タイで偽ヴィンテージTシャツ大量押収|古着ブームと仕入れ・転売の注意点
2026年8月、タイ・バンコクの倉庫で、偽のヴィンテージTシャツなどを含む大量の模倣品が押収されました。
押収された商品は、衣類やバッグ、帽子など約1万9,000点。日本でも人気の高いハーレーダビッドソンやナイキ、ディズニーなどの商標を侵害した疑いのある商品が含まれていました。
近年、日本では古着の人気が高まり、ヴィンテージTシャツなどの一部の商品は高額で取引されています。古着店の開業に加え、卸業者から古着を仕入れ、メルカリやYahoo!オークションで販売する方法に関心を持つ方もいるでしょう。
一方、古着の仕入れには、商品の状態や真贋(しんがん)、売れ残りなど、購入する前に知っておきたいリスクがあります。
実際、日本のファッションリユース市場は拡大しており、矢野経済研究所が2026年10月13日に発表した調査では、2025年の市場規模が1兆4,100億円に達したと推計されています。
この記事では、タイで発生した模倣品の大量押収事件を紹介するとともに、日本のファッションリユース市場の成長、古着の卸仕入れや転売で注意したい問題を、公的機関などの資料をもとに解説します。
タイで偽ヴィンテージTシャツなど約1万9,000点を押収
2026年8月25日、タイ特別捜査局(DSI)は、バンコク都ワントーンラーン区にある倉庫を捜索しました。
翌26日の公式発表によると、倉庫では商標権を侵害した疑いのある商品が保管・販売されており、裁判所が発付した捜索令状に基づいて捜査が行われました。
押収されたのは、衣類、バッグ、帽子など約18,678点。対象となった商標には、ハーレーダビッドソン、ナイキ、ミッキーマウス、ディズニー、BMWなどが含まれています。
DSIは、被害額を約2,000万バーツと推計しています。
日本の報道では、偽のヴィンテージTシャツが大量に見つかったことも紹介されました。ハーレーダビッドソンなどのヴィンテージTシャツには、本物であれば数万円で取引される商品もあると報じられています。
なお、DSIが公表した約18,678点という数字は、Tシャツだけではなく、バッグや帽子なども含めた押収品の総数です。また、押収時点の発表であり、個々の商品について裁判上の判断が確定したことを意味するものではありません。
タイは古着の集積地として知られ、日本の古着店のバイヤーが買い付けに訪れる場所の一つです。
今回の事件は、海外で古着を仕入れる際に、商品の外観や販売者の説明だけで真贋を判断する難しさを改めて示すものとなりました。
国内ファッションリユース市場は1兆4,100億円に拡大
古着を取り巻く市場は、日本でも成長を続けています。
株式会社矢野経済研究所が2026年10月13日に公表した調査によると、2025年の国内ファッションリユース市場規模は、小売金額ベースで1兆4,100億円と推計されました。
前年比では10.2%増となり、2026年も市場の拡大が予測されています。
2025年は前年比10.2%増、2026年も拡大予測
矢野経済研究所が公表した数値を比較すると、市場の成長が分かります。
| 年 | 市場規模 | 備考 |
|---|---|---|
| 2023年 | 1兆1,500億円 | 2024年公表の推計 |
| 2025年 | 1兆4,100億円 | 前年比10.2%増 |
| 2026年 | 1兆5,300億円 | 前年比8.5%増の予測 |
※2023年は同研究所の2024年公表資料、2025年・2026年は2026年公表資料によるものです。2026年の市場規模は予測値です。
2023年の1兆1,500億円と比較すると、2025年には市場が2,600億円拡大した計算になります。
さらに、2026年は1兆5,300億円まで成長すると予測されており、ファッションリユースが日本の消費市場で存在感を高めていることがうかがえます。
ただし、ここで注意したいのは、調査対象の範囲です。
矢野経済研究所が対象としている「ファッションリユース市場」には、中古衣類だけでなく、バッグ、革小物、靴、宝石・貴金属、時計、着物なども含まれています。
そのため、1兆4,100億円という数字を「日本の古着市場だけの規模」と捉えるのは正確ではありません。
また、市場規模は小売金額ベースで算出されており、フリマアプリなどの仲介事業者が受け取る販売手数料は含まれていません。
古着販売の市場動向を考える際には、こうした調査の対象範囲も理解しておきたいところです。
物価上昇と消費者行動の変化が市場を後押し
ファッションリユース市場が拡大している背景には、消費者の買い物に対する考え方の変化があります。
矢野経済研究所は、物価上昇や社会保険料の負担増によって、消費者が日々の支出を見直す傾向が強まっていることを市場拡大の要因の一つに挙げています。
