共働き世帯の住宅ローンとiDeCo|夫婦の積立と住居費のバランス
共働き夫婦で住宅購入を考えるとき、夫婦それぞれの収入を合わせて住宅ローンを組むか、どちらか一人の収入を基に借り入れるか、迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
二人の収入を合わせれば、購入できる住宅の選択肢が広がります。一方で、出産や育児休業、時短勤務、転職などによって、一方の収入が減少する可能性も考えておきたいところです。
また、共働き世帯では、夫婦それぞれがiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用し、老後資金を積み立てている家庭もあると思います。
2026年12月1日からは、会社員などのiDeCo拠出限度額が引き上げられる予定です。夫婦で掛金を増やすことも考えられますが、住宅ローン返済や教育費、日常生活に必要なお金とのバランスが気になります。
さらに、住宅ローンには単独ローン・ペアローン・収入合算などの借入方法があり、夫婦の返済義務や団体信用生命保険の保障内容も異なります。
共働き世帯の住宅購入では、現在の世帯年収だけでなく、夫婦の働き方が変わった後も無理なく返済を続けられるかを考えることが大切です。
この記事では、住宅ローンの借入方法と夫婦それぞれのiDeCo掛金について解説します。育児休業によって収入が減った場合の家計比較や、住宅購入時の登記持分、住宅ローン控除についても紹介します。
共働き世帯の住宅購入では世帯年収だけで判断しない
夫婦の収入を合わせると購入の選択肢が広がる
共働き世帯では、夫婦それぞれに収入があるため、住宅購入の資金計画にも選択肢が生まれます。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収も500万円であれば、世帯年収は1,000万円です。
金融機関の条件を満たせば、夫婦の収入を合わせて住宅ローンの審査を受けられます。どちらか一人の収入だけで借りる場合よりも、多くの借入額を検討できる可能性があります。
ただし、金融機関が融資可能と判断する金額と、家計として無理なく返済できる金額は分けて考える必要があります。
特に住宅ローンは長期間にわたるため、購入時点の世帯年収だけで返済額を決めないようにしたいものです。
一方の収入が減った場合も考えておく
住宅購入後には、出産や育児休業、時短勤務、転職などによって夫婦の働き方が変わることもあると思います。
例えば、出産後に育児休業を取得したり、復職後に時短勤務を選択したりすると、それまでより収入が少なくなる場合があります。
その間も住宅ローンの返済は続きます。
また、子どもの成長に伴って教育費が増えることや、住宅の修繕費などが必要になることも考えられます。
そのため、夫婦の収入を合わせて住宅ローンを組む場合には、現在の収入だけでなく、一方の収入が減少した場合の家計も確認しておくと安心です。
単独ローン・ペアローン・収入合算は何が違う?
共働き世帯が住宅ローンを利用する方法には、主に単独ローン、ペアローン、収入合算があります。
それぞれ契約方法が異なり、夫婦の返済義務や団体信用生命保険、住宅ローン控除の取扱いにも違いがあります。
単独ローンは夫婦の一方が借り入れる方法
単独ローンは、夫婦のどちらか一人が住宅ローンを借り入れる方法です。
例えば、夫の収入を基に住宅ローンを組み、夫が債務者となるケースが該当します。
一人の収入で必要な借入額を確保できる場合には、契約関係が比較的分かりやすい方法です。
ただし、単独ローンを利用する場合でも、購入資金の負担や不動産の登記持分については、実際の資金の出し方に応じて確認する必要があります。
ペアローンは夫婦がそれぞれ借り入れる方法
ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローンを契約する方法です。
例えば、3,000万円の住宅購入資金について、夫が2,000万円、妻が1,000万円を借り入れるケースです。
夫婦がそれぞれ債務者となり、住宅ローン契約は原則として2本になります。
それぞれの収入に応じて借入額を設定できる一方、双方が契約に基づく返済義務を負います。また、契約に伴う諸費用や団信の保障内容についても確認が必要です。
収入合算には連帯債務型と連帯保証型がある
収入合算は、夫婦の収入を合わせて住宅ローンの審査を受ける方法です。
連帯債務型では、1本の住宅ローンについて夫婦が連帯して返済義務を負います。
一方、連帯保証型では、夫婦の一方が主債務者となり、もう一方が連帯保証人になります。
主な違いをまとめると、次のようになります。
| 借入方法 | 契約の特徴 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 単独ローン | 一方が債務者 | 単独での返済負担 |
