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大きな地震が発生したとき、自宅そのものに大きな被害がなくても、停電によって普段どおりの生活ができなくなることがあります。

スマートフォンを充電できない。夜になっても照明が使えない。Wi-Fiルーターが動かない。夏なら扇風機、冬なら電気毛布が使えない。冷蔵庫の中身も気になるでしょう。

こうした停電対策の一つとして知られるようになったのが、ポータブル電源です。

スマートフォン用のモバイルバッテリーより大きな容量を備え、製品によっては家庭用コンセントと同じ交流100Vの出力に対応しているため、停電時にもさまざまな電気製品を使える可能性があります。

ただし、ポータブル電源は「これさえ用意すれば災害時も安心」という道具ではありません。

必要な容量も家庭によって異なりますし、リチウムイオン電池などを搭載する製品である以上、安全な使用・保管についても知っておく必要があります。経済産業省はポータブル電源について、火災や感電など一定の電気的リスクがあるとして、安全性要求事項を取りまとめています。

この記事では、在宅避難を想定した停電対策として、ポータブル電源をどのように考えればよいのかを、容量・出力・安全性まで含めて解説します。

南海トラフ地震による千葉県の津波・震度や住宅購入時の災害リスクについては、関連記事「南海トラフ地震で千葉県はどうなる?津波・震度・住宅購入前の確認ポイントを解説」で詳しく紹介しています。

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南海トラフ地震では停電後の生活も考えておきたい

防災というと、「家が倒れないか」「津波から避難できるか」といった発災直後の安全確保に目が向きやすいものです。

もちろん、それが最優先です。

一方、自宅で過ごせる状態だったとしても、電気・水道・ガス・通信などのライフラインが止まれば、その後の暮らしは大きく変わります。

特に電気は、照明や通信だけでなく、冷蔵庫、給湯設備、調理家電、季節家電など、現在の住宅生活のさまざまな場面に関係しています。

そこで住宅の防災を考えるときは、

「地震に耐えられる家か」だけでなく、「停電したあと、その家でどのように生活するか」

まで想像しておくと、必要な備えが見えてきます。

ポータブル電源も、そのための選択肢の一つです。

ポータブル電源を買う前に基本の備蓄を確認する

停電が心配になると、先に大容量のポータブル電源を用意したくなるかもしれません。

ただ、防災用品には優先順位があります。

内閣府は、各家庭で最低3日間、できれば1週間程度過ごせるよう、飲料水や食料などを備蓄することを案内しています。飲料水は1人1日3リットルを目安とし、携帯トイレ、トイレットペーパー、カセットコンロなども備えておくとしています。

つまり、水や食料、トイレへの備えがほとんどない状態で、ポータブル電源だけを購入しても在宅避難の準備が整ったとはいえません。

常備薬や懐中電灯、情報を得る手段、家具の転倒防止なども含め、まず基本的な備えを確認する。そのうえで「停電中にも電気を使いたい」という部分を補うのが、ポータブル電源の位置付けとして分かりやすいでしょう。

ポータブル電源は「電源を補う道具」として考える

すべての家庭にポータブル電源が必要とは限りません。

停電時に電気を使う目的が「スマートフォンを充電したい」という程度であれば、容量の大きなポータブル電源を購入しなくても、複数のモバイルバッテリーなどで対応できる家庭もあります。

