60代の住み替えとiDeCo|退職後の購入資金・売却代金・受取時期を考える
60代になり、これからの暮らしを考えたとき、現在の自宅から別の住宅への住み替えを検討する方もいらっしゃると思います。
子どもが独立して部屋を持て余すようになった、庭の手入れや建物の管理が負担になってきた、今後は買い物や通院がしやすい場所で暮らしたい。住み替えを考える理由は、ご家庭によってさまざまです。
一方、長年暮らしてきた自宅を売却し、新しい住宅を購入するとなると、お金の面で気になることも多いのではないでしょうか。
例えば、現在の自宅が3,000万円で売れたとしても、その全額を新居の購入資金に使えるわけではありません。住宅ローンが残っていれば完済する必要があり、売却に伴う諸費用もかかります。
仮に、売却諸費用を売却価格の8%と見込むと、3,000万円の売却では240万円です。さらに住宅ローンが500万円残っている場合、売却後の手取り額は2,260万円となります。
新居の購入にも物件価格以外の費用が必要です。売却と購入のタイミングによっては、仮住まいや引越しの費用が増えることも考えられます。
また、60代は退職金や公的年金、iDeCo(個人型確定拠出年金)の老齢給付金など、老後資金の受取りについても考える時期です。
iDeCoでは、受給可能年齢に達した後、一時金や年金形式などで資産を受け取ることができます。ただし、受取方法や時期によって税務上の取扱いが異なるため、住み替え資金に充てる場合には事前の確認が必要です。
60代の住み替えでは、自宅をいくらで売却できるかだけでなく、新居を購入した後にどの程度の生活資金を残せるかを考えたいものです。
この記事では、自宅の売却代金から住宅ローン残債や諸費用を差し引く方法、売り先行・買い先行の違い、退職金や預貯金の使い方について解説します。
iDeCoの受給可能年齢や受取方法、2026年12月の制度改正、自宅売却に関する税務上の注意点も紹介します。
なお、住宅の売却や退職金、iDeCoの受取りには税務上の判断が関係します。具体的な適用条件や税額については、税理士・税務署などへ確認してください。
60代で住み替えを考えるとき、何から確認する?
今の住まいを見直す理由と新居に求める条件
60代で住み替えを検討する場合、まずは今の住宅でどのようなことが気になっているのか、これからどのような暮らしをしたいのかを考えてみるとよいでしょう。
例えば、長年住んできた戸建住宅では、建物の修繕や庭の手入れなどが負担になってくることもあります。
子どもが独立し、以前ほど広い間取りが必要なくなったというご家庭もあると思います。
また、年齢を重ねてからの生活を考え、階段の少ない住宅や、買い物・通院に便利な場所への住み替えを希望する方もいらっしゃいます。
ただし、マンションへ住み替える場合には、戸建とは異なる費用や管理上のルールがあります。
管理費や修繕積立金、駐車場代などが毎月必要になるほか、将来的に修繕積立金が見直される可能性も考えておきたいところです。
新居を探す際には、間取りや立地だけでなく、今後も支払い続ける住居費について確認しておくと安心です。
売却と購入の両方に必要な費用を考える
住み替えでは、現在の住宅を売却する取引と、新しい住宅を購入する取引の両方が発生します。
そのため、新居の物件価格だけを見ても、住み替えに必要な資金の全体像は分かりません。
自宅を売却する際には、仲介手数料や契約書の印紙税、登記関連費用などがかかります。物件によっては、測量や残置物の処分などの費用が必要になる場合もあります。
住宅ローンが残っていれば、売却時に完済するための資金も確保しなければなりません。
一方、新居の購入では、物件価格に加えて登記費用や税金、仲介手数料などを確認します。
さらに、引越し費用や家具・家電の購入費、場合によってはリフォーム費用も見込んでおきたいものです。
今回は、売却時に必要となる費用を余裕を持って考えるため、売却価格の8%として計算します。
ただし、実際の売却諸費用が一律に8%かかるという意味ではありません。仲介手数料の条件や登記・測量等の必要性によって費用は変わります。
まずは現在の自宅の売却見込額と、新居の購入総額をそれぞれ確認し、住み替え全体でどの程度の資金が必要になるのか考えてみましょう。
自宅の売却代金から住宅ローン残債と費用を差し引く
売却価格と手元に残る金額は異なる
自宅の査定を受けて「3,000万円で売却できそうです」と説明されると、その金額を新居の購入資金として考えたくなるかもしれません。
しかし、売却価格と実際に手元へ残る金額は異なります。
例えば、住宅ローンが500万円残っている自宅を3,000万円で売却した場合、売却代金から住宅ローン残債を返済する必要があります。
さらに、仲介手数料や登記関連費用など、売却に伴う費用も差し引いて考えます。
今回の計算例では、売却諸費用を売却価格の8%と仮定します。
3,000万円の8%は240万円ですから、住宅ローン残債500万円と合わせて740万円を差し引くことになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自宅の売却価格 | 3,000万円 |