| ペアローン | 夫婦それぞれが借入契約 | 双方の返済義務・団信・諸費用 |
| 連帯債務型 | 1本のローンを夫婦で連帯して返済 | 返済義務・団信・住宅ローン控除 |
| 連帯保証型 | 一方が主債務者、他方が連帯保証人 | 保証責任・住宅ローン控除 |
ペアローンや収入合算は、夫婦の収入を住宅購入に生かせる方法ですが、借入額だけで選ぶものではありません。
返済義務や保障内容、住宅ローン控除の取扱いは契約方式によって異なります。具体的な条件は、利用を検討している金融機関に確認してください。
夫婦それぞれのiDeCo掛金と2026年12月の制度改正
iDeCoの掛金上限は夫婦それぞれの加入条件で決まる
iDeCoは、加入者が自分で掛金を拠出し、選択した金融商品で運用しながら老後資金を準備する制度です。
共働き夫婦の場合、夫婦それぞれが加入条件を満たせば、双方がiDeCoを利用できます。
ただし、掛金の上限額は夫婦共通ではなく、それぞれの国民年金の加入区分や勤務先の企業年金制度によって決まります。
2026年12月1日からは、会社員や公務員などの国民年金第2号被保険者について、iDeCoと企業年金等の共通拠出限度額が月額6万2,000円に引き上げられる予定です。
勤務先に企業年金がない会社員の場合、iDeCoの拠出限度額は月額2万3,000円から6万2,000円に引き上げられます。
一方、勤務先に企業型DCや確定給付企業年金などがある場合は、企業年金等の掛金額を考慮して、iDeCoに拠出できる金額を計算します。
夫婦とも会社員であっても、勤務先の制度が異なれば、拠出可能額も変わる場合があります。
また、退職などによって国民年金第3号被保険者になった場合、iDeCoの拠出限度額は月額2万3,000円で、今回の改正による変更はありません。
iDeCoの所得控除も夫婦それぞれに適用される
iDeCoの掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。
ただし、所得控除は夫婦の掛金を世帯で合算して適用する仕組みではありません。
例えば、夫が月額2万円、妻が月額1万5,000円を拠出している場合、夫の掛金は夫本人の所得控除、妻の掛金は妻本人の所得控除の対象になります。
夫婦の掛金合計は月額3万5,000円ですが、その全額を夫だけの所得から控除することはできません。
また、妻に課税所得がない場合、妻がiDeCoに拠出していても、掛金の所得控除による税負担軽減は生じません。
実際の税額については、本人の所得や住宅ローン控除などの適用状況も関係するため、必要に応じて税理士・税務署へ確認してください。
住宅ローン返済と夫婦のiDeCo積立額を比較
共働き夫婦が住宅ローンを返済しながら、iDeCoにも積み立てている場合を考えてみます。
ここでは、夫婦ともに会社員で、勤務先に企業年金がない世帯を想定します。
通常勤務時は毎月7万5,000円の余裕があるケース
夫の毎月の手取り収入が33万円、妻が23万円で、世帯の手取り収入は合計56万円です。
住宅ローンの返済額は月13万円、生活費やその他の支出は32万円とします。
iDeCoには夫が月額2万円、妻が月額1万5,000円を拠出している設定です。
| 項目 | 毎月の金額 |
|---|---|
| 夫の手取り収入 | 330,000円 |
| 妻の手取り収入 | 230,000円 |
| 世帯の手取り収入合計 | 560,000円 |
| 住宅ローン返済額 | 130,000円 |
| 生活費・その他支出 | 320,000円 |
| 夫のiDeCo掛金 | 20,000円 |
| 妻のiDeCo掛金 | 15,000円 |
| 毎月の差引収支 | +75,000円 |
※説明のための仮定です。生活費・その他支出には住宅ローンとiDeCo以外の支出を含めています。住宅ローンの審査上の借入可能額を示すものではありません。
この例では、住宅ローン返済と夫婦のiDeCo掛金を合わせた支出は、毎月16万5,000円です。
生活費などを差し引いた後にも、毎月7万5,000円が残ります。
年間では90万円の余裕が生まれる計算です。
ただし、この家計は夫婦が現在と同じ収入を得られることを前提としています。
育児休業などで収入が減った場合
次に、妻が育児休業を取得するなどして、妻側の月間収入が12万円に減った場合を考えてみます。
住宅ローン返済額、生活費、夫婦のiDeCo掛金は変更しないものとします。
| 項目 | 通常勤務時 | 収入減少時 |
|---|---|---|
| 世帯の月間収入 | 560,000円 | 450,000円 |
| 住宅ローン返済額 | 130,000円 | 130,000円 |
| 生活費・その他支出 | 320,000円 | 320,000円 |
