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住宅ローン控除を受けながら、iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を積み立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2026年12月1日からはiDeCoの掛金上限が引き上げられるため、これを機に毎月の積立額を増やそうと考えている方も多いと思います。

そこで気になるのが、iDeCoと住宅ローン控除の関係です。

「iDeCoの掛金を増やすと住宅ローン控除が減ると聞いた」「両方の制度を利用すると、税金はどう変わるのだろう」と疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

結論からいうと、iDeCoと住宅ローン控除は併用できます。

ただし、iDeCoは所得控除、住宅ローン控除は税額控除という異なる仕組みのため、両方を利用すると所得税や住民税の計算に影響します。

iDeCoの掛金を増やした結果、住宅ローン控除の一部を使い切れなくなる場合もありますが、それだけで税制上の有利・不利を判断することはできません。

今回は、両制度の違いや税負担への影響を具体的な計算例とともに解説し、住宅購入前や住宅ローン返済中に確認しておきたい点を紹介します。

なお、この記事では一般的な制度の仕組みを紹介しています。実際の税額や控除の適用条件、申告方法については個別の事情によって異なるため、詳細は税理士・税務署などの専門機関にご確認ください。

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iDeCoと住宅ローン控除は併用できる?

iDeCoと住宅ローン控除は、それぞれの適用条件を満たしていれば、同じ年に両方の制度を利用できます。

iDeCoは、公的年金に上乗せする老後資金を自分で積み立て、運用する制度です。

加入者本人が支払った掛金は、原則として全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の計算に反映されます。

一方、住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して一定の要件を満たす住宅を取得し、入居した場合に、年末の住宅ローン残高などを基に計算した金額を所得税から差し引く制度です。

所得税から控除しきれない場合には、一定の範囲で翌年度の住民税からも控除を受けられます。

2026年度の税制改正によって住宅ローン控除の適用期限は5年間延長され、2030年12月31日までの入居が対象となりました。

住宅の種類や省エネ性能、床面積、所得などによって適用条件は異なりますが、住宅ローン控除を利用していることを理由に、iDeCoの所得控除が受けられなくなることはありません。

ただし、両制度は税金を計算する際に適用される段階が異なります。

この違いを理解すると、iDeCoの掛金を増やした場合に住宅ローン控除へどのような影響が生じるのか、考えやすくなります。

iDeCoは所得控除、住宅ローン控除は税額控除|仕組みの違い

所得控除と税額控除は、名称が似ていますが、税金を軽減する仕組みが異なります。

所得税は、給与収入や事業収入などから必要な計算を行い、各種の所得控除を差し引いた後の「課税所得金額」を基に計算します。

所得控除とは、税率を適用する前に、課税対象となる所得を減らす仕組みです。

iDeCoで支払った掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」として、その年に支払った全額を所得から差し引くことができます。

例えば、毎月2万円をiDeCoに拠出した場合、年間の掛金は24万円です。

この24万円が所得控除の対象になります。

ただし、24万円がそのまま税金から差し引かれるのではありません。所得から24万円を差し引いて税額を計算するため、税負担への影響は所得や税率、ほかの控除の適用状況などによって異なります。

これに対して、住宅ローン控除は税額控除です。

所得控除を反映して所得税額を計算した後、その税額から住宅ローン控除の対象額を差し引きます。

一般的な所得税の計算では、次のような順序になります。

所得金額からiDeCoを含む所得控除を差し引く → 所得税額を計算する → 住宅ローン控除を適用する

例えば、各種所得控除を反映して計算した所得税額が20万円で、住宅ローン控除の控除可能額が21万円だった場合、所得税から差し引ける住宅ローン控除は20万円です。

残りの1万円については、所定の条件を満たせば翌年度の住民税から控除されます。

iDeCoと住宅ローン控除を併用する場合には、この計算の順序がポイントになります。

なお、住宅ローン控除の適用要件で使われる「合計所得金額」は、iDeCoの掛金などの所得控除を差し引く前の金額を基に判断します。

そのため、iDeCoの掛金を増やして課税所得が少なくなっても、それだけで住宅ローン控除の合計所得金額の要件を満たせるようになるわけではありません。

iDeCoの掛金を増やすと住宅ローン控除は減る?