| 住宅ローン残債 | -500万円 |
| 売却諸費用(8%) | -240万円 |
| 売却後の手取り額 | 2,260万円 |
※売却諸費用8%は資金計画上の仮定です。売却による譲渡所得に対する税金、引越し費用などは含めていません。
この場合、売却価格3,000万円に対して、手元に残る金額は2,260万円となります。
住宅ローンを完済している場合は残債の返済が不要となるため、同じ売却価格でも手取り額は変わります。
また、売却諸費用は実際に必要な費用を確認し、個別に計算することが基本です。
特に仲介手数料は、不動産会社との契約条件によって異なります。測量や残置物処分などの費用についても、物件の状況に応じて確認する必要があります。
住み替え資金を考える際には、査定価格ではなく、住宅ローン残債と売却諸費用を差し引いた手取り額を把握することが出発点になります。
住宅ローンが残っている場合の完済と抵当権抹消
住宅ローン返済中の自宅でも、売却を進めることはできます。
一般的には、売却代金などを使って住宅ローンを完済し、金融機関の抵当権を抹消したうえで、買主へ所有権を移転します。
この手続きを進める際には、売却代金を受け取る日と、住宅ローンを完済する日を調整する必要があります。
住宅ローンの完済には金融機関ごとに手続きや申出期限があり、完済金額の確認も必要です。
例えば、フラット35では、金融機関の窓口で全額繰上返済を申し込む場合、原則として完済予定日の1か月前までに申し出ることが案内されています。
また、インターネットを利用した完済手続きでは、抵当権抹消に必要な書類が完済後すぐに交付されない場合があります。
売却に伴って抵当権を抹消する場合は、書類の交付時期も含めて金融機関との調整が必要です。
なお、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合には、不足分を自己資金で補うことや、金融機関との個別相談が必要になります。
住宅ローンが残っている方は、売却活動を始める段階で残高を確認し、不動産会社と金融機関に相談しておくと、手続きを進めやすくなります。
売り先行・買い先行で住み替え資金と日程はどう変わる?
住み替えでは、現在の自宅を先に売却する方法と、新居を先に購入する方法があります。
それぞれ資金の動きや日程が異なるため、ご自身の事情に合った進め方を考える必要があります。
自宅を先に売却する場合
現在の自宅を先に売却する方法は、一般的に「売り先行」と呼ばれます。
先に売却が決まれば、売却価格や手取り額を把握したうえで、新居の予算を考えやすくなります。
特に、現在の自宅の売却代金を新居購入の主な資金にする場合には、資金計画を立てやすい方法です。
一方、売却後すぐに希望する新居が見つからなければ、仮住まいが必要になる場合もあります。
例えば、自宅を引き渡してから新居の引渡しを受けるまでに数か月の期間が空くと、その間の家賃や引越し費用が増えます。
また、一度仮住まいへ引っ越し、その後新居へ移る場合には、引越しを2回行うことになります。
売り先行を選ぶ際は、売却価格だけでなく、引渡し時期についても考えておきたいところです。
新居を先に購入する場合
新居を先に購入する方法は「買い先行」と呼ばれます。
希望する住宅を確保してから現在の自宅を売却できるため、住み替え先をじっくり検討しやすいという特徴があります。
また、新居の引渡しを受けてから現在の自宅を売却する場合、仮住まいをせずに引っ越せる可能性があります。
ただし、現在の自宅が売れる前に新居購入の資金を準備する必要があります。
今回の計算例では、新居の購入総額を2,750万円と想定しています。
自宅売却後の手取り額は2,260万円ですが、買い先行の場合は、その資金を受け取る前に新居の購入代金を支払う必要があります。
そのため、手元の預貯金や金融機関からの借入れなどによって、先に購入資金を準備できるか確認しなければなりません。
また、住宅ローンが残っている場合には、旧居と新居の支払いが重なる可能性もあります。
買い先行を選ぶ際には、現在の自宅が予定どおりの価格や時期で売却できなかった場合も考えておくと、資金面の負担を把握しやすくなります。
決済日と引渡日を確認する
住み替えでは、売却と購入のタイミングが資金計画に大きく関係します。
例えば、現在の自宅を3,000万円で売却する契約を締結していても、売買代金の全額を契約日に受け取るわけではありません。
不動産売買では、一般的に売買契約時に手付金を受け取り、残代金は決済・引渡しの際に受け取ります。
一方、新居を購入する際も、売買契約時の手付金や決済時の残代金などを準備する必要があります。
そのため、自宅の売却代金を新居購入に充てる場合は、売却代金を実際に受け取る日と、新居の購入代金を支払う日が合っているかを確認しておきたいものです。
金融機関から融資を受ける場合には、融資実行日との調整も必要になります。
売り先行・買い先行のどちらを選ぶ場合も、不動産会社や金融機関と日程を確認しながら進めることをおすすめします。
退職金と預貯金を新居購入にどこまで使う?
