火災保険料はなぜ上がっている?参考純率13.0%引き上げの背景と住宅購入時の注意点
住宅を購入するときには、物件代金や住宅ローンだけでなく、登記費用、税金、火災保険料など、さまざまな費用がかかります。
その中で最近、「火災保険の見積もりが思っていたより高い」「以前契約したときより保険料が上がっている」と感じる方もいるのではないでしょうか。
実際、火災保険の保険料率を考える際の参考となる「参考純率」は、この10年ほどの間に何度も引き上げられてきました。損害保険料率算出機構は2023年6月、住宅総合保険の参考純率について、全国平均で13.0%引き上げる改定を届け出ています。自然災害リスクの変化だけでなく、住宅の老朽化や修理費の上昇なども背景にあります。
ただし、ここで最初に確認しておきたいことがあります。
「参考純率が全国平均13.0%引き上げられた」ということと、「すべての家庭の火災保険料が13.0%値上がりした」ということは同じではありません。
また、「2024年10月に参考純率が13.0%引き上げられた」という説明も正確ではありません。13.0%の改定は2023年6月に届け出られ、その後、2024年10月始期の契約から商品や保険料を改定した保険会社がある、という順番です。
この記事では、少し分かりにくい火災保険の参考純率の仕組みから、住宅を購入するときにどこまで考えておきたいのかまで、順を追って見ていきます。
火災保険の「参考純率13.0%引き上げ」とは?
まず、「参考純率」という言葉から確認してみましょう。
火災保険料は、大きく分けると、事故が発生した際の保険金支払いに充てる「純保険料率」と、保険会社が事業を運営するための経費などに充てる「付加保険料率」から成り立っています。
損害保険料率算出機構が算出しているのは、このうち純保険料率の参考となる数値です。これを「参考純率」と呼びます。
参考純率は保険会社が保険料を決める際の基礎の一つ
損害保険料率算出機構は、多くの保険会社から集めた契約データや保険金支払データ、各種の外部データなどを使って参考純率を算出しています。
ただし、各保険会社に「この参考純率をそのまま使わなければならない」という義務があるわけではありません。
保険会社は参考純率をそのまま使用することもあれば、自社の実績や商品内容に応じて修正したり、独自に純保険料率を算出したりすることもできます。さらに、付加保険料率は各保険会社が独自に決めます。
したがって、参考純率は火災保険料を考えるうえで大切な数字ではあるものの、契約者が実際に支払う保険料そのものではありません。
「全国平均13.0%」でも実際の改定率は物件によって異なる
2023年の改定では、住宅総合保険の参考純率が全国平均で13.0%引き上げられました。
ここでいう13.0%は、すべての地域・建物・契約条件をまとめた平均値です。実際には、都道府県、建物構造、築年数、水災等地などによって改定率が異なります。
さらに実際の契約では、保険会社の商品設計や補償内容、自己負担額なども関係します。
そのため、
「住宅総合保険の参考純率が13%上がった」
=
「自分の火災保険料も13%上がる」
とは考えないほうがよいでしょう。
13.0%の参考純率改定は2023年6月
時系列も少し分かりにくいところです。
損害保険料率算出機構が参考純率の変更を金融庁長官へ届け出たのは2023年6月21日で、同月28日に適合性審査の結果通知を受けています。
その後、保険会社がそれぞれの商品へ反映していきました。
一例として、損保ジャパンは2023年6月の参考純率改定を受け、2024年10月1日以降に保険期間が始まる個人用火災総合保険について、保険料や商品内容を改定しています。水災料率も市区町村別の5区分へ変更しました。
つまり、「2024年10月に13%の参考純率改定があった」のではなく、2023年の参考純率改定が、2024年以降の各社の商品改定にもつながっていったと理解すると分かりやすいでしょう。
なお、保険会社の商品や料率はその後も改定されることがあります。住宅購入時や契約更新時には、その時点の条件で見積もりを取ることが基本になります。
火災保険の参考純率はこの10年ほどでどう変わった?
