大網駅南地区で約18haのまちづくり|2026年8月豪雨と浸水対策、今後の計画を解説
JR大網駅の南側で、約18haに及ぶ新たなまちづくりが動き始めています。
大網白里市は2026年7月27日、「大網駅南地区まちづくり方針」を正式に策定しました。駅前広場やアクセス道路などの都市基盤を整えながら、商業・業務・生活利便施設や住宅などを誘導し、将来の市の中心拠点を形成していく長期的な計画です。
ところが、そのわずか2週間余り後の8月13日、千葉県は記録的な大雨に見舞われました。
気象庁が後に「令和8年8月千葉豪雨」と命名したこの豪雨では、大網白里市も災害救助法の適用地域となりました。現在も県や市による復旧・被災者支援が続いています。
新しいまちづくりの直前に起きた大きな水害。
ただし、ここで押さえておきたいのは、大網駅南地区の浸水対策が、今回の豪雨を受けて急きょ持ち上がったものではないという点です。
正式なまちづくり方針には、豪雨が発生する前から水害への備えが大きな課題として盛り込まれていました。
- 大網駅南地区の「まちづくり方針」は2026年7月に正式策定
- 対象は大網駅南側の約18ha
- 駅前広場だけではない、大網白里市の新しい中心拠点へ
- 浸水対策は2026年8月豪雨より前から計画の大きなテーマだった
- 排水だけでなく、雨水貯留や宅地・道路の嵩上げも盛り込む
- その直後に発生した「令和8年8月千葉豪雨」
- 今回の豪雨で「まちづくり計画」は変わるのか
- 大網白里市は以前から水害の記録を防災情報に生かしている
- 新しく整備されれば「水害の心配がなくなる」わけではない
- 大網駅周辺で住宅を検討するなら、将来計画と現在の状況を分けて見る
- これからは「事業化できるか」を具体的に検討する段階へ
- まとめ|大網駅南地区のまちづくりは「便利になるか」だけでは語れない
- 参考情報
- 辰巳地所のご紹介
- ご相談はこちら
大網駅南地区の「まちづくり方針」は2026年7月に正式策定
大網駅南地区の将来像については、今回突然計画が持ち上がったわけではありません。
2022年10月、地区内の土地所有者や関係地区長で構成する「大網駅南地区まちづくり協議会」が発足しました。その後、地域で検討を重ね、2025年6月30日に「大網駅南地区まちづくり構想」を市へ提言しています。
市はその構想を基礎に、民間事業者とのサウンディング型市場調査も実施しました。
そして2026年6月10日から7月10日まで「大網駅南地区まちづくり方針(素案)」についてパブリックコメントを行い、7月27日に正式な方針として策定しています。
そのため現在は、単に「大網駅の南側を開発したい」という構想だけが存在する段階ではありません。
一方で、道路や建物の設計、着工時期、具体的な事業費まで決まったわけでもありません。
市の資料では、現在の「まちづくり方針の決定」をSTEP1とし、その次に民間の「事業化検討パートナー」を募集・選定して、事業の実現可能性を検討する流れが示されています。基本計画・実施計画、都市計画手続き、事業認可、実際の整備・建設はその先です。
つまり、方向性は正式に決まったものの、具体的な街の姿はこれから詰めていく段階と考えるのが分かりやすいでしょう。
対象は大網駅南側の約18ha

出典:大網駅南地区まちづくり方針
まちづくりの対象となるのは、JR大網駅の南側に隣接する約18haです。
北側をJR外房線、東側を主要地方道山田台大網白里線、南側を主要地方道千葉大網線、西側を市道01-005号線に囲まれた区域で、地区内には二級河川の小中川も流れています。
駅のすぐ近くでありながら、現在は区域の大部分が市街化調整区域です。貸駐車場や住宅のほか、水田などの農地も広がっています。
そのため、既成市街地の古い建物をまとめて建て替える、いわゆる典型的な「駅前再開発」とは少し性格が異なります。
現在の土地利用を転換しながら、道路や駅前広場、公園などの都市基盤を整え、住宅や生活利便施設を計画的に配置していく新しい市街地づくりに近い計画です。