| 夫婦のiDeCo掛金 | 35,000円 | 35,000円 |
| 毎月の差引収支 | +75,000円 | -35,000円 |
※妻側の月間収入12万円は、育児休業等給付などを含む比較用の仮定です。実際の受給額とは異なります。育児・保育に伴う支出の変化は含めていません。
通常勤務時には毎月7万5,000円の余裕があっても、一方の収入が減ると毎月3万5,000円の不足が生じる計算です。
不足が続く場合には、預貯金などで補う必要があります。
この例から分かるのは、共働き世帯の住宅ローン返済とiDeCoの積立額を考える際に、通常勤務時だけでなく、一方の収入が減少した場合の家計も確認しておきたいということです。
なお、iDeCoの掛金については、所定の手続きによって変更したり、拠出を停止したりすることができます。変更時期や手続きの条件は、加入先の運営管理機関に確認してください。
育児休業・時短勤務・退職で収入が変わる場合
育児休業中は収入だけでなく税制上の取扱いも変わる
共働き夫婦の家計では、育児休業や時短勤務などによる収入の変化も考えておきたいものです。
育児休業中は、一定の条件を満たせば雇用保険から育児休業等給付を受けられます。
育児休業等給付は非課税所得であり、所得税の課税対象にはなりません。
そのため、通常勤務時の給与収入とは税務上の取扱いが異なります。
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象ですが、実際の税負担軽減額は本人の課税所得によって変わります。
例えば、育児休業によって年間の課税所得がなくなった場合、iDeCoの掛金を拠出していても、所得控除による税負担軽減は生じません。
一方、育児休業に入る前の給与や賞与などによって課税所得がある場合は、その年の所得状況に応じた確認が必要です。
退職した場合はiDeCoの加入区分も確認する
育児休業を取得しただけで、自動的に国民年金第3号被保険者へ変更されるわけではありません。
勤務先の厚生年金保険の被保険者資格が継続していれば、原則として第2号被保険者のままです。
一方、退職して配偶者の扶養に入る場合などは、国民年金の加入区分が変わることがあります。
加入区分が変われば、iDeCoの拠出限度額や必要な届出にも影響します。
また、収入が減った期間にiDeCoの掛金を続けるかどうかは、税制上のメリットだけでなく、生活費や預貯金も踏まえて考える必要があります。
掛金の変更・停止を検討する場合は、加入先の運営管理機関へ確認するとよいでしょう。
子どもの教育費と夫婦それぞれの老後資金をどう考える?
教育費とiDeCoの積立資産は使う時期が異なる
住宅ローンとiDeCoの積立てを続ける共働き世帯では、子どもの教育費についても考えておきたいところです。
子どもが小さいうちは住宅ローンとiDeCoの積立てを両立できていても、中学・高校・大学への進学時には、教育費の負担が増える可能性があります。
iDeCoは老後資金を準備する制度であり、原則として老齢給付金の受給可能年齢まで資産を自由に引き出せません。
そのため、数年後に教育費として利用する予定のお金は、必要な時期に使える預貯金などで準備する方法が考えられます。
老後資金は個人別、生活費は世帯全体で考える
夫婦がそれぞれiDeCoに加入している場合、積立資産は個人別に管理されます。
例えば、夫が月額2万円、妻が月額1万5,000円を拠出していれば、夫婦合計では毎月3万5,000円を老後資金として積み立てる計算です。
一方、住宅ローン返済や教育費、生活費は世帯全体で考える必要があります。
夫婦それぞれの老後資金を準備しながら、教育費や住宅の維持費、急な出費に備える預貯金も確保しておきたいものです。
個人ごとに積み立てるお金と、家族として使うお金を分けて考えることが、共働き世帯の資金計画には役立ちます。
ペアローンの持分・団信・住宅ローン控除で確認したいこと
ペアローンや収入合算を利用する場合は、借入額や毎月の返済額だけでなく、登記持分や団体信用生命保険、住宅ローン控除についても確認が必要です。
購入資金の負担割合と登記持分
夫婦で住宅を購入する際には、実際の購入資金の負担割合と登記持分の関係に注意したいところです。
例えば、3,000万円の住宅を購入し、夫が2,000万円、妻が1,000万円を負担する場合を考えてみます。
この場合、購入資金の負担割合は夫が3分の2、妻が3分の1です。
ところが、登記持分を夫婦それぞれ2分の1とすると、実際の資金負担と所有権の割合が一致しません。
国税庁では、このような例について、妻の取得する持分が1,500万円相当となり、妻の負担額1,000万円との差額500万円について贈与税の問題が生じると説明しています。
住宅購入時には、住宅ローンの借入名義だけでなく、頭金などを含む実際の資金負担と登記持分を確認する必要があります。
