成年後見制度はどう変わる?2026年民法改正の内容と実家・空き家売却の注意点
高齢の親が介護施設へ入所し、誰も住まなくなった実家の売却を考えたとき、問題になることがあるのが「本人の判断能力」です。
不動産の売却は、親の名義になっている以上、家族だけの判断で進めることはできません。本人の意思確認や契約内容を理解する能力、代理権の有無などによって、必要な手続きが変わります。
こうした中、2026年6月17日、成年後見制度の見直しを含む「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。
今回の改正では、従来の後見・保佐・補助という3つの類型を見直し、本人に必要な範囲で支援を行う制度へ変更することが大きな柱となっています。
また、これまで利用を終了しにくかった成年後見制度について、必要性がなくなった場合には終了できる仕組みも設けられます。
ただし、改正法は成立していますが、成年後見制度に関する改正部分はまだ施行されていません。
現在、親名義の実家や空き家を売却する場合は、引き続き現行制度に基づいて手続きを進める必要があります。
本記事では、2026年に成立した民法改正の内容と施行時期、成年後見制度の見直しによる変更点を整理しながら、実家や空き家を売却する際の注意点について解説します。
2026年に成年後見制度の改正法が成立
2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。
同時に、改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和8年法律第46号)も成立しています。
今回の改正は、成年後見制度と遺言制度をより利用しやすいものにするための見直しです。
成年後見制度については、本人の判断能力の程度によって支援内容が画一的に決まる従来の制度を改め、必要な範囲で支援を受けられる仕組みへの変更が予定されています。
主な経緯は次のとおりです。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4月3日 | 改正法案を国会に提出 |
| 2026年6月17日 | 改正法が成立 |
| 2026年6月24日 | 改正法を公布 |
| 今後 | 政令で定める日に成年後見制度の改正部分を施行 |
成年後見制度の見直しに関する改正は、公布の日から2年6か月以内に政令で定める日に施行されます。
2026年11月6日時点で確認できた公式情報では、具体的な施行日は示されていません。
したがって、2026年中に現在の後見・保佐制度が直ちに廃止されるということではありません。
施行までは従来の制度が適用されるため、現在の不動産売却についても、現行法に基づく確認が必要です。
成年後見制度とは?現在の仕組みと見直しの背景
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方について、財産管理や契約などを法律面から支援する制度です。
大きく分けると、家庭裁判所が支援する人を選任する「法定後見制度」と、本人が事前に契約を結ぶ「任意後見制度」があります。
法定後見と任意後見の違い
法定後見制度は、判断能力が不十分になった本人について、家庭裁判所が成年後見人等を選任する仕組みです。
現在の法定後見制度は、判断能力の程度に応じて次の3つに分かれています。
| 区分 | 対象となる方 | 支援する人 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力を欠くのが通常の状態の方 | 成年後見人 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 保佐人 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 補助人 |
後見では、成年後見人に広い範囲の代理権や取消権が与えられます。
保佐・補助では、法律の定めや家庭裁判所の審判に応じて、同意権・取消権・代理権などの範囲が決まります。
一方、任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合の財産管理などを、あらかじめ契約で決めておく制度です。
任意後見契約は公正証書によって締結し、現行制度では、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで契約の効力が生じます。
制度が見直されることになった背景
現在の法定後見制度では、本人の判断能力の程度によって利用する制度が決まり、それに応じた権限が付与されます。
例えば、本人が不動産の売却について支援を必要としている場合でも、後見が開始されると、成年後見人には不動産売却以外の財産管理についても広い代理権などが与えられます。
また、現行の後見・保佐制度では、原則として本人の判断能力が回復しない限り、利用を終了できません。
不動産の売却や遺産分割など、当初の目的が達成された後も、制度の利用が長期間続くことがあります。
こうした仕組みについて、本人の自己決定を必要以上に制限しているのではないか、必要な支援だけを受けられる制度にすべきではないかという指摘がありました。
今回の改正は、こうした課題を踏まえ、本人にとって必要な支援を、必要な範囲と期間で利用しやすくすることを目的としています。
2026年の民法改正で成年後見制度はどう変わる?
