在は、新たな使用を原則禁止するだけでなく、既存建物を解体・改修するときの調査や飛散防止についてもルールが設けられています。
2006年以前の住宅では使用されている可能性がある
2006年9月の原則全面禁止は、中古住宅を見るうえで一つの目安になります。
ただし、「2006年より前に建てられた住宅にはアスベストが入っている」「2006年以降なら絶対に使われていない」と単純に判断することはできません。
使用されていた建材の種類や製造時期はそれぞれ異なります。また、建物完成後に増改築や補修工事が行われていることもあります。
国土交通省も、アスベストの使用状況については設計図書だけでは確認できない場合があり、必要に応じて現地調査などを行う考え方を示しています。
建築年月はあくまで確認材料の一つとして考え、実際の含有有無を確定する必要がある場合には専門的な調査が必要になります。
中古住宅の売買ではアスベストについて何を説明する?
中古住宅の売買では、建物について石綿使用の有無を調査した結果の記録が保存されている場合、その内容が重要事項説明の対象になります。
国土交通省の現在の運用では、調査結果がある場合、調査を実施した機関、調査範囲、調査年月日、石綿使用の有無、使用箇所などを説明することになっています。
たとえば、過去に建物全体を対象としたアスベスト調査が行われ、その記録が残っていれば、その内容を確認できます。
ただし、宅地建物取引業者に対して、売買する建物ごとに新しく石綿含有調査を実施することまで義務付けられているわけではありません。
売主や所有者に調査記録の有無を確認し、必要に応じて管理組合、管理会社、施工会社などにも問い合わせます。そのうえで記録が存在しない、または存在するかどうか判明しない場合には、その確認結果をもとに説明することになります。
「調査記録なし」は「アスベストなし」ではない
中古住宅の重要事項説明で、特に誤解しやすいのがこの点です。
「石綿使用調査結果の記録なし」と記載されていた場合、それだけを見て、
「アスベストを調べた結果、使われていなかった」
と考えることはできません。
そもそも石綿使用の有無を調査した記録が確認できていない場合もあるからです。
反対に、「記録がないからアスベストが使われている」と判断することもできません。
大切なのは、
「調査を実施して石綿を含んでいないことが確認された」のか、
それとも、
「石綿使用について確認できる調査記録そのものがない」のか、
を分けて考えることです。
中古住宅を購入するときは、「有」「無」の欄だけを見るのではなく、どのような資料が確認されているのかまで説明を受けると分かりやすくなります。
中古マンションでは管理組合・管理会社の資料も確認
中古マンションでは、区分所有者である売主本人がアスベスト調査の資料を保管していなくても、管理組合や管理会社などが建物全体に関する資料を保管していることがあります。
国土交通省の宅地建物取引業法の運用でも、必要に応じて管理組合、管理業者、施工会社へ調査記録について問い合わせることが示されています。
ただし、調査記録が存在していても、マンション全体を調査したものなのか、一部だけを対象にしたものなのかは資料によって異なります。
「調査結果あり」という事実だけでなく、どの部分を対象にした調査なのかを見ることも大切です。
将来、専有部分を大きくリフォームする予定がある場合には、売買時の資料だけで判断せず、施工段階で改めて確認することになります。
売買時の確認とリフォーム・解体前の事前調査は別
ここは、中古住宅の購入時に特に分けて考えたいところです。
| 場面 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 中古住宅の売買 | 保存されている石綿使用調査結果の記録を確認 |
| リフォーム・解体 | 工事対象部分の石綿含有の有無を事前調査 |
売買時に「石綿使用調査結果の記録なし」だったからといって、購入後のリフォーム工事でも調査をしない、という意味ではありません。
反対に、売買時に過去の調査記録が確認できた場合でも、その調査範囲と今回工事する部分が同じとは限りません。
住宅を「売買する場面」と「壊したり改修したりする場面」では、確認する目的が違うと考えると分かりやすいでしょう。
リフォーム・解体前には石綿の事前調査が必要
現在、建築物を解体・改造・補修する際には、原則として工事対象部分について石綿含有建材の有無を事前に調査する必要があります。
大気汚染防止法でも、建築物などの解体・改造・補修作業を行う際には、石綿含有建材の使用の有無について事前調査を行い、石綿が使用されている場合には飛散防止のための作業基準を守ることが求められています。
2023年10月以降に着工する建築物の解体・改修では、原則として建築物石綿含有建材調査者など、一定の資格を持つ者による事前調査が必要です。
一戸建て住宅や共同住宅の住戸内部については、「一戸建て等石綿含有建材調査者」が調査できる仕組みも設けられています。
たとえば、中古戸建を購入して屋根を葺き替える、外壁を改修する、間取りを変更するため壁を撤去するといった場合には、施工会社側で工事部分の建材を確認することになります。
80㎡未満・100万円未満でも調査不要とは限らない
アスベスト関係の制度では「80㎡」「100万円」という数字を目にすることがあります。
現在、事前調査結果を行政へ報告する必要がある代表的な工事は、
建築物の解体工事では対象部分の床面積合計が80㎡以上、
建築物の改修工事では請負金額が100万円以上、
の場合です。