自宅の売却から新居購入までの資金を計算する
ここでは、65歳の方が現在の戸建住宅を売却し、中古マンションへ住み替えるケースを考えてみます。
自宅の売却価格は3,000万円、住宅ローン残債は500万円、売却諸費用は売却価格の8%に当たる240万円と仮定します。
| 自宅の売却 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 3,000万円 |
| 住宅ローン残債 | -500万円 |
| 売却諸費用(8%) | -240万円 |
| 売却後の手取り額 | 2,260万円 |
次に、購入する中古マンションの価格を2,500万円、購入諸費用を250万円とします。
| 新居の購入 | 金額 |
|---|---|
| 中古マンション購入価格 | 2,500万円 |
| 購入諸費用 | 250万円 |
| 購入総額 | 2,750万円 |
この場合、新居購入総額2,750万円に対して、自宅売却後の手取り額は2,260万円です。
差額は490万円となるため、売却代金とは別に490万円を準備する必要があります。
今回の売却諸費用240万円、購入諸費用250万円は、説明のために設定した金額です。
売却諸費用は売却価格の8%、購入諸費用は物件価格の10%として仮定していますが、実際の金額は物件の状況や仲介手数料、登記費用、契約条件などによって異なります。
また、売却による譲渡所得に対する税金や引越し費用、仮住まい費用などは、この計算に含めていません。
売却代金を新居購入に利用する場合には、実際の入金時期も確認する必要があります。
新居購入後に残る預貯金も確認する
先ほどのケースで、住宅ローンとは別に預貯金が1,000万円あると仮定します。
新居購入の不足分490万円を預貯金から支払えば、残高は510万円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 住み替え前の預貯金 | 1,000万円 |
| 新居購入の不足分 | -490万円 |
| 住み替え後の預貯金残高 | 510万円 |
ただし、この510万円から引越し費用や家具・家電の購入費、入居後の設備修理費用などを支払う可能性もあります。
また、売却による譲渡所得に対して税金が発生する場合は、その納税資金も別途確保しなければなりません。
マンションへ住み替える場合には、管理費や修繕積立金、固定資産税なども継続して必要です。
退職後の生活では、公的年金などの収入を確認しながら、手元資金をどの程度残しておくか考えることも欠かせません。
例えば、年金収入だけでは生活費が不足する場合、預貯金から補う必要があります。
将来の医療費や介護費、住宅の修繕費などに備える資金も考えておきたいところです。
退職金をすでに受け取っている方は、その資金を新居購入に充てることも考えられます。
ただし、退職金や預貯金の大部分を住宅購入に使うと、住み替え後の生活資金が少なくなってしまいます。
今回の計算では、売却諸費用を8%と見込んだことで、売却後の手取り額は2,260万円となり、新居購入後の預貯金は510万円となりました。
諸費用の見積り方によって、購入後に残る資金が変わることが分かります。
新居を購入できるかどうかだけでなく、購入した後にどの程度のお金を残せるか。
60代の住み替えでは、この視点も持っておきたいものです。
iDeCoの老齢給付金はいつ・どのように受け取れる?
