2026年10月1日施行|住宅リースバックのルールを国交省が明確化、契約前に知っておきたいポイント
自宅を売却したあとも、その家を借りて住み続ける「住宅のリースバック」。
「引っ越さずにまとまった資金を用意できる」という特徴がある一方で、売却後は自宅の所有者ではなく借主となるため、家賃や契約期間、更新、買戻しなど、通常の不動産売却にはない確認事項があります。
とくに、自宅を売る契約と、その後に同じ家を借りる契約を一緒に考えなければならないため、内容を十分に理解しないまま契約すると、後になって「思っていた条件と違った」と感じる可能性があります。
こうしたリースバック取引をめぐり、国土交通省は2026年7月、「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」を策定しました。2026年10月1日から施行されます。
今回、新しい「リースバック法」ができるわけではありません。
すでにある宅地建物取引業法について、住宅のリースバックではどのように適用するのかを明確にしたものです。
では、自宅のリースバックを検討する人にとって、どのような点を知っておけばよいのでしょうか。
2026年10月1日から住宅リースバックの取引ルールを明確化
住宅のリースバックは、自宅を事業者などへ売却し、その後は家賃を支払いながら同じ住宅に住み続ける取引です。
通常の売却であれば、売却価格や引渡し時期などが中心になりますが、リースバックではそれだけではありません。
売ったあとに毎月いくらの家賃を払うのか。何年間住めるのか。契約は更新できるのか。住宅の修繕費を誰が負担するのか。将来買い戻したい場合は、どのような条件になるのか。
こうした「売却後の暮らし」まで含めて契約を考える必要があります。
今回のガイドラインでは、この特徴を踏まえ、対象となるリースバック取引について、宅地建物取引業法第31条、第37条、第47条第1号、第47条の2などの考え方が具体的に示されました。
そのため、「2026年10月から初めてリースバックに宅建業法が適用される」という意味ではありません。
これまでの宅建業法について、リースバックという複合的な取引では何を伝え、どのような勧誘をしてはいけないのかを、より分かりやすくしたものと考えるとよいでしょう。
背景には家賃や契約期間などをめぐる相談
国土交通省がガイドラインを策定した背景には、リースバックに関する消費者相談があります。
全国の消費生活センター等に寄せられたリースバック関連の相談件数は、令和4年度116件、令和5年度227件、令和6年度242件、令和7年度214件でした。
直近年度には減少していますが、国土交通省は、賃料や契約期間、違約金などに関する相談が高い水準で推移していることや、高齢者を対象とした「押し買い」に当たる事例が発生していることをガイドライン策定の背景として挙げています。
リースバックで難しいのは、住宅を「売る」という判断だけでは終わらないところです。
たとえば、自宅を売却してまとまった資金が入ったとしても、その後は毎月家賃を支払わなければなりません。
長く住み続けられると思っていたところ、実際には定期建物賃貸借契約で期間が決まっていたというケースも考えられます。買戻しについても、「いつか買い戻せる」という説明だけでは十分とはいえず、契約上どのような条件になっているかを見る必要があります。
国民生活センターも2026年8月、リースバックについて、家賃の値上げや買戻し価格などをめぐる相談事例を公表し、契約を慎重に検討するよう呼びかけています。
ガイドラインの対象は「住宅のリースバック」
今回のガイドラインは、すべての不動産売買に新しいルールを設けるものではありません。
対象となるのは、居住している住宅を売却し、その後もその住宅を借りて引き続き住むことを目的として、売買と賃貸借が契約関係として一体となっているリースバック取引です。
そのうえで、売買の買主が宅建業者である場合や、宅建業者が売買を媒介・代理する場合などが対象になります。
売買契約と賃貸借契約を同時に締結する場合だけに限られるわけでもありません。
契約を結ぶ時期が異なる場合や、住宅の買主とその後の貸主が別であっても、住宅を売却した人がそのまま借りて住み続けることを目的とする一体的な取引であれば、対象となる場合があります。
あくまで「住宅のリースバック」に着目したガイドラインである点は押さえておきたいところです。
売買だけでなく「売ったあとの賃貸条件」も重要に
今回のガイドラインで特に注目したいのが、住宅の売買条件だけではなく、売却後の賃貸借条件についても、売主が契約するかどうかを判断するうえで重大な影響を及ぼす事項に当たり得ることが明確になった点です。
主な内容を見ると、リースバックが通常の住宅売却とは異なる取引であることが分かります。
| 分野 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 売買 | 契約解除、違約金、買戻し特約の有無・内容など |
| 賃貸借 | 家賃と支払方法、契約期間、更新、契約解除など |
| 契約形態 | 定期建物賃貸借である場合はその旨など |
| 費用 | 敷金等の精算、税公課、修繕費用の負担など |
| 売却後の所有関係 | 第三者へ物件が譲渡される可能性と、その場合の賃貸借への影響など |
ガイドラインでは、このほかにも詳細な事項が示されています。
ここから分かるのは、リースバックを比較するときに「いくらで買ってもらえるか」だけを見てはいけないということです。
仮に売却価格が高くても、その後の家賃が高ければ長期的な負担は大きくなります。