ただし、この基準は主に「事前調査結果を行政へ報告する必要があるか」という基準です。
80㎡未満の解体工事や100万円未満の改修工事なら、アスベストの事前調査自体を行わなくてもよいという意味ではありません。
厚生労働省の石綿総合情報ポータルでも、これらの規模に該当せず行政への報告義務がない工事であっても、事前調査は実施しなければならないと案内しています。
中古住宅を購入後に小規模なリフォームを予定している場合でも、工事内容によっては石綿の確認が関係してきます。
アスベストが確認されると工事費が増えることも
石綿含有建材が確認された場合、通常の解体・リフォーム工事とは異なる対応が必要になることがあります。
建材の種類や施工方法に応じて飛散防止措置を取り、除去した建材についても適切に処理しなければなりません。大気汚染防止法では石綿飛散防止のための作業基準が定められ、廃棄についても関係法令に沿った処理が必要です。
そのため、調査や分析、養生、除去、廃棄物処理などによって、当初予定していた工事費より費用が増える場合があります。
ただし、「アスベストがあれば一律○万円」といった相場で考えることはできません。
建材の種類、使用されている場所や量、工事範囲、飛散性、施工方法などによって費用は変わります。
特に、建替え前提で古家付き土地や中古戸建を購入する場合、大規模なリノベーションを予定している場合には、物件価格だけでなく解体・改修費用まで見ておくと安心です。
中古住宅を購入する前に確認しておきたいこと
築年数の経過した中古住宅を検討するときは、まず建築時期を確認します。
そのうえで、過去に石綿使用について調査した資料が残っているか、増改築や大規模なリフォームの履歴があるかなども確認できれば、判断材料が増えます。
ただし、売買時点ですべての建材について石綿含有の有無を確定しなければ住宅を購入できない、というわけではありません。
むしろ大切なのは、購入後に何をする予定なのかです。
そのまま居住する住宅と、購入直後に壁や天井まで撤去してフルリノベーションする住宅では、アスベストについて事前に確認する意味も変わってきます。
建替えを予定している中古戸建なら、将来の解体工事まで含めて施工会社へ相談する方法があります。
中古マンションでリノベーションを予定している場合は、管理規約や工事条件とともに、対象部分の建材についても施工会社に確認しておくとよいでしょう。
アスベストだけで中古住宅の良し悪しを決めない
アスベストは、築年数の経過した住宅を検討するときに確認しておきたい項目の一つです。
一方、「アスベストが使われている可能性がある」という理由だけで、その住宅の良し悪しが決まるわけではありません。
中古住宅には、雨漏り、耐震性、屋根や外壁の状態、給排水設備、過去の修繕履歴など、ほかにも確認したい部分があります。
アスベストについても、
過去の調査記録があるのか、現在どのような状態なのか、購入後にどのような工事を予定しているのか、
という視点から考える方が現実的です。
現在の売買時点では調査記録がなくても、将来リフォーム・解体をする際には、現行法令に基づいた事前調査や必要な措置が行われます。
「古い住宅だから怖い」と考えるのではなく、分かっている情報と分かっていない情報を区別し、必要な場面で専門家による調査を行う。そのうえで物件価格や建物状態、将来の工事費用まで含めて検討することが、中古住宅では大切になります。
参考情報
確認日:2026年9月17日
国土交省「アスベスト対策Q&A」
URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q%26A/index.html
国土交通省「宅地建物取引業法 法令改正・解釈について」
URL:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html
厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/faq_asbest.html
厚生労働省「労働安全衛生法令における石綿規制の推移」
URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000935614.pdf
厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続きについて」
URL:https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/procedures/
環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」
URL:https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/
辰巳地所のご紹介

辰巳地所では、市原市・千葉市を中心に、千葉県内および一都三県で中古戸建・中古マンションを含む不動産の購入・売却をサポートしています。
中古住宅では、建築時期だけでなく、雨漏り、修繕履歴、給排水設備、建物の状態などを確認しながら取引を進めています。石綿使用について過去の調査記録が確認できる場合には、その資料も踏まえて重要事項をご説明します。
購入後に大規模なリフォームや建替えを予定している場合には、必要に応じて施工会社や専門の調査者へ確認し、工事費も含めて検討しておくことが大切です。
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