火災保険の参考純率が大きく取り上げられたのは2023年だけではありません。
2014年以降を見ると、住宅総合保険の参考純率は複数回にわたり引き上げられています。
| 届出時期 | 住宅総合保険の全国平均改定率 |
|---|---|
| 2014年6月 | +3.5% |
| 2018年5月 | +5.5% |
| 2019年10月 | +4.9% |
| 2021年5月 | +10.9% |
| 2023年6月 | +13.0% |
2014年の改定では平均3.5%、2018年は5.5%、2019年は4.9%、2021年には10.9%へと引き上げ幅が大きくなり、2023年は13.0%となりました。これら2014年以降の公表値を比較すると、2023年の13.0%が最も大きな平均引き上げ率です。
ただし、この数字を単純に足し合わせて「10年間で○%値上がりした」と考えるのは適切ではありません。
各改定時点で契約構成や料率区分が異なり、途中では築年数による区分や水災料率など制度そのものも変わっています。まして、参考純率の累積変化と、ある一軒の住宅が実際に支払う保険料の変化は同じではありません。
この表から読み取りたいのは、火災保険の料率が一度だけ大きく見直されたのではなく、自然災害や住宅を取り巻く環境の変化に合わせて、繰り返し見直されてきたということです。
なぜ火災保険の参考純率は繰り返し引き上げられている?
「台風や豪雨が増えたからでは」と思う方も多いでしょう。
それも背景の一つですが、2023年改定の理由は自然災害だけではありません。
自然災害リスクの変化
損害保険料率算出機構は、近年、一定規模の自然災害が毎年発生していることに加え、強い台風の増加や接近頻度の変化などが国際的な研究で指摘されていることを踏まえ、台風リスクの評価方法を見直しています。具体的には、近年の台風データをより重視する算出方法へ変更しました。
火災保険という名前から「住宅火災に備える保険」と思われがちですが、一般的な住宅向け火災保険では、契約内容によって台風などの風災、雪災、水災といった自然災害も補償対象になります。
自然災害による保険金支払いが増えれば、火災保険全体の収支にも影響します。
築年数を重ねた住宅の割合が増えている
もう一つが住宅の老朽化です。
損害保険料率算出機構は、築年数の古い住宅の割合が増えることで、事故が起こりやすい住宅が相対的に増えていることも、支払保険金増加の背景として挙げています。
住宅は年月とともに給排水設備や屋根、外壁などが劣化します。
もちろん「古い家だから事故が起きる」と単純に決まるものではありませんが、保険制度では大量の住宅データから築年数と事故リスクの傾向を見て料率へ反映していきます。
2019年の参考純率改定でも、築年数によるリスク較差を反映し、築年数の浅い住宅に対する割引が導入されました。
資材費や人件費の上昇で修理費も増えている
災害件数だけではなく、一度事故が起きたときに必要となる修理費そのものが上がっていることも見逃せません。
損害保険料率算出機構は、建設工事の資材費や労務費の増加に伴い、修理費全般が増えていることを2023年改定の背景として説明しています。
たとえば以前と同じ規模の屋根修理であっても、資材価格や職人の人件費が上がれば保険会社が支払う保険金額も増えやすくなります。
つまり近年の火災保険料を考える際は、
災害が起きるリスクと被害を直すための費用の両方を見る必要があります。
2023年改定では水災料率が全国一律から5区分へ
2023年の参考純率改定には、平均13.0%の引き上げと並んでもう一つ大きな変更がありました。
水災に関する料率の細分化です。
それまで住宅向け火災保険の参考純率では、水災に関する料率は全国一律でした。2023年の改定では、市区町村ごとの水災リスクを反映し、1等地から5等地までの5区分へ分ける仕組みが導入されました。
1等地から5等地までの5区分
損害保険料率算出機構の参考純率では、水災リスクが相対的に低い地域を「1等地」、相対的に高い地域を「5等地」としています。
水災部分だけを比べると、5等地の水災保険料は1等地のおよそ1.5倍です。