新品よりも安く、状態のよい商品を購入できるリユース品は、衣服やファッション用品への支出を抑えたい方にとって、有力な選択肢になっています。
もう一つの特徴は、消費者が購入者であると同時に、販売者にもなれることです。
以前は、不要になった衣服を売るためにリサイクルショップなどへ持ち込む方法が一般的でした。
現在は、フリマアプリやインターネットオークションを利用すれば、個人でも商品を出品し、ほかの消費者へ直接販売できます。
不要な衣服を売却する人が増えれば、購入できる商品の種類も豊富になります。品ぞろえが充実することで新たな購入者が集まり、さらに取引が活発になるという循環が生まれています。
また、古着には新品とは異なる魅力があります。
すでに生産が終了したデザインや、独特の風合いを持つ商品など、価格の安さだけでは説明できない価値もあります。
ただし、市場規模が拡大していることと、古着全体の販売価格が上昇していることは別の問題です。
一部の希少なヴィンテージ商品が高額で取引される一方、一般的な古着には価格の安さが求められる商品もあります。
古着店の店舗数も拡大傾向
矢野経済研究所の調査でもう一つ注目したいのが、古着店の店舗数の拡大です。
同研究所は、専門企業から中古衣類を仕入れ、自社の店舗で販売する事業形態について、店舗数が拡大傾向にあると説明しています。
こうした仕組みは、企業から商品を仕入れ、消費者に販売することから「BtoBtoC」と呼ばれます。
一方、一般消費者から中古品を買い取り、店舗を通じて別の消費者に販売する「CtoBtoC」という形態もあります。
古着の販売といっても、商品の仕入れ方や販売方法はさまざまです。
| 販売方法 | 主な特徴 |
|---|---|
| 古着の実店舗 | 商品を直接確認でき、接客や店舗の雰囲気も価値になる |
| フリマアプリ | 個人でも出品でき、実店舗を持たずに販売できる |
| ネットオークション | 入札方式などを利用して商品を販売できる |
| 卸仕入れによる販売 | まとまった数量を仕入れ、自社店舗やネットで販売する |
矢野経済研究所は、実店舗の強みとして、商品を実際に手に取り、店員や古着そのものから情報を得られることを挙げています。
古着は同じブランドの商品でも、年代や状態、サイズ、使用感などが異なります。
写真だけでは分かりにくい風合いや生地の厚さ、着用した際の雰囲気などを確認できることは、実店舗ならではの価値でしょう。
ただし、店舗数が増えているからといって、新規開業した店舗の経営が順調であることまで示しているわけではありません。
仕入れの目利き、販売価格の設定、在庫管理、店舗運営など、事業者ごとの経営力も問われます。
また、衣類のリユースは資源循環の面からも注目されています。
大量生産・大量消費・大量廃棄からの転換が求められるなか、まだ使用できる衣服を再び流通させることは、廃棄物の削減につながります。
ファッションリユース市場の拡大は、節約志向だけでなく、商品の再利用が一般的な購買行動として広がっていることとも関係しているのです。
古着の卸仕入れで注意したい偽物と品質の問題
古着を販売する場合、商品の仕入れは事業の収益を左右する大きな要素です。
近年は、海外の古着倉庫や国内の卸業者から商品を仕入れ、実店舗やフリマアプリで販売する方法も紹介されています。
しかし、仕入れ価格が安いという理由だけで大量に購入すると、思わぬ損失につながることがあります。
卸業者から仕入れた商品が本物とは限らない
今回のタイの摘発事件で注目したいのは、商標権を侵害した疑いのある商品が、倉庫から大量に見つかったことです。
ヴィンテージTシャツには、生産年代やデザインによって高額で取引されるものがあります。
そのため、人気ブランドのロゴやキャラクターが使われた商品については、真贋を確認する必要があります。
特に注意したいのは、商品の外観が古く見えることと、実際に古い年代に製造された正規品であることは別だという点です。
古着らしい色あせやプリントのひび割れがあっても、それだけで製造年代や真正性を判断することはできません。
タグ、縫製、プリント、生地、販売当時の仕様など、複数の情報を確認する必要があります。
もっとも、こうした特徴も商品によって異なり、一般の購入者がすべての真贋を判断するのは容易ではありません。
高額な商品を扱う場合は、取り扱い実績のある販売店や専門の鑑定サービスなどを利用する方法も考えられます。
また、模倣品と、単に製造年代や商品説明が違う商品は区別が必要です。
商標権を侵害する偽ブランド品と、古い年代の商品として販売されたものの実際には新しい商品だった場合とでは、問題となる法律や取引上の責任が異なることがあります。
卸業者から購入したという事情だけで、商品の真正性が保証されるわけではないことを理解しておきたいところです。
大量仕入れでは商品の確認が難しくなる
古着の卸販売では、複数の商品をまとめて販売する方法があります。