駅前広場だけではない、大網白里市の新しい中心拠点へ
市は大網駅南地区を、将来的に市全体の中心となる「コンパクトで賑わいのある拠点」として整備する方針です。
まちづくり方針では、大きく分けて、
「都市機能が整い、にぎわいと魅力のあるまち」
「自然と調和し、心地よく暮らせるまち」
「誰もが安全で安心して暮らせるまち」
という3つの目標が掲げられています。
駅前には商業・業務・生活利便施設などを誘導するとともに、新しい駅前広場やアクセス道路を整備し、交通結節機能を高める考えです。
一方、地区全体を商業エリアにするわけではありません。
民間事業者へのサウンディングでは、住宅を中心としながら、駅前に商業・生活利便施設を配置する土地利用が現実的との意見も示されました。正式な方針でも、良好な住宅地、公園・緑地、小中川を生かした水辺空間などを組み合わせる方向が示されています。
そのため「大型商業施設が建設される」「映画館ができる」といった話を現段階で確定事項として受け取るのは早いでしょう。
これから事業化を検討する中で、具体的な施設や規模が決まっていくことになります。
浸水対策は2026年8月豪雨より前から計画の大きなテーマだった
今回の記事で特に注目したいのが、この点です。
大網駅南地区まちづくり協議会は2025年6月30日に構想を市へ提言した際、あわせて「都市基盤施設の整備や浸水対策に関する要望書」を提出しています。
さらに、2026年7月に策定されたまちづくり方針には、大網駅南地区について、
「地盤が低く、豪雨時には小中川の影響により広い範囲で浸水被害が生じるなど、水害が発生しやすい」
という現状認識が明記されています。
つまり、8月13日の豪雨が起きて初めて水害リスクが認識されたわけではありません。
地域で構想を検討していた段階から、水害への備えは新しい街をつくるうえで避けて通れないテーマとして扱われていました。
そして、正式な方針が策定された直後に「令和8年8月千葉豪雨」が発生したことになります。
排水だけでなく、雨水貯留や宅地・道路の嵩上げも盛り込む
大網駅南地区まちづくり方針を見ると、水害対策は単に「排水路を整備する」という内容にとどまりません。
市は、河川改修や排水施設の整備・機能強化に加えて、雨水貯留等の導入によって内水・外水氾濫を抑える方向を示しています。
さらに浸水想定区域については、宅地や道路の嵩上げなどによって安全な地盤高を確保し、浸水被害の軽減を図る方針も盛り込まれました。ハザードマップの周知や避難体制の強化も含まれています。
ここでいう「内水」は、排水能力を超える雨が降るなどして、河川へ排水しきれない雨水が市街地にたまるような浸水です。一方、「外水」は河川の水位上昇や氾濫によって生じる浸水を指します。
大網駅南地区では、小中川の河川対策だけを見るのではなく、地区内に降った雨をどう排水し、どう一時的にため、宅地そのものをどの高さに設定するかまで含めて考える必要があるということです。
ただし、これらは現時点ではまちづくりの方針です。
「すべての宅地を一律に何メートル嵩上げする」「この場所にこの大きさの調整池を造る」といった詳細設計まで決定しているわけではありません。
今後の可能性調査や基本計画、実施計画の中で具体化していく部分です。
その直後に発生した「令和8年8月千葉豪雨」
2026年8月13日、千葉県では非常に激しい大雨となりました。
気象庁によると、千葉県では13日夕方以降に線状降水帯が発生し、記録的な大雨となりました。気象庁は翌14日、一連の豪雨を「令和8年8月千葉豪雨」と命名しています。
大網白里市にも8月13日付で災害救助法が適用されました。
千葉県が8月18日に公表した取組状況では、大網白里市に県の地域リエゾンを継続して派遣しているほか、8月17日からは公共土木施設の復旧に関する連絡調整・技術支援のため県職員を市原市と大網白里市へ派遣しています。
災害廃棄物についても大網白里市が県の支援対象となり、8月18日時点で市内に仮置場が設置されています。
