寝屋川市で「空き家税」条例が成立|空き家を持ち続けるリスクと所有者が考えたいこと
大阪府寝屋川市で、空き家の流通を促すための新しい税として「寝屋川市空き家流通促進税条例」が成立しました。
寝屋川市の令和8年6月市議会定例会では、議案第45号として「寝屋川市空き家流通促進税条例の制定」が提出され、付議事件一覧表では、令和8年7月9日に原案可決となっています。
空き家に関する税と聞くと、「空き家を持っているだけで、すぐに大きな税金がかかるのでは」と不安になる方もいるかもしれません。
ただ、今回の動きは、全国のすべての空き家に同じ税金がかかるという話ではありません。寝屋川市という一つの自治体が、空き家の流通を進めるために独自の条例を設けた、という位置づけです。
一方で、空き家をめぐる自治体の対応が、以前よりも一段踏み込んだものになってきていることは確かです。相続した家、長く使っていない実家、管理が難しくなってきた住宅を所有している方にとっては、今回のニュースをきっかけに、今後の方針を考えるよいタイミングといえます。
寝屋川市で空き家税の条例案が可決・成立
寝屋川市の条例名は「寝屋川市空き家流通促進税条例」です。
名称からも分かるように、単に税収を得るためだけではなく、空き家を市場に流通させること、つまり売却・賃貸・活用へ動きやすくすることを目的とした制度と考えられます。
寝屋川市の議案書では、空き家流通促進税について、地方税法第5条第3項の規定に基づき、市税として課する普通税とされています。また、空き家については、住宅のうち、現に人が居住していない状態にあると認められるもの、という趣旨の定義が置かれています。
今回の条例は寝屋川市の制度です。市原市や千葉市など、他の自治体の空き家に直ちに同じ税金がかかるわけではありません。
ただし、空き家が増え続けるなかで、各自治体が空き家対策を強めている流れは全国的に見られます。空き家を所有している方は、「今は何も言われていないから大丈夫」と考えるだけでなく、将来的な管理・売却・活用の選択肢を早めに見ておくことが大切です。
寝屋川市の空き家税はどのような内容か
寝屋川市の空き家流通促進税は、寝屋川市内にある空き家を対象に、その所有者に課される税として設計されています。
条例案では、課税の考え方として、次のような要素が示されています。
- 空き家に係る固定資産税額を基準とする「家屋割」
- 空き家の敷地の価値に、空き家の延べ面積を反映する「家屋立地割」
- 家屋割と家屋立地割を合算して課税する仕組み
- 税率は100分の35
また、すべての空き家が一律に課税されるわけではありません。条例案では、所有者が亡くなったことにより空き家になった場合について、一定期間は課税しない扱いが設けられています。さらに、事業用に使っているもの、一定期間内に事業用として使う予定のもの、賃貸募集や売却を始めて一定期間内のものなども、課税対象から外れる仕組みが置かれています。
災害を受けた場合や、生活保護を受けている方などについては、減免に関する規定もあります。施行日は、条例上「規則で定める日」とされており、施行後5年ごとに制度の状況を検討する規定も設けられています。
実際の課税対象、申告方法、施行日、減免の運用などは、今後の市の規則や具体的な公表内容を確認する必要があります。
空き家税は「売却や活用を促すための税」と考えるとわかりやすい
空き家税という言葉だけを見ると、所有者への罰則のように感じるかもしれません。
けれど、寝屋川市の条例名には「流通促進」という言葉が入っています。ここが大事な点です。
長く使われていない住宅が増えると、まちの中に管理されにくい建物が残ります。所有者にとっても、毎年の固定資産税、草木の管理、建物の修繕、防犯面の不安などが続きます。
そのまま何年も経つと、売ろうと思ったときには建物の傷みが進み、解体費や測量費、残置物処分費などの負担が大きくなることもあります。
空き家税は、こうした状態を放置せず、所有者が「売る」「貸す」「使う」「解体する」といった選択肢を考えるきっかけをつくる制度と見ると理解しやすいです。
もちろん、空き家には思い入れがあります。相続した実家であれば、簡単に手放せない気持ちがあって当然です。
だからこそ、税金の話だけで急いで判断するのではなく、物件の状態、家族の意向、資金面、将来の使い道を一つずつ確認していく必要があります。
なぜ自治体は空き家対策を強めているのか
背景にあるのは、全国的な空き家の増加です。