今回の改正では、法定後見制度の仕組みが大きく変わります。
主な変更点は、後見・保佐制度の廃止、補助制度への一元化、制度利用の終了条件の見直しなどです。
後見・保佐を廃止し、補助制度へ一元化
改正法では、現在の後見・保佐制度を廃止し、法定後見制度を基本的に補助制度へ一元化します。
従来は判断能力の程度に応じて利用する制度が決まっていましたが、改正後は本人に必要な支援の内容に応じて、家庭裁判所が代理権や同意権などを個別に定める仕組みになります。
例えば、特定の財産管理や法律行為について支援が必要な場合、その行為に応じた権限を補助人に付与することが想定されています。
これにより、本人が自分で判断できる事項については、できるだけ本人の意思を尊重しながら、必要な部分を支援する制度へ変更されます。
ただし、判断能力が著しく低下している方への保護がなくなるわけではありません。
改正法では、判断能力を欠くのが通常の状態にある方に対して、「特定補助人」を付する仕組みも設けられています。
特定補助人には、法定の重要な財産上の行為について取消権などが認められ、本人の権利を保護する役割があります。
必要な代理権・取消権を個別に設定する
改正後の補助制度では、必要な法律行為に応じて代理権や同意権・取消権などを設定することが基本となります。
不動産売却であれば、売買契約に関する代理権が必要か、本人がどの程度判断できるかなどを踏まえ、家庭裁判所による審判が行われます。
本人の判断能力が不十分な場合でも、支援が必要な内容を具体的に検討できるようになる点が、改正の大きな特徴です。
また、補助の事務を行う際には、本人の意向を適切な方法で把握することが求められます。
制度の中心にあるのは、財産を管理する人の都合ではなく、支援を受ける本人の意思と利益です。
必要がなくなった場合は制度利用を終了できる
今回の改正で特に注目されるのが、制度利用を終了する仕組みの見直しです。
現行の後見・保佐制度では、利用のきっかけとなった財産管理や法律行為が完了しても、原則として判断能力が回復しなければ制度を終了できません。
改正後は、家庭裁判所が制度利用の必要性がなくなったと認める場合、補助に関する審判を取り消すことができるようになります。
例えば、特定の法律行為について支援を受けていた方が、その手続きを終え、今後は制度による支援を必要としなくなった場合などが考えられます。
ただし、実家の売却が終われば、必ず成年後見制度を終了できるという意味ではありません。
財産管理や日常生活に必要な支援が残っている場合もあるため、制度利用の終了は本人の状況を踏まえて家庭裁判所が判断します。
現在、後見・保佐を利用している方はどうなる?
改正法には、制度の施行前から成年後見制度を利用している方に関する経過措置も設けられています。
すでに後見・保佐を利用している方は、施行後も基本的に従来の制度を継続することができます。
また、改正後の補助制度へ移行したい場合には、必要な申立てを行い、新制度の利用を検討する仕組みがあります。
制度利用を終了したい場合についても、家庭裁判所へ審判の取消しを申し立てられるようになります。
つまり、改正法が施行されたからといって、利用中の後見・保佐が一斉に終了したり、全員が自動的に新制度へ移行したりするわけではありません。
それぞれの事情に応じて、継続・移行・終了を検討することになります。
任意後見契約についても見直し
任意後見制度についても、今回の改正で変更が予定されています。
現行制度では、任意後見契約の効力を生じさせる際に、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
改正後は、家庭裁判所が監督人による監督の必要が明らかにないと認める場合には、監督人を選任しないことができる仕組みが設けられます。
また、任意後見契約と補助制度の関係についても見直しが行われています。
任意後見契約を検討している方や、すでに契約を締結している方は、今後の施行日や具体的な運用について、法務省などの最新情報を確認するとよいでしょう。
親名義の実家・空き家を売却するときの注意点
成年後見制度の見直しは、親が所有する実家や空き家の売却を考えているご家族にとっても関心の高い内容です。
ただし、今回の改正によって、本人の意思確認や法的な権限の確認が不要になるわけではありません。
不動産の売却では、現在も将来も、所有者本人の権利と利益を守ることが基本となります。
親の判断能力と売却意思を確認する
例えば、親が介護施設へ入所し、以前住んでいた実家が空き家になっているとします。
家族としては、固定資産税や維持管理の負担を減らすため、売却を検討することもあるでしょう。