反対に、

「照明も確保したい」
「Wi-Fiルーターやノートパソコンも使いたい」
「冬場に電気毛布を使えるようにしたい」
「ある程度の時間、冷蔵庫を動かしたい」

となれば、必要となる電力量は増えていきます。

大切なのは、先に商品を選ばないことです。

「防災用だから1000Whくらい」「家族が多いから2000Wh」と容量を決めるのではなく、まず停電時に何へ電気を使いたいのかを考えます。

停電したら何に電気を使いたいかを先に決める

停電した自宅を少し想像してみると、電気の優先順位が見えてきます。

最初に必要になる可能性が高いのは、スマートフォンなどの通信手段と照明でしょう。情報を得たり、家族と連絡を取ったりするための電源は確保しておきたいところです。

夏であれば小型扇風機、冬なら電気毛布など、気温への対応が必要になる家庭もあります。

さらに電力に余裕があれば、Wi-Fiルーターやノートパソコン、冷蔵庫などへ用途を広げることも考えられます。

一方、電子レンジや電気ケトル、ドライヤー、エアコンなどは、使用時に大きな電力を必要とする製品があります。

そのため、

「ポータブル電源があるから家庭の家電を普段どおり使える」

という考え方ではなく、

「限られた電気を、停電時に何へ優先して使うか」

と考えたほうが現実的です。

実際の消費電力は家電ごとに異なるため、使用したい製品の銘板や取扱説明書、メーカー仕様を確認してください。

ポータブル電源を選ぶときに確認したいポイント

商品ページを見ると、Wh、W、AC、USB、急速充電など、さまざまな数字や言葉が並んでいます。

すべてを細かく覚える必要はありませんが、少なくとも容量と出力は別の数字として理解しておきたいところです。

容量Wh|どれくらい電気を蓄えられるかを見る

「Wh(ワット時)」は、ポータブル電源に蓄えられる電力量を見るための目安です。

基本的には容量が大きいほど、電気製品を長く使いやすくなります。

ただし、大容量になれば一般に本体も大きく重くなり、価格も上がります。災害時に持って移動する可能性があるなら、重量も無視できません。

「大容量であること」だけを基準にせず、使い方と保管場所まで含めて考えます。

定格出力W|どの程度の家電を動かせるかを見る

「W(ワット)」は出力能力を見る数字です。

たとえ十分な容量が残っていても、使いたい家電が要求する電力をポータブル電源側が出力できなければ、その家電を使用できない場合があります。

また、家電によっては起動時に通常運転中より大きな電力を必要とするものがあります。

そのため、Whが大きい=何でも使えるではありません。

容量と定格出力の両方を見る必要があります。

端子も実際の使い方に合わせる

家庭用コンセントと同じAC出力の数、USB-A・USB-Cなどの端子、車載用出力など、製品によって構成は異なります。

停電時にスマートフォンを何台充電したいのか、ACコンセントを使う機器はいくつあるのかを考えると、必要な端子が見えやすくなります。

充電方法と充電時間も見ておく

停電が起きる前に家庭用コンセントから充電しておくのが基本ですが、製品によっては自動車やソーラーパネルから充電できるものもあります。

ただし、「充電方法が多いほど必ずよい」と考える必要はありません。

普段どのように保管し、災害時にどの方法なら現実的に充電できそうかを見ることが大切です。

重量と保管場所は購入前に確認する

容量の数字ばかり見ていると忘れやすいのが重量です。

大容量モデルを購入しても、必要な場所まで一人で運べないのでは、災害時の使い方が制限されます。

また、ポータブル電源には保管環境にも注意が必要です。

購入前に「家のどこに置くか」まで決めておいたほうがよいでしょう。

「何Whなら安心?」は使いたい機器から考える

防災用ポータブル電源について、「500Whで足りるのか」「1000Wh以上必要なのか」と容量から考えたくなるところです。

しかし、必要容量は家族の人数だけでは決まりません。

同じ4人家族でも、スマートフォンと照明だけを想定する家庭と、冷蔵庫や季節家電まで使いたい家庭では必要な電力量がまったく違います。

理論上は、

容量(Wh)÷ 使用する機器の消費電力(W)

から使用可能時間の大まかなイメージをつかむことができます。

ただし、実際にはACへの変換などで損失が生じるため、公称容量をそのまますべて家電で利用できるわけではありません。使用環境や製品の仕様によっても変わります。

そのため、計算結果をそのまま使用時間と考えず、メーカーが公表している使用例や仕様も確認するのが適切です。

「災害時に何時間使いたいか」まで考えると、必要以上に大きな製品を選ぶことも、反対に容量が足りなくなることも避けやすくなります。

PSEマークだけでポータブル電源本体の安全性を判断しない

ポータブル電源を選ぶときに、少し注意したいのがPSEマークです。

PSEマークは、電気用品安全法の規制対象となる電気用品について、法律で定められた技術上の基準への適合などを示すための表示です。

一方、経済産業省は、交流100Vを出力できるいわゆるポータブル電源について、蓄電池そのものには該当しないため、モバイルバッテリーとしての電気用品安全法の規制対象外と説明しています。また、ポータブル電源の安全性要求事項を公表するページでも、ポータブル電源は電気用品安全法の規制対象外であるとしています。

したがって、

「ポータブル電源本体にPSEマークがない=危険な商品」

と単純には判断できません。

ACアダプターなど、本体とは別の構成品が電気用品安全法の対象になるケースもあるため、本体と付属品を分けて考える必要もあります。

ポータブル電源本体についてはPSEマークの有無だけではなく、製造・輸入・販売事業者が明確か、取扱説明書や安全情報を確認できるか、問い合わせ窓口・保証が用意されているか、といった点も含めて見たほうがよいでしょう。