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高となっています。さらに、賃貸用・売却用・二次的住宅を除く空き家も増えています。(総務省統計局)
空き家といっても、すべてが問題になるわけではありません。
売却中の住宅、賃貸募集をしている住宅、別荘として使われている住宅などは、流通や利用の見込みがあります。一方で、誰も住まず、売却や賃貸にも出されず、管理も十分でない住宅が増えると、近隣への影響が出やすくなります。
国も空き家対策を強めています。国土交通省の空家等対策関連情報では、令和5年12月13日に改正空家法が施行されたことが示されています。改正後は、特定空家等だけでなく、その前段階にあたる管理不全空家等への対応も重視されています。(国土交通省)
自治体が空き家の調査や指導、流通促進に力を入れるのは、まちの安全や住環境を守るためでもあります。
空き家を放置すると、税金以外にも負担が増える
空き家の負担は、税金だけではありません。
むしろ、所有者が後から困りやすいのは、日々の管理と、時間が経ってから表面化する費用です。
たとえば、庭木や雑草が伸びると、近隣から相談が入ることがあります。建物の外壁や屋根が傷めば、台風や強風の際に飛散するおそれもあります。雨漏りが続けば、室内の傷みは一気に進みます。
空き家に残置物が多い場合は、売却や解体の前に片付けが必要です。相続人が複数いる場合は、誰が費用を負担するのか、売るのか残すのかという話し合いにも時間がかかります。
また、建物が古くなるほど、買い手が建物を使う前提で検討しにくくなります。結果として、土地として売る、解体してから売る、買取を検討するなど、選択肢が変わっていくこともあります。
空き家の問題は、放置していても自然に解決しにくいものです。
何か大きな問題が起きてから動くよりも、まだ選択肢が残っている段階で確認した方が、結果的に負担を抑えられる場合があります。
固定資産税の住宅用地特例と空き家対策の関係
空き家所有者が気にしておきたい制度に、固定資産税の住宅用地特例があります。
住宅が建っている土地については、一定の要件のもとで固定資産税の課税標準が軽減されます。国土交通省の資料では、小規模住宅用地は固定資産税の課税標準が6分の1に、一般住宅用地は3分の1に軽減されることが示されています。(国土交通省)
この特例があるため、「古い家でも建物を残しておいた方が税金が安い」と考える方も少なくありません。
しかし、空き家対策の面では注意が必要です。
特定空家等や管理不全空家等として市区町村長から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の適用対象から外れる場合があります。国土交通省の資料でも、勧告を受けた特定空家等や管理不全空家等の敷地について、住宅用地特例の適用対象から除外されることが示されています。(国土交通省)
つまり、「建物があるから税金が安い」という考えだけで放置するのは、以前よりリスクが大きくなっています。
古い建物を残すのか、解体するのか、売却するのかは、税金だけでなく、建物状態、接道、再建築の可否、売却価格、解体費を含めて判断する必要があります。
相続した空き家をそのままにしやすい理由
空き家が増える背景には、相続の問題があります。
親が住んでいた家を相続したものの、自分は別の場所に住んでいる。兄弟姉妹で共有になっている。片付けに時間がかかる。思い出があり、すぐに売る気持ちになれない。
このような事情は、とても自然なものです。
不動産の実務でも、「売りたいけれど、まだ片付いていない」「兄弟の意見がまとまらない」「古い家なので売れるか分からない」という相談は珍しくありません。
特に実家の場合、単なる資産ではなく、家族の記憶が詰まった場所です。だから、気持ちの面で踏み切れないことがあります。
ただ、時間が経つほど、建物の傷みは進みます。相続人の世代がさらに変わると、権利関係が複雑になることもあります。
売るかどうかを今すぐ決められなくても、現地の状態、名義、境界、道路、建物の老朽化、残置物の量を確認しておくことは、将来の選択肢を守ることにつながります。
空き家を持っている人が早めに確認したいこと
空き家の方針を考えるときは、まず物件の状態を知ることから始めます。
特に確認しておきたいのは、建物そのものだけではありません。
名義が誰になっているか、相続登記は済んでいるか、土地の境界は分かるか、前面道路は建築基準法上の道路か、再建築できる土地か、上下水道や浄化槽はどうなっているか。こうした点によって、売却方法や価格、買い手のつきやすさは変わります。
