空き家の害虫・害獣リスクとは?地方在住者600人調査から考える管理・売却
地方在住者600人への「害虫・害獣」調査で分かったこと
相続した実家を空き家のままにしているものの、「年に何度か見に行っているから大丈夫だろう」と考えている方は少なくないと思います。
屋根や外壁、庭の雑草は外からでも比較的目につきます。一方、ネズミやハクビシンなどの侵入、ハチの巣、天井裏の異変といった問題は、建物の中まで見なければ気づきにくいことがあります。
株式会社ネクスウィルは2026年8月4日、「放置空き家で深刻化する『害虫・獣害リスク』に関する実家じまい調査」を公表しました。
同社が「地方在住者」として設定した30~60代の男女600人を対象に行った調査では、「自身が害虫・害獣による被害や危険を経験した」と答えた人が12.8%、「家族・知人が被害を受けた」と答えた人が14.7%でした。
また、「地方で暮らす上で考えられる不安」を複数回答で尋ねたところ、「害虫・獣害による被害」は35.6%。「空き家の増加による治安・景観の悪化」も34.7%となっています。
調査で寄せられた具体例には、ハクビシンが天井裏へ入り込み、尿の被害によって天井を取り替えることになったケースのほか、ハチやイノシシ、クマに関する経験も含まれています。
数字だけを見ると少し不安になるかもしれません。
ただし、この調査結果は読み方に注意が必要です。
「12.8%」は放置空き家による被害率ではない
今回の12.8%という数字は、「放置空き家が原因で害虫・害獣の被害を受けた人の割合」ではありません。
調査では、害虫・害獣による被害や危険について尋ねています。
実際の回答には住宅へのハクビシン侵入だけでなく、山林でクマに遭遇したケースや、庭でハチに刺された経験、イノシシによる被害なども含まれています。
そのため、
「地方では12.8%の人が放置空き家による害獣被害を受けている」
と読み替えることはできません。
「自身が被害を経験した」12.8%と「家族・知人が被害を経験した」14.7%についても、本記事では単純に足し合わせません。両方を選択した人がいる可能性について、添付された集計資料だけでは確認できないためです。
さらに注意したいのが、調査対象となった地域です。
添付された一次資料では、調査上の「地方」から千葉県、東京都、神奈川県、埼玉県など複数の都道府県を除外すると記されています。
一方で、同じ資料の調査概要には「一都三県を除く居住エリア」と読める記載もあり、対象地域の表現には若干の揺れがあります。
少なくとも、今回の12.8%や35.6%を、千葉県や市原市・千葉市の被害率として紹介することはできません。
では、千葉県に空き家を所有している方には関係のない調査なのでしょうか。
そうとも言い切れません。
調査結果そのものを千葉県へ当てはめるのではなく、「人が住んでいない家では、害虫・害獣を含めた異変に誰が気づくのか」という視点で見ると、遠方の実家や相続した空き家を管理している方にも参考になる部分があります。
全国の空き家は900万戸を超えている
空き家そのものは、一部の地方だけの問題ではありません。
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月1日時点の全国の空き家は900万2千戸でした。
空き家率は13.8%で、空き家数・空き家率とも過去最高となっています。
ただし、「空き家」とひとくくりにしても、その状態はさまざまです。
賃貸住宅の空室もあれば、売却中の住宅や別荘なども統計上の空き家に含まれます。
本記事で特に考えたいのは、親が住まなくなった実家など、使用する人がいないまま所有者が管理を続けている住宅です。
人が住んでいなくても、家はそのままの状態を保ってくれるわけではありません。
換気、雨漏り、庭木、雑草、水まわり、郵便物など、住んでいたときには自然に気づいていた変化を、意識して確認する必要が出てきます。
害虫・害獣もその一つです。
放置された空き家では、なぜ害虫・害獣が問題になるのか
「空き家だから害獣が住みつく」と一律に考える必要はありません。
きちんと管理されている空き家も数多くあります。
問題になりやすいのは、長期間人が立ち入らず、建物や敷地の変化を発見する機会が少なくなっている状態です。
たとえば、軒や外壁の一部が傷んで隙間ができても、普段暮らしていれば比較的早く気づけます。
空き家では、その小さな変化が数か月見過ごされることがあります。