購入後にはリコール情報の確認も必要です。

ポータブル電源を安全に使うために知っておきたいこと

便利な非常用電源であっても、内部に大きなエネルギーを蓄えている以上、取り扱いには注意が必要です。

経済産業省は、ポータブル電源について火災・感電等のリスクがあると説明しており、事故情報を踏まえて安全性要求事項を取りまとめています。

リチウムイオン電池製品について、消防庁は強い衝撃や高温を避けること、異常を感じたら使用を中止することを呼びかけています。炎天下の車内や暖房器具の近くなど、高温になる場所での使用・保管も避ける必要があります。

特に注意したい異変は、普段と比べて異常に熱くなる、膨らむ・変形する、異臭や異音がする、液漏れがある、充電や動作がおかしい、といったものです。

「まだ使えるから」と無理に使用を続けず、異常を感じた場合は使用・充電を中止し、メーカーや販売事業者の案内を確認してください。

また、雨や水濡れ、強い衝撃などにも注意が必要です。

防災用だからこそ、災害時に初めて箱から出すのではなく、平常時に一度使い方を確認しておいたほうが安心です。

防災用でも買ったまま保管しない

非常用品には、「使わないことが一番よい」という少し特殊な性格があります。

そのため、購入すると押し入れや収納へ入れたまま、何年も状態を確認しないことがあります。

NITEは、ポータブル電源や携帯発電機など災害時に使用する製品についても、用意しただけでは十分ではなく、正しい使用方法や製品の状態、リコール情報などを事前に確認するよう注意を呼びかけています。

ポータブル電源についても、保管時の充電状態や点検方法は製品によって異なります。

「半年ごとに必ず○%まで充電する」といった一律の方法を決めるのではなく、購入した製品の取扱説明書に従うことが基本です。

ときどき取り出して外観に異常がないか確認し、必要に応じて動作確認をする。メーカーや行政機関のリコール情報も確認する。

災害が起きたときに初めて壊れていることに気付く状態を避けることが、防災用品としては大切です。

エアコン・電子レンジ・電気ケトルなどを使いたい場合

「ポータブル電源でエアコンは使えますか」という疑問もあるでしょう。

結論からいえば、製品と機器の組み合わせによって異なります。

電子レンジ、電気ケトル、ドライヤー、エアコンなどは消費電力が比較的大きくなる製品があります。また、機器によっては起動時に大きな電力を必要とします。

そのため、確認するのは、

ポータブル電源の容量だけではありません。

家電側の消費電力や起動時の電力と、ポータブル電源側の定格出力・瞬間的な出力能力などを照らし合わせる必要があります。

仮に出力条件を満たして動かせたとしても、消費電力が大きければ蓄えた電気は早く減ります。

したがって、

「大容量モデルなら停電中もエアコンを長時間使える」

といった前提で選ばないほうがよいでしょう。

災害時に必要な電力を考えるなら、まず通信・照明・体調維持など優先順位の高い用途から考えるほうが現実的です。

ソーラーパネルは長期停電時の補助的な充電手段

ポータブル電源の中には、ソーラーパネルからの充電に対応している製品もあります。

長期停電時に外部から充電する手段が増える点はメリットです。

ただし、発電量は日照、天候、季節、設置場所、パネルの向きなどによって変わります。

曇天や雨の日が続けば十分な充電ができない可能性がありますし、ポータブル電源側の入力条件とソーラーパネルが適合している必要もあります。

そのため、

「ソーラーパネルがあれば何日停電しても電気に困らない」

とは考えないほうがよいでしょう。

あくまで充電手段の一つとして捉え、購入時にはメーカーが案内する対応パネルや入力条件を確認します。

在宅医療機器は市販のポータブル電源だけを前提にしない

家庭で電気を必要とする医療機器を使用している場合は、一般の家電とは分けて考える必要があります。

人工呼吸器など、電源停止が健康や生命に直接影響する機器について、「このポータブル電源なら○時間使える」と一般論だけで判断するのは避けたほうがよいでしょう。

厚生労働省は過去の停電対応に際し、在宅医療機器を使用している患者について、医療機関と医療機器メーカーが連携し、停電中の適切な使用について周知するよう求めています。

在宅医療機器を使用している家庭では、平常時のうちに主治医、訪問看護、医療機器メーカーなどへ相談し、停電時のバックアップ電源や連絡方法を確認しておくことが大切です。