受給可能年齢と実際の入金時期は異なる
60代で住み替えを考えている方のなかには、iDeCoに積み立ててきた資産を、新居の購入資金に利用したいと考える方もいらっしゃると思います。
iDeCoの老齢給付金は、原則として60歳から受け取ることができます。
ただし、60歳から受け取るためには、原則として60歳到達時点で通算加入者等期間が10年以上必要です。
10年に満たない場合は、その期間に応じて受給可能年齢が61〜65歳となります。
また、60歳以上で初めてiDeCoに加入し、通算加入者等期間を持たない方については、加入から5年を経過した日から受給できる取扱いがあります。
受給要件を満たした後は、75歳になるまでの間で受給開始時期を選択できます。
ただし、受給可能年齢に達すると自動的にお金が振り込まれる仕組みではありません。
老齢給付金を受け取るには、記録関連運営管理機関に対して裁定請求などの手続きを行う必要があります。
例えば、iDeCoの資産評価額が600万円あるとしても、その金額をすぐに新居の購入資金として使えるとは判断できません。
受給可能年齢や受取方法に加え、給付手続きに必要な期間、税金、手数料、運用資産の評価額などを確認する必要があります。
今回の住み替えの計算例でも、iDeCoの資産は新居購入資金に含めていません。
新居の購入代金を支払う日が決まっている場合は、その日までに必要な資金を受け取れるか、運営管理機関などへ確認しておきたいところです。
一時金と年金形式では受取方法が異なる
iDeCoの老齢給付金には、一時金としてまとめて受け取る方法と、年金形式で分割して受け取る方法があります。
また、運営管理機関によっては、一時金と年金形式を組み合わせることも可能です。
| 受取方法 | 主な特徴 | 税務上の取扱い |
|---|---|---|
| 一時金 | まとめて受け取る | 退職所得 |
| 年金形式 | 一定期間に分けて受け取る | 公的年金等に係る雑所得 |
| 組合せ | 一時金と年金形式を併用 | それぞれの受取方法に応じた取扱い |
年金形式の場合は、原則として5年以上20年以下の有期年金として受け取る仕組みです。
運営管理機関によっては終身年金を選択できる場合もあり、具体的な受取方法や支払回数などは加入先によって異なります。
住み替えの購入資金としてまとまった金額が必要な場合には、一時金による受取りを考える方もいるでしょう。
一方、退職後の生活費を補う目的であれば、年金形式で受け取る方法も選択肢になります。
ただし、受取方法によって課税関係が異なり、ほかの年金や退職金の受給状況も関係します。
どの方法が適しているかは、住み替え資金だけでなく、その後の生活費や税務上の取扱いも踏まえて考える必要があります。
具体的な受取条件についてはiDeCoの運営管理機関へ、税額や受取方法による違いについては税理士・税務署へ確認してください。
2026年12月改正で60代のiDeCoはどう変わる?
60歳以降も一定の条件で積立てを続けられる
2026年12月1日から、iDeCoの加入可能年齢が引き上げられる予定です。
今回の改正では、国民年金の被保険者でない60歳以上70歳未満の方についても、所定の条件を満たせばiDeCoへ加入し、掛金を拠出できるようになります。
対象となるのは、iDeCoの加入者や運用指図者、企業年金からiDeCoへ資産を移換する方などです。
また、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないこと、企業型DCのマッチング拠出を行っていないことなどの条件があります。
2029年11月30日までの間には、一定の要件を満たす方に対する経過措置も設けられています。
60代になっても働き続ける方や、これまで積み立てたiDeCoの運用を続けている方にとっては、老後資金を準備する期間が広がる改正です。
ただし、70歳未満であれば誰でも新たに加入できるという仕組みではないため、ご自身の加入状況や年金の受給状況を確認する必要があります。
住み替え資金とiDeCoの積立て・受給は分けて考える
60代で住み替えを予定している場合、iDeCoの積立てを続けるか、老齢給付金を受け取るかは、資金計画に関係します。
例えば、退職後も働いて収入がある方は、加入資格を満たす範囲でiDeCoの積立てを継続することも考えられます。
一方、新居購入でまとまった資金が必要な場合には、受給可能年齢に達したiDeCoの老齢給付金を受け取る選択肢もあります。
ただし、老齢給付金の受給を開始すると、iDeCoの加入資格にも影響します。
積立てを続けることと、資産を受け取ることは、それぞれ別の判断として考えたいところです。
また、退職後に課税所得が少なくなった場合、iDeCoの掛金による所得控除の効果も現役時代とは異なります。
住み替えのために資金が必要な時期と、iDeCoの積立て・受給をどうするかを合わせて考え、必要に応じて運営管理機関や税理士・税務署へ相談してください。