この場合、最初に確認したいのは、不動産の所有者である親本人が、売却についてどのように考えているかという点です。
本人が売買契約の内容や不動産を手放す意味を理解し、自分の意思で判断できるのであれば、本人による売却を検討できます。
一方、判断能力に不安がある場合は、契約の有効性や適切な手続きについて慎重な確認が必要になります。
認知症の診断を受けていることだけで、すべての契約ができなくなるわけではありません。
実際の契約時に、本人がその法律行為の内容や結果を理解して判断できるかが問題となります。
本人の意思能力について法律上の判断が必要な場合は、司法書士や弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
家族であっても当然に代理で売却できるわけではない
親名義の不動産について、子どもが当然に売却できるわけではありません。
代理で売却する場合には、適切な代理権が必要です。
本人に十分な判断能力があり、代理による売却を希望している場合は、委任による手続きを検討できます。
一方、本人の判断能力が十分でない場合は、委任状を作成するだけで適法に代理権を取得できるとは限りません。
不動産売却を進める際には、本人確認、意思確認、代理権の内容などを確認する必要があります。
また、成年後見制度を利用している場合には、成年後見人等にどのような権限が与えられているかを確認します。
保佐人や補助人については、不動産売却に関する代理権が付与されているかどうかが問題となります。
居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要
成年後見制度を利用している方の不動産売却で、特に注意したいのが「居住用不動産の処分許可」です。
現行制度では、成年後見人が本人の居住用不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要です。
保佐人・補助人が本人に代わって処分する場合も、必要な代理権が付与されていることに加え、居住用不動産については家庭裁判所の許可が必要になります。
ここでいう居住用不動産は、本人が現在住んでいる住宅だけではありません。
親が介護施設へ入所し、現在は誰も住んでいない実家であっても、居住用不動産に該当する場合があります。
例えば、施設へ入所するまで本人が暮らしていた住宅や、将来戻る可能性がある住宅などです。
居住用不動産の処分には、売却だけでなく、賃貸借契約の締結・解除、抵当権の設定、建物の取り壊しなども含まれます。
必要な許可を受けずに処分した場合、その処分は無効となります。
そのため、実家が空き家になっているからといって、家庭裁判所の許可が不要と判断することは避けなければなりません。
家庭裁判所への申立てには査定書が必要になる場合もある
居住用不動産の処分許可を申し立てる際には、売却の必要性や条件などを示す資料が必要になります。
裁判所の公式案内では、申立てに必要な資料として、売買契約書の写し、不動産の評価証明書、不動産会社が作成した査定書などが挙げられています。
不動産会社による査定は、売却価格の目安を把握するだけでなく、家庭裁判所への申立てを検討する際の資料として役立つ場合があります。
ただし、査定書を用意すれば必ず売却が許可されるということではありません。
売却の必要性、価格、本人の生活や財産への影響など、個別の事情を踏まえて家庭裁判所が判断します。
申立てに必要な書類や手続きについては、成年後見人等から管轄の家庭裁判所へ確認することが望ましいでしょう。
改正法の施行前に実家を売却したい場合
成年後見制度の改正法は成立していますが、現在の不動産売却に新制度がそのまま適用されるわけではありません。
そのため、親名義の実家や空き家を売却したい場合は、まず現行制度に基づいて対応方法を確認する必要があります。
本人が売却の内容を理解し、自ら契約できる場合は、通常の不動産売却を検討できます。
判断能力が不十分で、法的な支援が必要な場合には、成年後見制度の利用や代理権の確認などが必要になることがあります。
すでに成年後見人等が選任されている場合は、その権限や居住用不動産の処分許可の要否を確認します。
また、売却する理由や売却代金の使い道についても整理しておくと、専門家への相談が進めやすくなります。
例えば、施設入所に伴って自宅を売却する場合、施設費用や今後の生活費に充てることが目的であれば、その事情を具体的に説明できるようにしておくことが考えられます。
一方、家族の都合だけで売却を進めることは、本人の利益との関係で問題になる場合があります。