iDeCoの掛金を増やすと、住宅ローン控除を適用する前の所得税額が小さくなる場合があります。

その結果、住宅ローン控除を所得税から差し引ける金額も少なくなることがあります。

例えば、住宅ローン控除の控除可能額が年間21万円で、住宅ローン控除を適用する前の所得税額が18万円だったとします。

この場合、所得税から18万円を控除し、残り3万円は所定の条件を満たせば翌年度の住民税から控除できます。

その後、iDeCoの掛金を増やした結果、住宅ローン控除を適用する前の所得税額が16万円になった場合はどうでしょうか。

所得税から差し引ける住宅ローン控除は16万円になりますが、残り5万円について住民税の控除を受けられれば、住宅ローン控除の利用額は合計21万円で変わりません。

このように、iDeCoの所得控除によって所得税額が減っても、住宅ローン控除の利用額が必ず減少するわけではありません。

一方、住民税には住宅ローン控除の上限があります。

住宅ローン控除の控除可能額が大きく、所得税から差し引けない金額が住民税の上限を超える場合は、控除可能額の一部を使い切れなくなります。

また、iDeCoの掛金は住民税の所得計算にも影響するため、住民税側の控除限度額が変わる場合もあります。

実際の税負担を考える際は、住宅ローン控除の利用額だけでなく、iDeCoによる所得税・住民税への影響も合わせて確認する必要があります。

所得税で控除しきれない住宅ローン控除は住民税から差し引ける

住宅ローン控除は、まず所得税から適用されます。

所得税から差し引けなかった金額がある場合、一定の限度額まで翌年度の個人住民税から控除されます。

2026年から2030年までに入居する方については、住民税から控除できる金額の上限は、原則として「所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額」と「所得税の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)」のいずれか少ない金額です。

例えば、住宅ローン控除の控除可能額が25万円で、所得税から15万円を差し引いた場合、残りは10万円です。

住民税側の控除限度額が9万7,500円となり、住民税の所得割額も十分にある場合、住民税から差し引けるのは9万7,500円までとなります。

この場合、2,500円分の住宅ローン控除を使い切れません。

ただし、住民税の限度額は、誰でも一律に9万7,500円という意味ではありません。課税総所得金額等の5%がそれより少なければ、その金額が上限です。

また、住民税の所得割額が少ない場合にも、実際に差し引ける金額は小さくなります。

さらに、住宅ローン控除は入居した年によって、住民税側の控除限度額の計算方法が異なります。

例えば、2014年4月から2021年12月までに入居した方のうち、一定の条件を満たす場合には、7%・最高13万6,500円の上限が適用されます。

2025年以前に入居した方については、所得税の基礎控除の見直しに伴い、住民税の控除限度額の計算で調整が行われる場合もあります。

そのため、過去に住宅を購入して住宅ローン控除を受けている方は、ご自身の入居年と適用条件を確認してください。

住民税からの住宅ローン控除は、前年分の所得税の計算を基に、翌年度の住民税へ反映されます。

所得税の控除額だけを見るのではなく、翌年度の住民税まで確認することで、実際にどの程度控除を受けているか把握できます。

なお、住民税からの控除限度額や実際の適用額については、所得・入居年・ほかの控除などによって異なるため、詳細は税務署、税理士、またはお住まいの自治体の税務担当窓口にご確認ください。

iDeCoと住宅ローン控除を併用した場合の計算例

ここでは、iDeCoの掛金を増やしたことにより、住宅ローン控除を適用する前の所得税額が20万円から15万円になったケースを考えます。

住宅ローン控除の控除可能額が21万円の場合と、27万円の場合を比較してみましょう。

いずれも2026年以降の入居者を想定し、住民税側の控除上限が9万7,500円となるだけの課税所得があり、住民税の所得割額も十分にあるものとします。

住宅ローン控除の計算例iDeCo見直し前iDeCo見直し後
ケースA:控除可能額21万円
控除前の所得税額20万円15万円
所得税からの住宅ローン控除20万円15万円
住民税からの住宅ローン控除1万円6万円
住宅ローン控除の合計21万円21万円
ケースB:控除可能額27万円
控除前の所得税額20万円15万円
所得税からの住宅ローン控除20万円15万円
住民税からの住宅ローン控除7万円9万7,500円
住宅ローン控除の合計27万円24万7,500円

※上記は控除の仕組みを説明するための架空の計算例です。所得税額は仮定の数値であり、実際のiDeCo掛金の増額による税額の変化を算定したものではありません。ほかの所得控除・税額控除、復興特別所得税、端数処理などは簡略化しています。

ケースAでは、iDeCoの掛金増額によって所得税額が小さくなっても、住宅ローン控除の利用額は合計21万円で変わりません。

所得税から差し引ける金額が減った分を、住民税側で利用できるためです。

一方、ケースBでは、住宅ローン控除の控除可能額が27万円と大きいため、住民税側の上限が影響します。

iDeCo見直し前は住宅ローン控除を27万円すべて利用できていますが、見直し後は住民税の控除上限に達し、合計24万7,500円となります。

差額の2万2,500円は、住宅ローン控除として使い切れなくなった金額です。

ただし、この差額だけでiDeCoの増額が不利になったと判断することはできません。

iDeCoの掛金増額によって所得税や住民税の計算にも変化が生じるため、住宅ローン控除の利用額だけでは税負担全体を比較できないからです。

また、住宅ローン控除の控除可能額は年末の借入残高などによって変わるため、返済が進むにつれて両制度の関係も変化します。

実際の税額や控除の適用結果は、所得や家族構成、ほかの所得控除・税額控除、入居年などによって異なります。個別の税額計算や有利・不利の判断については、税理士などの専門家へご相談ください。

2026年12月のiDeCo掛金上限引上げで確認したいこと

2026年12月1日から、iDeCoや企業型確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられます。