市販のポータブル電源は、その計画の中で利用可能かどうかを個別に確認してください。

ポータブル電源と携帯発電機は仕組みも注意点も違う

非常用電源としては、ポータブル電源のほかに「携帯発電機」という選択肢もあります。

名前が似ていますが、仕組みは異なります。

ポータブル電源は、あらかじめ蓄えた電気を使用する蓄電装置です。

一方の携帯発電機は、ガソリンやガスなどの燃料を使い、その場でエンジンを動かして発電します。NITEも両者を災害時の電源確保に使われる製品として区別して説明しています。 (NITE)

携帯発電機で特に注意しなければならないのが一酸化炭素中毒です。

NITEは、携帯発電機を屋内では絶対に使用しないよう注意しています。車内やテント、物置、倉庫など排気ガスがこもる場所も同様です。屋外であっても、排気が窓や出入口から室内へ入らないよう離れた場所を選び、風通しを確保する必要があります。

ポータブル電源にはエンジンの排気ガスはありませんが、だからといって安全上の注意が不要になるわけではありません。

それぞれ別のリスクがあるため、同じ「非常用電源」として一括りにせず、製品ごとの使用方法を守ることが必要です。

戸建・マンションでは「停電後の暮らし」も確認する

ポータブル電源を考えることは、住宅そのものの停電対策を考えるきっかけにもなります。

戸建住宅では設備の停電時動作も見ておく

戸建住宅を購入するとき、太陽光発電や家庭用蓄電池が付いている物件もあります。

ただし、太陽光発電設備があるからといって、停電時に住宅内のすべてのコンセントを普段どおり使えるとは限りません。停電時の自立運転や利用可能な回路などは設備によって違います。

給湯設備や住宅設備についても、電気がなければ動かないものがあります。

ポータブル電源を置く場合は、日常生活の邪魔にならず、高温・水濡れを避けられる保管場所があるかも考えておきたいところです。

マンションでは専有部分以外の設備にも目を向ける

マンションでは自分の部屋にポータブル電源があっても、建物全体の設備が停電の影響を受けることがあります。

エレベーター、給水ポンプ、オートロック、機械式駐車場などがどうなるかは、建物の設備構成や非常用電源によって異なります。

高層階では、エレベーターが止まった場合の移動も生活上の大きな課題になります。

中古マンションを検討するときは、専有部分の内装や設備だけではなく、非常用電源や防災設備、管理組合の対応について確認してみるのも一つです。

ポータブル電源が役立つ場面はありますが、住宅やマンション全体の停電対策を一台で代替できるものではありません。

まとめ|大容量を選ぶ前に「何に電気を使うか」を考える

ポータブル電源は、災害時の停電に備える選択肢の一つです。

スマートフォンや照明、通信機器、季節家電などへ電気を供給できれば、在宅避難中の負担を減らせる場面はあるでしょう。

ただし、まず優先したいのは水・食料・携帯トイレなどの基本的な備蓄です。内閣府は最低3日、できれば1週間程度の備蓄を案内しています。

そのうえでポータブル電源を検討するなら、

「何Whの商品を買うか」から始めるのではなく、「停電したとき何に電気を使いたいか」から考えるのがおすすめです。

使いたい機器が決まれば、必要な容量Whと定格出力Wを確認できます。持ち運びや保管を考えれば、本体重量も選択条件になります。

そして、購入したあとも安全面を忘れてはいけません。

経済産業省はポータブル電源について一定の火災・感電リスクがあると説明しており、消防庁もリチウムイオン電池製品について高温・衝撃・異常発熱などへの注意を呼びかけています。

防災用品は、買うこと自体が目的ではありません。

必要なときに、必要な電気を、安全に使える状態にしておくこと。

容量や価格だけに目を向けず、自宅での使い方と保管方法まで考えて選ぶことが、停電への備えにつながります。

参考情報

確認日:2026年8月11日

内閣府「自然災害への備えは万全ですか?チェックしてみよう!」
URL:https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/check.html

経済産業省「ポータブル電源の安全性要求事項(中間とりまとめ)について」
URL:https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/system/potaburu-denngenn-youkyuu.html

経済産業省「モバイルバッテリーに関するFAQ」
URL:https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/mlb_faq.html

製品評価技術基盤機構(NITE)「備えただけでは、憂いあり ~ライフライン停止時に活躍する製品で気を付けるポイント~」
URL:https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2025fy/prs250828.html

総務省消防庁「リチウムイオン電池総合対策ポータル」
URL:https://www.fdma.go.jp/relocation/lithium-ion/

厚生労働省「停電による在宅医療患者への対応について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016zwa.html

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