庭木や雑草も同じです。
少し伸びた段階なら手入れしやすくても、長期間そのままにすると敷地の奥まで入りにくくなり、建物の外周を確認すること自体が難しくなる場合があります。
国土交通省も、空き家を放置するリスクとして、倒壊や外壁落下だけでなく、「ねずみ・害虫など」の大量発生、動物の糞尿などによる悪臭、不法侵入、庭木の枝のはみ出しなどを紹介しています。
大切なのは、「害虫や害獣が怖いから空き家を手放さなければならない」と考えることではありません。
異変が起きても気づける状態を保てているかを考えることです。
ネクスウィルと岩手県紫波町の空き家対策
今回の調査を実施したネクスウィルは、空き家や訳あり不動産を扱う不動産会社で、自治体との連携による空き家対策にも取り組んでいます。
岩手県紫波町とは2024年9月13日に「空き家の流通促進に関する連携協定」を締結しました。
紫波町によると、協定では空き家の流通・活用促進、所有者への相談支援、訳あり不動産と利用者のマッチング、情報共有・発信などを連携事項としています。
また、ネクスウィルは2025年7月から、総務省の「地域活性化起業人」制度を活用して紫波町への社員派遣を開始しています。
今回の調査資料には、紫波町で草木の繁茂、害獣、屋根の飛散など、管理不全の空き家に関する相談が年間約100件あるとの記載もあります。
これは全国や千葉県の数字ではなく、あくまで紫波町で同社が取り組む空き家対策の現場について紹介されたものです。
それでも、「空き家の問題は建物の中だけで完結しない」という点は参考になります。
庭木や建物の破損、害虫・害獣などが近隣との問題へつながれば、所有者本人が住んでいなくても対応が必要になることがあります。
空き家で見落としたくない害虫・害獣のサイン
久しぶりに空き家へ行ったとき、「まず掃除をしなければ」と考える方は多いでしょう。
ただ、少しだけ時間を取って、普段と違うところがないか確認してみてください。
たとえば、天井や壁の内側から物音がする、室内に見覚えのない糞のようなものがある、天井に染みや変色がある、以前にはなかった臭いがするといった変化です。
軒下や屋根まわり、外壁の破損も見ておきたいところです。
ハチの巣などができていないか、庭木や雑草によって家の周囲が見えなくなっていないかも確認します。
ただし、こうした痕跡だけを見て「ハクビシンだ」「ネズミだ」と自己判断するのは避けたほうがよいでしょう。
動物の種類によって対応方法は異なりますし、自分で近づくことが危険な場合もあります。
異変を感じた場合には無理に触ったり捕まえたりせず、必要に応じて自治体や専門業者へ相談してください。
害虫・害獣への対応そのものと、不動産を今後どうするかは分けて考えることも大切です。
遠方の空き家は外から見るだけで終わらせない
県外から実家を管理していると、空き家を確認するだけでも一日仕事になることがあります。
せっかく現地まで行ったのだから、庭の草刈りをして、郵便物を回収して、外壁を眺めて終わり――ということもあるでしょう。
それだけでも何もしないよりずっと違います。
ただ、人が住んでいない住宅では、室内にも変化が起きていることがあります。
可能な範囲で窓や天井、床、水まわりなどを確認し、雨漏りの跡や異臭、見覚えのない汚れなどがないか見ておくと、異常を早めに発見しやすくなります。
建物の外では、屋根や軒、雨どい、外壁、庭木、雑草なども確認したいところです。
国土交通省は、当面空き家を活用したり除却したりしない場合には適切な管理が必要だとして、「空き家管理チェックリスト」も公開しています。
また、遠隔地に住んでいるなど、自分で管理するのが難しい場合には、空き家管理業者や修繕業者などの利用を検討するよう案内しています。
「毎月必ず1回行かなければならない」と一律に考える必要はありません。
建物の状態、季節、庭の状況、距離などによって必要な管理は変わります。
大切なのは、誰が、どのように状態を確認するのかが決まっていることです。
被害が起きる前に、空き家を今後どうするか考える
親が暮らしていた実家は、数字だけで割り切れるものではありません。
家族の思い出が残っていて、すぐ売る気持ちになれないこともあるでしょう。
兄弟姉妹で話がまとまっていなかったり、「将来は子どもが使うかもしれない」と考えていたりするケースもあります。
だからといって、空き家になった時点ですぐに売却しなければならないわけではありません。