古い一戸建ての場合、見た目よりも権利関係や道路条件の方が大きな問題になることもあります。
たとえば、再建築が難しい土地であれば、一般的な住宅ローンを使う買主には売りにくい場合があります。境界が不明確であれば、測量が必要になることもあります。建物内に荷物が多ければ、売却前に片付けるのか、現況のまま相談するのかを考える必要があります。
空き家の判断は、広告に出す前の調査が大切です。
「古いから売れない」と決めつける必要はありませんが、「何となく売れるだろう」と考えるのも危険です。物件ごとの条件を見たうえで、現実的な選択肢を検討することが大切です。
売る・貸す・使う・解体する、どれがよいかは物件ごとに違う
空き家の選択肢は、大きく分けると「売る」「貸す」「使う」「解体する」です。
ただし、どれが正解かは物件ごとに違います。
駅から近く、建物状態がよい住宅であれば、賃貸や中古住宅としての売却が検討しやすいかもしれません。建物が古く、修繕費が大きくなりそうな場合は、土地としての売却や解体を考えることもあります。
一方で、解体すれば必ず売りやすくなるとも限りません。解体費がかかりますし、土地の固定資産税の負担が変わることもあります。買主が自分で建物を解体したいケースもあります。
賃貸に出す場合も、修繕費、管理、入居者対応、将来の売却時期を考える必要があります。
つまり、空き家対策は「とにかく売る」「すぐ解体する」と単純に決めるものではありません。
所有者の希望、家族の事情、物件の市場性、費用、税金、将来の管理負担を合わせて考えることが大切です。
市原市・千葉市でも空き家は他人事ではない
今回の空き家税は、寝屋川市の制度です。
そのため、市原市や千葉市にある空き家に、寝屋川市の空き家流通促進税が課されることはありません。
ただし、空き家問題そのものは、千葉県内でも他人事ではありません。
市原市や千葉市でも、親世代が住んでいた家を子世代が相続し、子世代はすでに別の場所に住んでいるというケースがあります。郊外の一戸建て、古い住宅地の実家、駅から距離のある土地などは、売却や活用の方針を決めるまでに時間がかかりやすいものです。
特に、遠方に住んでいる相続人が管理する場合、草木の手入れや台風後の確認だけでも負担になります。
空き家の管理は、普段は目立ちません。しかし、屋根の破損、雨漏り、庭木、越境、近隣からの連絡などが重なると、一気に対応が必要になります。
寝屋川市の空き家税は千葉県の制度ではありませんが、空き家を長く放置することへの社会的な目線や行政対応が変わってきていることは、千葉県内の所有者にとっても意識しておきたい流れです。
空き家の相談は「まだ困っていない段階」でも早めがよい
空き家の相談は、問題が起きてからでないとできないわけではありません。
むしろ、まだ大きなトラブルが起きていない段階の方が、選べる道が多いことがあります。
すぐに売るつもりがなくても、今の価格感を知る。解体費の目安を知る。賃貸に出せる可能性を知る。相続人の間で話し合う材料を集める。
それだけでも、将来の不安は軽くなります。
空き家は、家族の思い出と現実的な管理負担が重なる不動産です。急いで決める必要がない場合でも、何も確認しないまま時間だけが過ぎると、後から選択肢が狭くなることがあります。
寝屋川市の空き家税のニュースは、空き家所有者にとって少し重く感じる話題かもしれません。
ただ、見方を変えれば、「空き家をどうするか考える時期が来ている」というサインでもあります。
市原市・千葉市をはじめ、千葉県内で空き家や相続不動産をお持ちの方は、売却するかどうかを決める前でも、まずは現地の状況や権利関係を確認してみるとよいでしょう。
参考情報
確認日:2026年7月11日
寝屋川市|令和8年6月市議会定例会の議案書を掲載しました
https://www.city.neyagawa.osaka.jp/topics/27163.html
総務省統計局|令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
国土交通省|固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712029.pdf
e-Gov法令検索|空家等対策の推進に関する特別措置法
https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
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