一方、火災や風災、雪災なども含めた保険料全体の参考純率で見ると、水災料率細分化時の試算では最も高い地域と最も安い地域の差は約1.2倍とされています。ここは「水災部分」と「火災保険全体」を分けて考える必要があります。
なお、これらはいずれも損害保険料率算出機構が算出した参考純率上の数値です。実際に契約する保険会社の商品で同じ倍率になるとは限りません。
1等地だから水害が起きないわけではない
等地の数字を見ると、「1等地なら水災補償はいらないのでは」と考えたくなるかもしれません。
しかし、1等地は「水災が発生しない地域」という意味ではありません。
損害保険料率算出機構も、水災等地はほかの市区町村と比べた相対的なリスクを表すものであり、どの等地でも水害は発生していると説明しています。
水災補償を付けるかどうかは、等地の数字だけで判断するものではありません。
水災等地とハザードマップは同じではない
ここも住宅購入時には覚えておきたい点です。
水災等地は洪水だけを見て決めているわけではありません。
河川の氾濫による「外水氾濫」に加え、大雨で下水道などの排水能力を超えて浸水する「内水氾濫」、土砂災害などを含めて評価しています。このため、水災等地と自治体の洪水ハザードマップが一致しないことがあります。
反対に、ハザードマップにも水災等地にはない役割があります。
浸水想定区域や想定浸水深など、その物件が具体的にどのような場所に建っているのかを見るには、自治体のハザードマップや国土交通省のハザードマップポータルサイトが役立ちます。
両者はどちらか一方を見ればよいものではなく、目的の違う情報として使い分けるとよいでしょう。
火災保険の更新時に「以前より高い」と感じることがある理由
長く同じ住宅に住んでいる方の中には、「前回契約したときと比べて更新保険料がかなり違う」と感じるケースがあります。
これには、長期契約の仕組みも関係します。
2021年の改定では、火災保険の参考純率を適用できる保険期間の上限が、それまでの最長10年から最長5年へ短縮されました。
長期契約では、参考純率が改定されるたびに既存契約の保険料がその場で変更されるわけではありません。
そのため、長期間の契約が満期となり更新するときには、その間に行われた複数回の料率改定や、建物の築年数、保険会社の商品改定などが新しい契約条件へ反映されることがあります。
「今年突然これだけ値上がりした」というより、長い契約期間中に変わった条件が、更新時にまとめて見えてくる場合があるということです。損害保険料率算出機構も、長期契約では更新時に複数回の改定の影響を受ける場合があると説明しています。
同じ価格の住宅でも火災保険料が同じとは限らない
住宅購入時には、「3,000万円の住宅なら火災保険料はいくら」と単純には決まりません。
火災保険の参考純率では、建物構造や所在地など、損害リスクの違いに応じた区分が設けられています。
実際に支払う保険料ではさらに、保険会社や商品、建物の築年数、保険金額、補償範囲、自己負担額などが関係します。
たとえば、同じ購入価格の一戸建てでも、木造住宅と耐火構造の住宅では保険料が同じとは限りません。
また、水災補償を付けるか、家財まで対象にするか、自己負担額をいくらにするかによっても変わります。
そのため、住宅購入時の資金計画ではネット上の「火災保険の平均額」だけを使うより、購入を検討している具体的な物件について見積もりを取るほうが現実的です。
住宅購入時は火災保険料も諸費用の一つとして考える
住宅を購入するときは、どうしても「いくらの物件を買えるか」「住宅ローンはいくら借りられるか」という大きな数字へ目が向きます。
ただ、実際の購入には登記費用や住宅ローン関係費用、税金、仲介手数料、火災保険料なども必要です。
火災保険料は物件代金と比べれば小さく見えるかもしれませんが、一度払って終わりではありません。住宅を保有している間、契約期間に応じて更新していく費用でもあります。
だからといって、将来の保険料上昇を細かく予測して購入予算へ織り込む必要まではありません。
住宅購入の段階では、まず現在の条件で実際の見積もりを確認し、購入時の諸費用の中に入れておく。そのうえで、固定資産税や修繕費などと同じように、住宅を持ち続けるために一定の費用がかかることを家計全体で見ておくと無理のない資金計画につながります。
千葉市・市原市で住宅を選ぶとき、水災補償をどう考える?