自宅売却・退職金・iDeCoの税金で確認したいこと
60代の住み替えでは、不動産の売却と退職金、iDeCoの老齢給付金など、異なる種類の収入や資金が関係します。
税務上の取扱いもそれぞれ異なるため、資金を受け取る前に確認しておきたいところです。
自宅売却の3,000万円特別控除と新居の住宅ローン控除
自宅を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
これは、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除と呼ばれる制度です。
ここで注意したいのは、売却価格と譲渡所得の違いです。
例えば、自宅を3,000万円で売却した場合でも、3,000万円がそのまま譲渡所得になるわけではありません。
譲渡所得は、原則として売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費には、購入時の土地・建物の代金や購入に伴う費用などが関係し、建物については減価償却費相当額を考慮する必要があります。
また、譲渡費用には売却のために直接かかった仲介手数料などが含まれます。
一方、住宅ローン残債の返済は、売却後に手元へ残る現金を計算する際には関係しますが、譲渡所得の計算でそのまま取得費や譲渡費用として差し引くものではありません。
今回、売却諸費用を240万円と仮定していますが、この240万円すべてを税務上の譲渡費用として差し引けるという意味でもありません。
譲渡所得の計算では、支払った費用の内容を確認し、税務上の譲渡費用に該当するかを判断する必要があります。
3,000万円の特別控除についても、売却代金から3,000万円を差し引く仕組みではなく、要件を満たす場合に譲渡所得から控除する制度です。
また、住み替えで新居の住宅ローンを利用する場合には、住宅ローン控除との関係にも注意が必要です。
国税庁では、新居に入居した年、その前年または前々年に自宅売却の3,000万円特別控除を利用した場合、原則として新居の住宅ローン控除を適用できないことが示されています。
新居への入居後に旧居を売却し、3,000万円特別控除を利用する場合にも、一定期間の併用制限があります。
そのため、自宅売却の特例と新居の住宅ローン控除については、売却年と入居年を確認したうえで検討する必要があります。
どちらの特例を利用するかによって税額が変わる場合があるため、具体的な適用条件や税額については、売却・購入の契約前に税理士や税務署へ相談することをおすすめします。
退職金とiDeCo一時金の受取時期
退職金を受け取っている方や、これから受け取る予定の方は、iDeCoの老齢一時金との関係も確認しておきたいところです。
iDeCoの老齢給付金を一時金として受け取る場合、税務上は原則として退職所得として扱われます。
勤務先から受け取る退職金も退職所得に該当するため、双方を受け取る場合には、受取時期や勤続期間、iDeCoの加入期間などが関係します。
特に、2026年1月1日以降にiDeCoなどの老齢一時金を先に受け取った場合、その後に退職金を受け取る際の退職所得控除について、重複期間の調整対象が見直されています。
また、勤務先の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoの老齢一時金を受け取る場合にも、別の調整規定があります。
そのため、一時金を何歳で受け取るかによって、税務上の計算が異なる場合があります。
一方、iDeCoを年金形式で受け取る場合は、公的年金等に係る雑所得として扱われます。
公的年金などの受取額や、ほかの所得の状況も税額計算に関係します。
退職金とiDeCoの受取方法については、住み替えに必要なお金だけでなく、受取後の税負担や生活資金も踏まえて考える必要があります。
具体的な税額や受取時期の選択については、税理士または税務署へ確認してください。
税務相談の前に用意したい資料
自宅売却や退職金、iDeCoの税務相談をする際には、関係する資料を準備しておくと、具体的な確認がしやすくなります。
自宅の売却については、現在の売却予定価格や購入当時の売買契約書、取得費が分かる資料、売却時の費用などが参考になります。
住宅ローンを利用している場合は、残高や返済状況が分かる資料も確認しておきたいところです。
退職金については、受取額や受取予定日、勤続年数が分かる資料を用意します。
iDeCoについても、通算加入者等期間、資産評価額、受取予定時期などを確認しておくとよいでしょう。
自宅の売却益に対する課税と、退職金・iDeCoの受取時の課税は、それぞれ異なる仕組みです。
住み替えに関する資金をまとめて考える場合でも、税務上の判断は項目ごとに確認する必要があります。
60代の住み替えを決める前に相談したいこと
60代の住み替えでは、現在の自宅の売却から新居購入、引越しまで、複数の手続きが関係します。