反対に家賃だけを比較しても、希望する期間まで住み続けられない契約であれば、暮らし方そのものを見直さなければならなくなるかもしれません。
売却と賃貸借を別々に考えるのではなく、一つの取引として確認する必要があります。
家賃や買戻しなどの「事実不告知」を明確に禁止
宅地建物取引業法第47条第1号では、契約するかどうかの判断に重要な影響を及ぼす事項について、宅建業者が故意に事実を告げない行為などを禁止しています。
今回のガイドラインでは、リースバックの特徴を踏まえ、売買だけでなく、その後の賃貸借の内容も契約判断に重大な影響を与える事項になることが明確になりました。
たとえば、買戻し特約の有無や内容、契約解除や違約金について重要な事実を故意に伝えないことは問題になります。
賃貸借についても同様です。
毎月の家賃、契約期間や更新、定期建物賃貸借に該当するかどうか、修繕費用の負担などは、売却したあとにどのような暮らしになるかを左右します。
さらに、事実と異なる説明をすることも認められません。
一方で、「説明がなかった=必ず宅建業法違反」と単純に判断できるものでもありません。個別の取引が法令違反に当たるかどうかは、契約内容や説明の経緯などによって判断が異なります。
契約や勧誘に疑問がある場合には、消費生活センターや宅建業免許行政庁、必要に応じて弁護士などへ相談することも考えてください。
また、重要な事項を故意ではなく過失によって伝えなかった場合についても、宅建業法第31条の信義誠実義務に抵触するおそれがあることがガイドラインに示されています。
「売るつもりはない」と断った後の勧誘にもルール
自宅は、多くの人にとって大切な生活基盤であり、大きな資産でもあります。
それだけに、「今日中に決めてください」「今売らないと損をします」といった言葉で決断を急かされれば、不安になるのも無理はありません。
今回のガイドラインでは、宅建業法第47条の2に関係する不適正な勧誘についても改めて確認されています。
たとえば、契約しない、あるいはこれ以上勧誘を受けたくないという意思を示した人に対して勧誘を続けることは認められていません。
また、正当な理由なく契約するかどうかを考える時間を与えないこと、勧誘目的を告げずに勧誘すること、迷惑を感じるような時間帯に電話や訪問をすることも禁止行為に関係します。
深夜や長時間にわたる勧誘などによって相手を困惑させたり、契約や解除をめぐって相手を威迫したりする行為についても同様です。
自宅の売却は、その場で即答しなければならないものではありません。
とくにリースバックでは、家を売った後の賃貸借契約まで長期的に影響します。内容を十分に理解できていないのであれば、一度持ち帰って検討する時間を確保したいところです。
売却価格と家賃は「なぜその金額なのか」も確認したい
今回のガイドラインには、法律上の義務として一律に扱われる事項とは別に、宅建業者が可能な範囲で「対応することが望ましい事項」も示されています。
その一つが、売却価格と家賃の算定根拠です。
さらに、売却によって受け取る代金と、契約期間中に支払う家賃などとの関係についても説明することが望ましいとされました。
ガイドラインでは、その例として「売却代金が賃料等の何か月分に相当するか」という考え方も示されています。
仮に自宅を1,500万円で売却し、毎月の家賃が15万円だったとしましょう。
単純計算では、売却代金1,500万円は家賃100か月分、およそ8年4か月分に相当します。
もちろん、「8年4か月を超えて住んだら損」という意味ではありません。
住宅を所有し続ければ固定資産税や修繕費がかかる場合がありますし、通常の仲介売却ならいくらで売れるのかという比較も必要です。住み替える場合には、新しい住宅の家賃や購入費用も考えなければなりません。
それでも、売却時に受け取る金額だけを見るのではなく、その後に支払う家賃を具体的な数字にしてみることは、リースバックが自分の生活に合っているかを考える材料になります。
なお、売却価格や家賃の算定根拠、売却代金と家賃等との関係についての説明は、今回のガイドラインで「対応することが望ましい事項」として示されているものです。
事実不告知が禁止される事項などと、すべて同じ法律上の義務として扱われているわけではありません。この点は分けて考える必要があります。
法違反が認められれば監督処分の対象となる場合も
ガイドラインでは、ルールを示すだけでなく、指導監督についても触れています。
ガイドラインに基づいて宅建業法違反が認められた宅建業者については、指示や業務停止命令、免許取消しなどの監督処分等をもって厳正に対処する方針です。
また、全国の消費生活センター等に寄せられる相談情報を集約する「PIO-NET」を活用し、個別の会社名が明示された相談情報を宅建業免許行政庁である地方整備局や都道府県へ共有することも示されています。
消費生活相談と宅建業者を監督する行政機関をつなぎ、問題のある取引への対応を進める考えです。
ガイドライン施行後も「ずっと住める」と保証されるわけではない
2026年10月からガイドラインが施行されることで、宅建業者が守るべき考え方はこれまで以上に明確になります。
ただし、「国がガイドラインを作ったから、リースバックなら安心」と考えるのは早いでしょう。
ガイドラインが施行されても、一生住み続けられることが保証されるわけではありません。
家賃が将来変わらないことや、契約が必ず更新されること、希望すれば必ず住宅を買い戻せることが一律に保証されるものでもありません。
実際にどのくらい住み続けられるかは、普通建物賃貸借なのか定期建物賃貸借なのか、契約期間や更新・再契約についてどのような取り決めがあるのかなど、個別の契約内容によって変わります。