今後も家族で使う予定があるなら、管理しながら保有する方法があります。
状態や立地によっては賃貸や別の用途で活用できる可能性もあります。
一方で、
「いつか使うかもしれない」
という状態が何年も続いているのであれば、一度だけ今後について考えてみるのもよいでしょう。
空き家を持ち続ける間は、固定資産税だけでなく、庭の手入れ、建物の補修、火災保険、現地までの交通費などもかかります。
何より、遠方に住んでいる場合には「何か起きていないだろうか」と気にし続けること自体が負担になることもあります。
選択肢は売却だけではありません。
保有する、家族で使う、活用する、売却する、建物の状態によっては解体を検討する。
それぞれの事情に合った方法を考えていけばよいと思います。
「管理不全空家」になる前に知っておきたいこと
空き家の管理を考えるうえでは、法律上の仕組みについても少し知っておきたいところです。
2023年12月13日に施行された改正空家法では、放置すれば「特定空家」になるおそれのある空き家について、新たに「管理不全空家」として市区町村が指導などを行える仕組みが設けられました。
管理不全空家や特定空家について市区町村から指導を受け、その後の勧告の対象となった場合には、敷地について固定資産税等の住宅用地特例が適用されなくなることがあります。
もちろん、
「庭に雑草が生えたら管理不全空家になる」
という単純な制度ではありません。
建物や敷地の状態を踏まえ、市区町村が判断します。
空き家を所有しているからといって過度に心配する必要はありませんが、「誰も見に行かない状態を何年も続ける」のは避けたいところです。
行政から通知が届いている場合には放置せず、内容を確認して自治体へ相談してください。
害虫・害獣の痕跡がある空き家でも売却相談はできる?
久しぶりに実家へ行ってみたら、天井裏に動物が入ったような形跡があった。
室内に糞のようなものがある。
庭が荒れて、建物の状態もよく分からない。
こうした状態を見ると、「もう普通には売れないのではないか」と不安になるかもしれません。
しかし、害虫・害獣の痕跡があることだけを理由に、売却という選択肢がなくなるわけではありません。
実際の売却方法は物件ごとに考える必要があります。
建物の状態を確認してから駆除や修繕を行って売却する方法もあれば、買主との条件を調整して現況のまま売却する方法も考えられます。
建物がかなり古い場合には、古家付き土地として販売する方法や、費用とのバランスを見ながら解体を検討するケースもあります。
ここで大切なのは、売却するために先に大きなお金をかける必要があるとは限らないということです。
駆除、家財処分、リフォーム、解体などを先に行ったほうがよいかどうかは、土地や建物の価値、接道状況、立地、想定される買主などによって変わります。
まず不動産会社に現状を見てもらい、そのうえで必要な対応を考える方法もあります。
一方、建物の不具合や害虫・害獣による損傷など、売買にあたって買主へ伝える必要がある事項については、状況に応じて適切に確認する必要があります。
個別の契約内容や法的な判断について疑問がある場合には、弁護士などの専門家への確認が必要になることもあります。
千葉県外から内房・外房などの実家を管理している方へ
今回紹介したネクスウィルの調査は、千葉県を対象とした調査ではありません。
そのため、
「千葉県でも12.8%の人が害虫・害獣被害を経験している」
「市原市や内房・外房でも35.6%の人が害虫・害獣を不安に感じている」
ということはできません。
それでも、千葉県内に空き家を所有している方にとって、今回の調査から考えられることはあります。
それは、人が住まなくなった家は、誰かが意識して見に行かなければ異変を発見しにくいということです。
市原市からそれほど離れていない物件であれば、週末などに見に行くこともできるでしょう。
一方、相続した実家が内房や外房にあり、所有者が東京都や神奈川県などで暮らしていれば、往復するだけでも時間がかかります。
仕事や家庭の予定が重なれば、
「今月は行けなかったから、来月でいいか」
となることも珍しくありません。
それ自体を責める必要はありません。
遠方の空き家を自分だけで管理し続けるのは、思っている以上に負担がかかるからです。
ただ、しばらく見に行けていないのであれば、一度状態を確認してみてください。
問題がなければ、そのまま管理を続ける選択ができます。
