日本ハムのファーム移転候補地で埋蔵文化財調査|遺跡が見つかると建設はどうなる?
建設予定地から縄文時代の土器や石器が見つかった。
そんなニュースを見ると、「予定していた建物は造れなくなるのだろうか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
北海道恵庭市では現在、北海道日本ハムファイターズのファーム関連施設の移転候補地となっている西島松地区で、新市街地整備に向けた埋蔵文化財の発掘調査が進められています。
球団は2026年7月2日、現在千葉県鎌ケ谷市にあるファーム施設の移転候補地について、北海道恵庭市に内定したと発表しました。その後、恵庭市は同年9月から、新市街地計画区域約46ヘクタールを対象に測量と埋蔵文化財発掘調査を順次始めています。
「遺跡が見つかったら建設できない」と考えがちですが、実際の埋蔵文化財行政はもう少し複雑です。
今回は、ファイターズのファーム移転をめぐる最新状況を入り口に、埋蔵文化財と開発・住宅建築がどのように関係するのかを見ていきます。
※本記事は2026年9月27日時点で確認できる情報をもとに作成しています。
日本ハムのファーム移転候補地で埋蔵文化財の発掘調査
調査が進められているのは、恵庭市西島松地区です。
恵庭市によると、対象となるのはJR千歳線の恵み野駅から島松駅の間に位置する新市街地計画区域で、面積は約46ヘクタール。
2026年9月から、用地・地形の測量とあわせて、埋蔵文化財の試掘・本発掘調査を順次進めています。
今回の調査は、工事中に偶然何かが見つかって急きょ始まったものではありません。
恵庭市は、工事着工前に埋蔵文化財の有無や範囲、詳しい状況を把握・記録し、文化的な価値を保護するための調査と説明しています。必要な場所では、専門員の立ち会いのもとで表土を掘削し、遺構の確認や出土品の回収などを行います。
つまり、新市街地を整備する準備の一つとして、土地の境界や地形を調べるのと並行して、地下に残る文化財についても確認しているわけです。
2025年の事前調査では縄文時代の土器や石器を確認
今回のニュースで特に目を引くのが、「縄文時代の土器や石器が見つかっていた」という点でしょう。
UHB北海道文化放送の2026年9月16日の報道によると、恵庭市教育委員会は、2025年7月に行われた事前調査で縄文時代の土器や石器が確認されたとしています。
ここは時系列に注意が必要です。
2026年9月に始まった発掘調査で初めて縄文土器が発見された、という意味ではありません。前年の事前調査ですでに遺物が確認されており、その後の新市街地整備に先立って、より詳しい調査が進められているという流れです。
「ファーム施設を造ろうとしたら突然遺跡が見つかった」というイメージとは少し違います。
土器や遺跡が見つかると建設は止まるのか
ここが一番気になるところだと思います。
結論からいえば、埋蔵文化財が確認されたからといって、それだけで直ちに建築や開発ができなくなるわけではありません。
文化庁によると、埋蔵文化財が存在することが知られている「周知の埋蔵文化財包蔵地」は全国に約46万か所あります。
そうした土地で土木工事などの開発を行う場合には、文化財保護法に基づく事前の届出等を行い、教育委員会などと文化財の取り扱いについて調整します。
遺跡をそのまま残した状態で開発できれば、それが一つの方法です。
一方、工事との関係から現状のまま保存することが難しい場合には、事前に発掘調査を行い、遺跡の内容を記録として残す「記録保存」が行われることがあります。そのうえで開発へ進むケースもあります。
ですから、
「土器が出たら建設中止」
でもなければ、
「出土品を取り出せば、そのまま自由に建築できる」
という単純な仕組みでもありません。
遺跡の内容や工事計画を踏まえながら、保存と開発について行政との調整が行われます。
9月25日には恵庭市と球団が基本協定を締結
では、今回のファーム移転計画はどうなっているのでしょうか。
最新の公式発表を見ると、埋蔵文化財調査が進むなかでも、新市街地整備とファーム施設移転に向けた協議は続いています。
2026年9月25日、恵庭市、北海道日本ハムファイターズ、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの3者は、「(仮称)西島松新市街地整備事業に関する基本協定」を締結しました。
計画されているファーム関連施設には、メインスタジアム、サブグラウンド、内野練習場、室内練習場、選手寮などが含まれます。
さらに、この計画は野球施設だけではありません。住宅、商業、公園緑地などを含めた新市街地として、一体的な整備を進める方針が示されています。
球団が2026年7月に移転候補地を発表した段階では、2030年または2031年の施設開業を目指すとしていました。一方、9月25日の基本協定では、詳しいスケジュールについて今後3者で協議するとしています。
したがって、2026年9月27日時点では、発掘調査を行いながら、移転と新市街地整備に向けた手続き・協議が進んでいる段階と見るのが適切でしょう。
今後の調査結果によって工期や計画にどのような影響が出るかは、現時点で決めつけることはできません。
なぜ建設工事の前に発掘調査をするのか