具体的な持分割合や贈与税の取扱いについては、税理士・税務署、司法書士などへ相談してください。
ペアローンの団信は保障される範囲を確認する
ペアローンでは、夫婦それぞれが住宅ローンを借り入れます。
一般的な個別加入型の団体信用生命保険では、夫婦の一方に死亡などの保険事故が生じた場合、その方の借入残高が保障対象となります。
もう一方の住宅ローンについては、引き続き返済する必要があります。
ただし、金融機関によっては、夫婦連生型の団信など、保障内容が異なる商品もあります。
加入条件や保障範囲、金利への上乗せなどは商品ごとに異なるため、住宅ローンの契約前に具体的な内容を確認しておきたいところです。
住宅ローン控除は夫婦それぞれの条件で判断される
住宅ローン控除についても、契約方法や所有持分、資金負担割合、所得税額などによって取扱いが変わります。
ペアローンでは、夫婦それぞれが要件を満たせば、住宅ローン控除を受けられる場合があります。
連帯債務型でも、夫婦それぞれの負担関係や持分などを踏まえて控除の対象額を判断します。
一方、連帯保証人という立場だけで住宅ローン控除を受けられるものではありません。
また、iDeCoの掛金を増やすと本人の所得控除額が増えるため、住宅ローン控除で実際に控除できる金額にも影響する場合があります。
住宅ローン控除や贈与税の具体的な適用可否、税額計算については、税理士または税務署への確認をおすすめします。
住宅購入前に金融機関・税務署・iDeCoの運営管理機関へ相談すること
共働き夫婦が住宅を購入する際には、住宅ローンの契約方法に加え、夫婦それぞれの収入や年金制度、将来の働き方についても確認しておきたいものです。
住宅ローンの契約条件は金融機関へ確認する
単独ローン、ペアローン、収入合算を検討している場合は、金融機関にそれぞれの借入条件や返済義務、団信、諸費用などを確認します。
可能であれば、夫婦のどちらか一方の収入が減った場合についても考え、返済負担を比較しておくと安心です。
具体的な融資可否や借入条件は金融機関の審査によって判断されるため、住宅購入前に相談しておくと準備を進めやすくなります。
iDeCoの掛金・加入区分は勤務先と運営管理機関へ
夫婦それぞれの勤務先には、企業年金制度や育児休業・時短勤務の条件、休業期間中の給与などについて確認しておきたいところです。
iDeCoについては、勤務先に企業型DCや確定給付企業年金などがあるかどうかによって、拠出できる掛金の上限が変わります。
また、退職などによって国民年金の加入区分が変わる場合には、iDeCoの変更手続きも必要となることがあります。
夫婦それぞれの加入資格や掛金上限、変更手続きについては、運営管理機関などに確認してください。
登記持分や税額については税理士・税務署へ相談する
住宅ローン控除や登記持分、贈与税、iDeCoの所得控除については、税務上の個別判断が必要です。
例えば、夫婦の購入資金の負担割合と登記持分をどのように設定するか、住宅ローン控除を夫婦それぞれが利用できるかといった内容については、税理士・税務署へ確認するとよいでしょう。
登記手続きに関する内容は、司法書士にも相談できます。
また、不動産会社やファイナンシャルプランナー(FP)には、住宅購入に必要な諸費用や住宅ローン返済と生活費の関係について相談する方法があります。
共働き夫婦の場合、家計全体では収入や資産を合わせて考えますが、住宅ローンの返済義務やiDeCoの所得控除は、それぞれの契約や加入条件に基づいて扱われます。
今の世帯年収だけでなく、夫婦の働き方が変わった後も無理なく暮らしを続けられるか。
住宅ローン返済、iDeCoによる老後資金の積立て、教育費、手元に残す預貯金を踏まえながら、夫婦で納得できる住宅購入と資金計画を考えてみてはいかがでしょうか。
参考情報
確認日:2026年10月23日
厚生労働省「2025年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
住宅金融支援機構「連帯債務(親子リレー返済、収入合算など)とペアローンの違いは何ですか。」
https://jhffaq.jp/jhffaq/flat35/web/knowledge4388.html
国民年金基金連合会「よくあるご質問」
https://www.ideco-koushiki.jp/faq/
国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
国税庁「No.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm
厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html
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