不動産会社では、物件調査や価格査定、売却方法の検討などを行えます。
ただし、本人の意思能力や代理権に関する法律上の判断、成年後見制度の申立て、家庭裁判所の許可などについては、司法書士・弁護士などの専門家や裁判所への確認が必要です。
2026年の法改正によって手続きが変わるのを待つよりも、現在の状況でどのような対応が可能なのか、専門家へ相談することが現実的な場合もあります。
市原市周辺の中古戸建や相続した実家の売却方法については、市原市の中古戸建売却ガイドでも解説しています。
親の判断能力が十分なうちに考えておきたいこと
将来、実家や自宅をどうするかについては、本人が自分の意思を十分に伝えられるうちに話し合っておくことが望ましいでしょう。
例えば、介護施設へ入所した場合に自宅へ戻る予定があるのか、住まなくなった住宅を売却してよいと考えているのか、今後の生活費をどのように準備するのかといった点です。
本人の希望を確認しておけば、将来、家族が不動産の管理や売却について判断を迫られた場合の参考になります。
また、判断能力が十分なうちに検討できる制度として、任意後見や家族信託などがあります。
任意後見は、本人が将来の判断能力の低下に備え、財産管理などを任せたい人と契約を結んでおく制度です。
家族信託は、財産の管理や処分について、信頼できる家族などに一定の権限を託す民事信託の仕組みです。
それぞれ法的な性質や利用条件が異なり、不動産の売却権限についても契約内容などによって変わります。
家族信託については、信託契約で定めた権限の範囲や不動産の名義、受託者の義務などを確認する必要があります。
また、遺言は主に死亡後の財産承継を定める制度であり、生前の不動産売却を直接進めるためのものではありません。
どの制度が適しているかは、本人の希望や家族構成、財産の内容などによって異なります。
具体的な制度の選択や契約内容については、司法書士・弁護士などの専門家へ確認することをおすすめします。
まとめ|制度改正と現在の売却手続きを分けて考える
2026年6月17日、成年後見制度の見直しを含む民法改正法が成立し、同月24日に公布されました。
今回の改正では、従来の後見・保佐制度を廃止して補助制度へ一元化し、本人に必要な範囲で支援を行う仕組みへ変更することが予定されています。
また、家庭裁判所が必要性がなくなったと認める場合には、制度の利用を終了できるようになることも、大きな変更点です。
ただし、成年後見制度に関する改正部分は、まだ施行されていません。
現在、親名義の実家や空き家を売却する場合には、従来の制度に基づき、本人の意思能力、代理権、居住用不動産の処分許可などを確認する必要があります。
施設への入所によって空き家になった実家であっても、家庭裁判所の許可が必要になる場合があるため、早い段階で専門家へ相談するとよいでしょう。
大切なのは、家族が売却を急いで決めることではなく、不動産の所有者である本人の意思と利益を尊重しながら、適切な方法を検討することです。
制度の見直しによって今後の手続きが変わる可能性はありますが、現在の制度でも、状況に応じた方法を検討できます。
市原市・千葉市周辺で実家や空き家の売却を考えている方は、不動産としての価値を確認するとともに、必要に応じて司法書士・弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。
参考情報
確認日:2026年11月6日
法務省|「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
参議院|民法等の一部を改正する法律案(第221回国会・閣法第43号)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221080221043.htm
裁判所|成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ
https://www.courts.go.jp/saiban/koukenp00/koukenp1/index.html
裁判所|成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_25_04/index.html
厚生労働省|成年後見制度の見直しに伴う経過措置に関する資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001756936.pdf
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