企業年金のない会社員については、iDeCoの掛金上限が月額2万3,000円から6万2,000円に拡大されます。

一方、勤務先に企業型DCや確定給付企業年金(DB)などがある会社員・公務員は、それらの掛金と共通の上限枠が設けられます。実際にiDeCoへ拠出できる金額は、勤務先の制度によって異なります。

例えば、企業年金のない会社員が毎月のiDeCo掛金を2万円から4万円に増額すると、1年間継続した場合の掛金は24万円から48万円へ増えます。

その年に48万円を拠出した場合、原則として48万円が小規模企業共済等掛金控除の対象です。

ただし、今回の掛金上限の引上げは、2026年12月分から適用され、通常の口座振替では2027年1月に引き落とされます。

所得控除は原則として実際に掛金を支払った年を基準とするため、2026年12月分を2027年1月に支払う場合は、2027年分の所得控除の対象となります。

また、すでにiDeCoに加入している方が掛金の増額を希望する場合には、加入先の運営管理機関を通じて変更手続きを行います。

掛金を増やす際には、住宅ローン控除との税務上の関係に加え、毎月の生活費や住宅ローン返済、教育費、将来の支出なども考慮したいところです。

iDeCoは老後資金を準備する制度であり、原則として中途で自由に引き出すことができません。

掛金の上限が増えたからといって、必ず上限額まで積み立てる必要はありません。

住宅ローンを返済しながら老後資金を準備する場合は、現在の家計に無理のない金額を選ぶことが大切です。

住宅ローン控除とiDeCoを併用する前に確認したい書類

iDeCoと住宅ローン控除を併用している方は、まず現在の所得税額と住宅ローン控除額を確認してみましょう。

会社員の場合、参考になるのが勤務先から交付される源泉徴収票です。

源泉徴収票には、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、住宅借入金等特別控除の額などが記載されています。

また、住宅借入金等特別控除可能額の記載がある場合には、所得税から実際に控除された金額との違いも確認できます。

所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除については、翌年度の住民税の税額決定・納税通知書などが参考になります。

住民税の通知書には、住宅借入金等特別税額控除などの内容が記載される場合があるため、必要に応じてお住まいの自治体の税務担当窓口に確認してください。

iDeCoについては、国民年金基金連合会から発行される「小規模企業共済等掛金払込証明書」などで、その年に支払った掛金を確認できます。

なお、事業主払込によって給与から掛金が控除されている場合は、勤務先で年末調整の対象となるため、個人払込とは手続きが異なります。

住宅ローン控除については、初めて適用を受ける年は原則として確定申告が必要です。

会社員の場合、2年目以降は年末調整によって住宅ローン控除を受けられる場合があります。

iDeCoの所得控除も、年末調整または確定申告によって適用を受ける仕組みです。

これから住宅を購入する方は、住宅ローンの借入予定額や住宅性能だけでなく、ご自身の所得税・住民税の負担額も確認しておくと、住宅ローン控除の利用見込みを考える際の参考になります。

また、すでに住宅ローン控除を利用している方がiDeCoの掛金増額を検討する場合は、源泉徴収票や住民税の通知書などを用意しておくと、専門家へ相談する際にも役立ちます。

住宅ローン控除の適用可否、iDeCoとの併用による具体的な税額、確定申告の方法など、個別の税務上の判断については、税理士または税務署にご確認ください。

まとめ|iDeCoと住宅ローン控除は税負担全体で考える

iDeCoと住宅ローン控除は、それぞれの条件を満たせば併用できます。

iDeCoの掛金は所得控除の対象となり、住宅ローン控除は所得税額から直接差し引く税額控除です。

iDeCoの掛金を増やすことで、住宅ローン控除を適用する前の所得税額が小さくなり、所得税から差し引ける住宅ローン控除額が減少する場合があります。

ただし、所得税から控除しきれなかった金額は、一定の範囲で翌年度の住民税から控除できます。

住民税側には控除上限があるため、住宅ローン控除の一部を使い切れなくなる場合もありますが、iDeCoの所得控除による税負担への影響も合わせて考える必要があります。

2026年12月の制度改正では、iDeCoの掛金上限が引き上げられ、老後に向けた資産形成の選択肢が広がります。

住宅ローンを返済しながら積立てを続ける方にとっては、税制上のメリットだけでなく、毎月の家計や将来の生活費とのバランスも大切です。

これから住宅購入を検討する方や、iDeCoの掛金増額を考えている方は、住宅ローン控除の制度内容を理解したうえで、ご自身の生活設計に合った資金計画を考えてみてはいかがでしょうか。

なお、この記事では一般的な制度の仕組みを紹介しています。実際の税額や控除の適用条件、申告方法については個別の事情によって異なるため、詳細は税理士・税務署などの専門機関にご確認ください。

参考情報

確認日:2026年10月22日

国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm

国税庁「No.1000 所得税のしくみ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1000.htm

国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm

大田区「住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)について」
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/zeikin/kazei/jutaku4.html

国民年金基金連合会「制度改正について」
https://www.ideco-koushiki.jp/library/2022kaisei/

国税庁「税理士法違反行為」
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/06.htm

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