少し管理が難しくなっていると感じたら、家族で今後の使い方について話してみる。
自分たちで管理するのが難しければ、管理サービスを利用する。
今後使う予定がなければ、売却や活用について相談してみる。
「被害が出てからどうしよう」と考えるのではなく、何も起きていない段階で少しだけ今後を考えておくと、選択肢を持ちやすくなります。
まとめ|しばらく見ていない空き家なら、一度状態を確認してみる
株式会社ネクスウィルの調査では、同社が「地方在住者」として設定した600人のうち、12.8%が自身で害虫・害獣による被害や危険を経験したと回答しました。地方暮らしの不安として「害虫・獣害」を選んだ人も35.6%に上っています。
ただし、この数字は放置空き家による被害率ではなく、千葉県の統計でもありません。
それでも、空き家を所有している方にとっては、「人が住んでいない家をどのように見守るか」を考える一つのきっかけになる調査ではないでしょうか。
国土交通省も、管理されていない空き家について、ねずみや害虫、悪臭、不法侵入、庭木の越境など、周辺環境へ影響を及ぼす可能性を紹介しています。
実家には思い出があります。
相続したからといって、すぐに売る必要はありません。
一方で、方針が決まるまでの間も家は少しずつ変化していきます。
しばらく空き家を見ていないのであれば、まず一度、建物と敷地の状態を確認してみてください。
そのうえで管理を続けるのか、家族で使うのか、活用するのか、売却するのかを考えていけば十分です。
「まだ売るか決めていない」という段階でも、今後どうするか考え始めること自体が、空き家との付き合い方を見直す第一歩になります。
参考情報
確認日:2026年8月12日
株式会社ネクスウィル「地方在住者の12.8%が『自身で害虫・害獣被害』を経験 約4割が地方で暮らす上での不安要素に『害虫・獣害』と回答|実家じまい調査」
URL:https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/82769
株式会社ネクスウィル「岩手県紫波町への社員派遣について」
URL:https://www.nexwill.co.jp/news/26641/
岩手県紫波町「株式会社ネクスウィルと空き家の流通促進に関する連携協定を締結しました」
URL:https://www.town.shiwa.iwate.jp/soshiki/3_1/2_akiya/172653170721792/
国土交通省「空き家を放置するリスク」
URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiyataisaku/articles/2024020102.html
国土交通省「空家法とは」・
URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiyataisaku/articles/2024020105.html
国土交通省「空き家の管理のやり方」
URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiyataisaku/articles/2024020104.html
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
URL:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html
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すべてを片付けたり修繕したりしてから相談する必要があるとは限りません。
辰巳地所では、現地調査、役所調査、登記事項証明書の確認、売買契約書・重要事項説明書の作成、司法書士等との調整、決済・引渡しまで、不動産売買に必要な手続きをサポートしています。
害虫・害獣の種類の特定や駆除については、状況に応じて自治体や専門業者への確認が必要になります。
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「今すぐ売却したい」という段階でなくても構いません。
今後も管理しながら残すのか、売却を検討するのか。空き家の現在の状態を確認しながら、一緒に考えていきます。
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