そのため、2026年8月21日現在は、今回の災害を過去の出来事として振り返る段階ではありません。
被害状況の確認と並行して、地域では復旧・生活再建が進められている時期です。
今回の豪雨で「まちづくり計画」は変わるのか
気になるのは、今回の豪雨が大網駅南地区の計画へどのような影響を与えるのかという点でしょう。
ただ、ここは現時点で先回りして結論を出せません。
2026年8月21日時点で大網白里市の公式情報を確認した範囲では、今回の千葉豪雨を受けて、
「大網駅南地区まちづくり方針を変更する」
「事業を中止する」
「新たな浸水対策を追加する」
といった方針変更は公表されていません。
そもそも7月に策定された方針には、すでに河川改修、排水施設、雨水貯留、宅地・道路の嵩上げ、避難体制などが盛り込まれています。
今後見るべきなのは、計画を「続けるか、中止するか」という二者択一だけではないでしょう。
今回の豪雨について、雨の降り方、実際の浸水状況、河川や排水施設がどのような状況だったのかが検証され、その結果がこれから作られる具体的な整備計画にどのように反映されるのか。
こちらのほうが、大網駅南地区の将来を考えるうえでは大切なポイントになりそうです。
大網白里市は以前から水害の記録を防災情報に生かしている
大網白里市では、今回以前にも大雨による浸水被害を経験しています。
市のWeb版防災マップでは、洪水最大浸水深や家屋倒壊等氾濫想定区域だけでなく、過去の冠水場所、令和元年水害実績箇所、令和5年水害実績箇所も確認できます。
この「想定」と「実績」の両方を見ることは、不動産を検討する際にも参考になります。
ハザードマップに色が付いているかだけを見るのではなく、
「どのくらいの浸水が想定されているのか」
「過去にはどこで水害が発生したのか」
という異なる情報を重ねて見ることで、その地域をもう少し具体的に理解できます。
今回の令和8年8月千葉豪雨についても、今後、大網白里市や千葉県による被害調査・検証が進めば、新たな地域情報として蓄積されていくことが考えられます。
新しく整備されれば「水害の心配がなくなる」わけではない
新しい道路を造り、排水施設を強化し、土地を嵩上げすれば、現在より水害に備えた街を目指すことはできます。
しかし、
「新しく造成された住宅地だから浸水しない」
と考えることはできません。
大網白里市の方針でも、目指しているのは水害を完全になくすことではなく、浸水被害を軽減することです。
一方、今回の豪雨を見て、
「大網駅周辺では住宅を検討できない」
と地域全体を一括りにするのも適切ではありません。
水害との関係は、同じ地域でも土地によって異なります。
道路より敷地が高いのか低いのか。周囲から雨水が集まりやすい地形なのか。河川や排水路との位置関係はどうか。建物の基礎や床はどのくらいの高さにあるのか。
同じハザードマップの色の中でも、実際の条件には差があります。
地域名だけで判断するのではなく、物件一つひとつを現地で確認することが大切です。
大網駅周辺で住宅を検討するなら、将来計画と現在の状況を分けて見る
大網駅南地区のまちづくりが具体化すれば、駅前広場やアクセス道路、生活利便施設などが整備され、現在とは違う街の姿になる可能性があります。
住宅を探している方にとっては、気になる計画でしょう。
ただし、将来の計画だけを見て、
「これから整備される地域だから大丈夫」
と判断するのは早いと思います。
まず確認したいのは、現在公表されているハザードマップや過去の浸水実績です。
それに加えて、実際に現地を歩き、敷地と前面道路の高低差、周辺地形、河川・排水路との位置関係などを見る。今回の千葉豪雨について行政から詳細な浸水情報や検証結果が公表された場合には、それも新たな判断材料になります。
そのうえで、
現在どのような条件の土地なのか
と、
将来どのような浸水対策・都市基盤整備を行う予定なのか
を分けて考えるのがよいでしょう。
将来計画は将来の話であり、現在確認できる災害リスクを置き換えるものではありません。