辰巳地所の主な営業エリアである千葉市や市原市についても、「この市なら水災補償が必要」「この地域なら不要」と市単位で判断するのはおすすめできません。
同じ市内でも、河川との距離、地盤の高さ、周辺の地形、排水環境などは場所によって異なります。
千葉市では洪水・内水・高潮などを確認できる地震・風水害ハザードマップが公開され、市原市でも洪水・高潮などを掲載した水害ハザードマップや内水ハザードマップが公開されています。
住宅を検討するときは、まず物件の位置をハザードマップ上で確認します。
その際、洪水だけを見るのではなく、内水氾濫や土砂災害など、物件の立地に応じたリスクにも目を向けてみてください。
そして火災保険を検討する段階では、損害保険料率算出機構の水災等地も参考にしながら、保険会社や代理店へ具体的な補償内容と保険料を確認する流れが分かりやすいでしょう。
ハザードマップ上で色が付いていないから「絶対に浸水しない」と考えるのも避けたいところです。ハザードマップは一定の想定に基づいて作られており、想定を超える災害や、表示されていない原因による被害が起こる可能性もあります。
住宅選びでは「危険か安全か」の二択ではなく、どのようなリスクがあり、それにどう備えるかという見方が大切です。
保険料を抑えるために補償を外す前に考えたいこと
火災保険料が上がると、「使わなそうな補償を外して安くしたい」と考えるのは自然なことです。
補償内容を見直すこと自体に問題はありません。
ただ、水災補償などを外すときは、保険料がいくら安くなるかだけではなく、もしその災害が起きたときに損害を自分の資金で負担できるかまで考えておきたいところです。
たとえば、床上浸水などで建物や設備に大きな被害が出た場合、修繕費は小さな金額では済まない可能性があります。
一方、マンションの高層階など、物件の状況によって検討の仕方が変わる場合もあります。
必要な補償は住宅によって違いますので、「水災補償は必ず付けるべき」「保険料が高いから外すべき」と一律にはいえません。
ハザード情報、建物の状況、手元資金、保険料の差などを見ながら、保険会社や代理店に補償範囲と条件を確認して選ぶのがよいでしょう。
火災保険と地震保険は分けて考える
もう一つ、住宅購入時に混同しやすいのが地震です。
一般的な火災保険では、地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害は補償されません。こうした損害に備えるためには、火災保険に地震保険をセットして契約する仕組みがあります。
たとえば、地震によって住宅から火災が発生した場合も、「火事なのだから通常の火災保険で補償される」とは限りません。
火災保険の水災補償と地震保険は別の制度として考え、住宅購入時にそれぞれの補償内容を確認しておくと安心です。
まとめ
火災保険料の基礎の一つとなる参考純率は、この10年ほどの間に複数回引き上げられてきました。
2014年の平均3.5%から、2018年5.5%、2019年4.9%、2021年10.9%と改定が続き、2023年には全国平均13.0%の引き上げとなっています。背景にあるのは自然災害だけではありません。住宅の老朽化や、建築資材・人件費の上昇による修理費の増加も関係しています。
一方、13.0%という数字だけを見て「自分の火災保険料も13%高くなる」と考える必要はありません。
参考純率と実際の保険料は別のものであり、所在地や建物構造、築年数、選択する補償、保険会社の商品によって実際の金額は変わります。
また、2023年の改定では水災料率が1等地から5等地までに細分化されました。しかし、等地が低いから水災リスクがなくなるわけではなく、ハザードマップとも完全には一致しません。
住宅を購入するときには、「火災保険が値上がりしているから安い保険を探す」と考えるだけでなく、まず購入する物件の災害リスクを知ることから始めてみてください。
そのうえで必要な補償を考え、実際の見積もりを取り、登記費用や住宅ローン関係費用などと一緒に購入諸費用へ含めておく。
物件価格だけでは見えにくいこうした費用まで確認しておくことが、購入後の家計に余裕を持たせることにつながります。
参考情報
確認日:2026年8月11日
損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」
URL:https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/
損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内(2023年)」
URL:https://www.giroj.or.jp/news/2023/20230628_1.html
損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況 2023年度版」
URL:https://www.giroj.or.jp/publication/outline_k/k_2023.pdf
損害保険料率算出機構「水災等地検索・住宅向け火災保険参考純率の水災料率細分化」
URL:https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/touchi/
金融庁「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」
URL:https://www.fsa.go.jp/singi/suisai/index.html
損保ジャパン「個人用火災総合保険改定のご案内(2024年10月1日改定)」
URL:https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/kinsurance/habitation/announce/20241001_1.pdf?la=ja-JP
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