特に、売却代金を新居購入に利用する場合は、金額だけでなく資金を受け取る時期にも注意したいところです。
不動産会社・金融機関へ確認する内容
まず、不動産会社には現在の自宅の売却見込額と、売却に必要な諸費用を確認します。
今回の計算例では売却価格の8%を諸費用として見込みましたが、実際には仲介手数料や登記関連費用、測量などの必要性を確認し、物件ごとに計算することが基本です。
住宅ローンが残っている場合は、その返済額を差し引いた後に、どの程度の資金が残るのか確認しておきたいものです。
また、新居の購入価格だけでなく、購入諸費用や引越し費用なども確認します。
売却と購入を同時期に進める場合には、それぞれの売買契約日や決済日、引渡日についても相談してください。
住宅ローン残債がある場合は、金融機関に完済金額や抵当権抹消の手続きを確認します。
新居で新たに住宅ローンを利用する場合には、年齢や収入、返済期間などの条件についても金融機関への相談が必要です。
iDeCoの運営管理機関・税理士・税務署へ確認する内容
iDeCoの老齢給付金を住み替え資金に利用したい場合は、加入先の運営管理機関や記録関連運営管理機関に受給可能年齢と受取方法を確認します。
また、裁定請求から実際の入金までの流れについても、あらかじめ聞いておくと安心です。
自宅売却の3,000万円特別控除や、新居の住宅ローン控除との関係については、税理士・税務署へ相談してください。
退職金とiDeCoの受取時期や税額についても、個別の確認が必要です。
また、不動産会社やファイナンシャルプランナー(FP)に、住み替え後の生活資金を含めた資金計画を相談する方法もあります。
60代の住み替えでは、現在の自宅をいくらで売却できるかに加え、新居購入後の生活をどのように続けていくかも考えておきたいものです。
売却代金、住宅ローン残債、売却・購入諸費用、退職金、預貯金、iDeCoの受取時期。
それぞれの金額と時期を確認していけば、住み替え後の生活をより具体的に考えられます。
自宅を売却して新居を購入することだけを目標にせず、その後も無理なく暮らせる住まいと資金計画を考えてみてはいかがでしょうか。
参考情報
確認日:2026年10月24日
住宅金融支援機構「繰上返済」
https://www.flat35.com/user/kuriage_hensai.html
国民年金基金連合会「iDeCo加入者・運用指図者の方へ|給付について」
https://www.ideco-koushiki.jp/join/benefits.html
厚生労働省「2025年の制度改正」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html
国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
国税庁「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm
辰巳地所のご紹介

株式会社辰巳地所は、市原市・千葉市を中心に、千葉県全域および東京都・神奈川県・埼玉県で不動産の売買仲介を行っています。
60代の住み替えでは、自宅の売却代金や住宅ローン残債、新居購入に必要な資金、退職後の生活費などを踏まえた計画が大切です。
当社では、現在の自宅の売却と新居購入をあわせたご相談を承っています。
売却については、周辺の成約事例や物件の状況を確認し、売却価格の目安や必要な諸費用、売却後の手取り額などをご案内します。
不動産売却時の仲介手数料は、一般的な上限額の半額を基本としてご相談いただけます。ただし、物件価格や取引条件によって料金が異なる場合があります。
また、新築戸建・リノベーションマンション・リフォーム済戸建を中心に、売主様から当社へ仲介手数料が支払われる物件については、買主様の仲介手数料を無料でご案内しています。
SUUMO・アットホーム・HOME’Sなどで見つけた物件も、当社で取り扱える場合があります。気になる物件のURLをお送りいただければ、仲介手数料無料の対象となるか、購入諸費用の目安とあわせて確認いたします。
当社では、住宅ローンアドバイザー・FPの視点から、売却・購入を伴う住み替えの資金計画についてもご相談を承っています。
物件調査や役所調査、登記事項証明書の確認、売買契約、重要事項説明、金融機関・司法書士との調整、決済・引渡しまで丁寧にサポートしています。
なお、住宅ローンの完済手続きや新たな融資条件については金融機関へ、自宅売却や退職金・iDeCoの税務上の判断については税理士・税務署への確認をご案内しています。
現在の自宅を売却するか迷っている段階でも構いません。60代からの住み替えや、今後の暮らしに合った住まい探しについて、お気軽にご相談ください。
ご相談はこちら
※Outlook・Hotmailのメールアドレスは、当社からの返信時に送信エラーが発生する可能性があります。恐れ入りますが、別のメールアドレスをご入力ください。