「どうせ建物を造るなら、先に発掘する必要があるのだろうか」と感じるかもしれません。
しかし、一度造成や基礎工事が始まれば、地下に残っていた遺構や遺物は元の状態では確認できなくなることがあります。
そのため、工事前にどのような文化財がどの範囲に存在するのかを確認し、保存するのか、記録を残したうえで開発するのかを検討します。
恵庭市も今回の発掘調査を、歴史的遺産を保護するために欠かせないプロセスと位置づけています。
開発と文化財保護は、「どちらか一方しか選べない」とは限りません。
文化財の状況を確認しながら、必要な記録を残し、場合によっては工事内容や計画との調整を行う。今回の西島松地区の調査は、その仕組みをイメージしやすい事例といえます。
一般の住宅用地でも埋蔵文化財の確認が必要になることがあります
ここまで読むと、「46ヘクタールもの大規模開発だから必要な話なのでは」と感じる方もいるでしょう。
しかし、埋蔵文化財は球場や大規模商業施設だけに関係するものではありません。
一般の住宅建築でも、対象となる土地が周知の埋蔵文化財包蔵地に該当していれば、文化財保護法に基づく手続きが必要になる場合があります。文化庁は、民間事業者が周知の埋蔵文化財包蔵地で土木工事等を行う場合、文化財保護法93条に基づく事前の届出が必要になると案内しています。
新築住宅の基礎工事だけでなく、土地の造成、地盤改良、擁壁、給排水工事など、地面を掘削する工事との関係で確認が必要になることもあります。
ただし、必要な手続きや調査の内容は土地や工事計画によって異なります。
文化財保護法93条の届出、試掘・本発掘、工事立会、調査費用などについては、当サイトの関連記事**「埋蔵文化財包蔵地内の土地を売買する際の注意点」**で詳しく解説しています。
「埋蔵文化財包蔵地=建築できない土地」ではありません
物件資料に「埋蔵文化財包蔵地」と書かれていると、それだけで購入をためらってしまう方もいるかもしれません。
けれども、包蔵地に該当するからといって、一律に住宅を建築できないわけではありません。
文化庁によれば、全国には約46万か所もの周知の埋蔵文化財包蔵地があります。毎年、多くの発掘調査が行われながら、文化財の保護と開発との調整が続けられています。
土地を購入するときに確認したいのは、単に「包蔵地か、そうでないか」だけではありません。
予定している建物や工事内容に対して、どのような手続きが必要になるのか。試掘などが必要になる可能性はあるのか。建築スケジュールへどの程度影響しそうなのか。
こうした点を、契約前に確認できているかどうかの方が実務上は大切です。
土地を買う前に、建築への影響まで確認しておきたい
今回の北海道日本ハムファイターズの事例を見ると、埋蔵文化財の発掘調査と開発計画が、必ずしも二者択一ではないことが分かります。
恵庭市では、工事に先立って文化財を調査しながら、9月25日には球団などとの基本協定も締結されました。現在もファーム関連施設と新市街地の整備に向けた協議が進められています。
一般の土地購入でも同じように、「埋蔵文化財があるかもしれないから避ける」と最初から決める必要はありません。
一方で、購入してから初めて「届出が必要だった」「試掘が必要になった」と分かると、予定していた着工時期や資金計画に影響することがあります。
土地を検討するときは、道路や上下水道、用途地域などと同じように、必要に応じて埋蔵文化財包蔵地への該当も事前に確認しておきたいところです。
その土地でどのような建物を計画しているのかまで踏まえて確認しておけば、必要以上に不安になることなく、購入後のスケジュールも考えやすくなります。
参考情報
確認日:2026年9月27日
恵庭市「西島松地区における新市街地整備に伴う各種調査業務(測量・埋蔵文化財発掘調査)の実施について」
URL:https://www.city.eniwa.hokkaido.jp/soshikikarasagasu/kikakushinkoubu/farmseibi/23602.html
恵庭市「【共同発表】(仮称)西島松新市街地整備事業に関する基本協定締結のお知らせ」
URL:https://www.city.eniwa.hokkaido.jp/kurashi/shiseijoho/machizukuri/toshikeikaku/3/23672.html
北海道日本ハムファイターズ「ファーム施設移転候補地内定について」
URL:https://www.fighters.co.jp/news/detail/202600909592.html
北海道日本ハムファイターズ「ファーム施設移転に関する北海道恵庭市との基本協定書締結について」
URL:https://www.fighters.co.jp/news/detail/202600950240.html
文化庁「埋蔵文化財」
URL:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/maizo.html
UHB北海道文化放送「ファイターズ2軍本拠地移転予定地で『埋蔵文化財の発掘調査』進む」
URL:https://www.uhb.jp/news/single.html?id=62182
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