これからは「事業化できるか」を具体的に検討する段階へ
では、大網駅南地区のまちづくりは今後どう進むのでしょうか。
市が示したスケジュールでは、2026年7月のまちづくり方針決定がSTEP1です。
続くSTEP2では、市と協議会とともに事業化を検討する民間の「事業化検討パートナー」を募集・選定します。
そこで、市場性、事業手法、概算事業費、採算性、都市計画や法制度、土地所有者の合意形成の見通しなどを調査。その結果を踏まえてSTEP3の基本計画・実施計画へ進み、さらに都市計画決定や事業認可などを経て、ようやく実際の整備・建設へ進む流れです。
事業手法については、駅前広場やアクセス道路などの公共施設と宅地造成を一体的に進めるため、土地区画整理事業を基本として検討することも明記されています。
つまり、約18haの新しい街がすでに設計され、完成時期まで決まっているわけではありません。
これから事業化の可能性を確認し、具体的な街の形をつくっていく段階です。
だからこそ、2026年8月に実際に発生した豪雨から得られる情報を、今後の計画の中でどのように扱っていくのかにも注目したいところです。
まとめ|大網駅南地区のまちづくりは「便利になるか」だけでは語れない
大網白里市は2026年7月27日、大網駅南側約18haを対象とする「大網駅南地区まちづくり方針」を正式に策定しました。
駅前広場やアクセス道路、商業・業務・生活利便施設、住宅、公園、水辺空間などを組み合わせ、将来の市の中心となる新しい拠点を目指す計画です。
そして、その計画を考えるうえで避けて通れないのが水害への備えです。
大網駅南地区では、今回の千葉豪雨が発生する前から浸水対策が課題として認識されていました。7月に策定された方針にも、排水機能の強化、河川改修、雨水貯留、宅地・道路の嵩上げなどが盛り込まれています。
その直後となる8月13日に発生したのが、気象庁が正式に「令和8年8月千葉豪雨」と命名した記録的な豪雨でした。大網白里市も災害救助法の適用を受け、8月18日時点でも県による公共土木施設の復旧支援や災害廃棄物処理への支援などが行われています。
いまはまず、被害を受けた地域の復旧と生活再建が進められている時期です。
そのうえで少し長い目で見ると、大網駅南地区ではこれから事業化の検討が本格化します。
「どんなお店ができるのか」「駅前がどれだけ便利になるのか」だけでなく、実際に経験した豪雨を踏まえ、どのような防災・減災機能を備えた街をつくっていくのか。
そこまで含めて見ていくことで、大網駅南地区のまちづくりの意味がより見えてくるのではないでしょうか。
参考情報
確認日:2026年8月21日
気象庁・銚子地方気象台「令和8年8月千葉豪雨」関連情報
URL:https://www.data.jma.go.jp/choshi/
千葉県「令和8年8月13日からの大雨に伴う災害に係る災害救助法の適用について(第3報)」
URL:https://www.pref.chiba.lg.jp/bousaik/press/2026/saigaikyujoho-r813v3.html
大網白里市「大網駅南地区まちづくり方針を策定しました」
URL:https://www.city.oamishirasato.lg.jp/0000015442.html
大網白里市「大網駅南地区まちづくり方針」
URL:https://www.city.oamishirasato.lg.jp/cmsfiles/contents/0000015/15442/machizukurihoshin.pdf
大網白里市「大網駅南地区まちづくり協議会」
URL:https://www.city.oamishirasato.lg.jp/0000012625.html
大網白里市「大網白里市防災マップ」
URL:https://www.city.oamishirasato.lg.jp/hazard/
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