買戻しについても、「将来買い戻すことができます」という説明だけで判断せず、契約上の権利なのか、価格はどのように決まるのか、期限はあるのかなどを確認したいところです。
リースバックそのものの仕組みやメリット・デメリット、普通借家と定期借家、買戻しなどについては、当社の「リースバックのメリット・デメリット」に関する記事で詳しくご紹介しています。
契約前は口頭説明だけでなく書面と数字で確認する
リースバックを提案されたときに覚えておきたいのは、「説明を受けたかどうか」だけではなく、「自分がその内容を理解できているか」ということです。
とくに、売却価格、毎月の家賃、契約期間、更新や再契約、買戻し、違約金、修繕費の負担などは、その後の生活に長く影響します。
口頭で「大丈夫です」「住み続けられます」と説明を受けただけで判断するのではなく、契約書などの書面と具体的な数字を見ながら確認したほうが安心です。
たとえば、「今の家にあと10年住みたい」と考えているのであれば、10年間の居住が契約上どのように扱われるのかを見る必要があります。
家賃が月15万円であれば、年間では180万円です。10年間単純に同じ家賃なら1,800万円になります。家賃の改定条件も含め、売却後の生活費として無理がないかを考えてみることが大切です。
まとまった資金が必要な状況では、どうしても「いくらで売れるのか」に目が向きやすくなります。
しかし、リースバックは住宅を売却して終わる取引ではありません。
自宅を売った翌月から、今度は家賃を支払う生活が始まります。
売却によって手元に入る金額と、その後の家賃負担を同じ時間軸で考えることが、後悔を減らすための一つのポイントになります。
リースバックだけでなく通常売却なども比較してから決める
リースバックには、自宅を売却したあとも同じ家で生活できる可能性があるという特徴があります。
転居を避けたい事情がある方にとって、検討する価値のある選択肢になる場合もあるでしょう。
ただ、「自宅を売って資金を用意したい」という目的だけであれば、リースバック以外にも方法があります。
通常の仲介売却で住宅を売却して住み替える方法もありますし、売却までの期間を優先するのであれば、不動産買取を比較することも考えられます。
住宅ローンが残っている場合には、まず売却代金で残債を完済し、抵当権を抹消できる見込みがあるかを確認する必要もあります。
そして、「できればこの家に住み続けたい」という希望が強い場合には、所有権を手放してまでリースバックを利用することが本当に希望に合っているのか、一度考えてみてもよいでしょう。
リースバック、リバースモーゲージ、通常売却などは仕組みそのものが異なります。それぞれの違いについては、当社の「リバースモーゲージとリースバックの違い」に関する記事でも詳しく解説しています。
2026年10月1日から施行されるガイドラインは、住宅のリースバックを扱う宅建業者に対して、宅建業法上の考え方をより明確に示すものです。
売買だけではなく、その後の賃貸借条件まで重要な情報として扱われることや、強引な勧誘に関するルールが改めて示されたことは、住宅を売る側にとっても知っておきたい動きです。
一方、ガイドラインが施行されたからといって、リースバックがすべての人に適した売却方法になるわけではありません。
「いくらで売れるのか」だけではなく、「売ったあとに、どのような条件で、いくら支払いながら、いつまで暮らすのか」。
そこまで確認したうえで、通常売却などほかの方法とも比べながら、自分や家族のこれからの生活に合う方法を選ぶことが大切です。
参考情報
確認日:2026年8月25日
国土交通省「『住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』について」
URL:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_fr3_000001_00034.html
国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」
URL:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002013677.pdf
国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法ガイドラインの策定」
URL:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/002013678.pdf
e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」
URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
独立行政法人国民生活センター「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」
URL:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260804_1.html
消費者庁「資産の運用・処分は取引の仕組みや目的がきちんと納得できてから!」
URL:https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_policy_cms102_251225_01.pdf
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