大量に仕入れれば一着当たりの購入価格を抑えられる場合がありますが、その一方で、商品を個別に確認する負担も大きくなります。
古着には、汚れ、破れ、ほつれ、におい、色あせなど、商品ごとに状態の違いがあります。
仕入れ時に確認が不十分だと、購入後に販売できない商品が見つかることもあるでしょう。
特に、商品の現物を確認せず、写真や動画、卸業者の説明だけをもとに購入する場合は、実際に届く商品の品質や数量、返品条件を確認しておく必要があります。
さらに、大量仕入れでは、売れ残った商品も在庫として抱えることになります。
一着当たりの仕入れ価格が安くても、販売できない商品が増えれば、収益は悪化します。
仕入れ先を選ぶ際は、価格や商品数だけでなく、販売者の所在地、取引実績、返品・交換条件、商品の確認方法などを比較することが望ましいでしょう。
メルカリ・ヤフオクで古着を転売する場合のリスク
卸業者などから仕入れた古着を、メルカリやYahoo!オークションで販売する場合にも注意が必要です。
国民生活センターは2025年9月2日、「購入・出品した商品が偽物?!フリマサービスのトラブルに注意!」という情報を公表しました。
この資料では、購入した商品が偽物だった疑いがあるケースだけでなく、出品者が購入者から偽物だと指摘されるトラブルも紹介されています。
例えば、ブランドバッグを出品した人が、購入者から偽物だと指摘されて返品を受け入れたところ、別の商品にすり替えられて戻ってきたという相談事例があります。
古着の取引でも、商品の真贋を巡って購入者と出品者の認識が食い違うことは考えられます。
販売する側は、仕入れ先から本物と説明されていたとしても、購入者から商品の真正性や説明内容を確認されることがあります。
また、購入時の状態と返品された商品の状態が異なるといった問題も想定されるでしょう。
こうしたトラブルを防ぐためには、商品を出品する段階から、商品の写真や状態、仕入れ時の資料、取引内容などを適切に記録しておくことが役立ちます。
特に高額なヴィンテージ商品については、製造年代や真正性を十分に確認できないまま、正規品であることを保証するような説明を行わないよう注意が必要です。
国民生活センターは、フリマサービスの利用規約や取引の仕組みを理解してから利用するよう呼びかけています。
なお、日常生活で不要になった私物を売却する場合と、継続的に商品を仕入れて事業として販売する場合では、取引上の立場や適用されるルールが異なることがあります。
販売を事業として行う場合は、フリマサービスの利用規約だけでなく、関連法令も確認してください。
古着転売は副業として簡単に儲かるのか
YouTubeやSNSでは、古着を卸業者から仕入れ、フリマアプリなどで販売する方法が紹介されています。
店舗を借りずに始められる点や、少額から商品を仕入れられる点に魅力を感じる方もいるでしょう。
ただし、商品を安く購入できれば、そのまま利益が得られるというものではありません。
例えば、5,000円で古着を販売した場合を考えてみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 販売価格 | 5,000円 |
| 仕入れ代金 | 2,000円 |
| 販売手数料 | 500円 |
| 送料 | 750円 |
| 梱包資材 | 150円 |
| 差引額 | 1,600円 |
※説明のための仮定の計算例です。実際の販売手数料や送料は、利用するサービスや発送方法などによって異なります。
この例では、5,000円で売れても、仕入れ代金などを差し引くと1,600円しか残りません。
ここからさらに、商品を探す時間、洗濯や補修、撮影、出品、購入者とのやり取りなどにかかる手間も考える必要があります。返品や売れ残りが発生すれば、収益はさらに変わります。
商品が売れるまでの間は仕入れ資金が在庫に変わるため、資金繰りへの影響もあります。
古着販売で考えるべきなのは、一着をいくらで売れるかだけでなく、仕入れた商品全体でどれだけの利益を確保できるかという点です。
国民生活センターは2021年2月、転売ビジネスに関する消費者トラブルについて注意喚起を行っています。
公表された相談事例には、ネットで安く仕入れた商品をフリマサイトで高く販売する副業を紹介され、高額なサポート契約を結んだものの、商品が売れず、仕入れ費用だけが増えてしまったケースがあります。
また、返金保証があると説明されていたにもかかわらず、実際には条件を満たせず、返金を受けられなかったという相談も紹介されています。
この注意喚起は古着転売に限定されたものではありませんが、商品を仕入れて販売する副業に共通する問題です。
SNSや動画で紹介される販売ノウハウそのものが問題なのではありません。
ただし、「初心者でも簡単に稼げる」「仕入れれば確実に利益が出る」といった説明を受けた場合は、その根拠を確認したいところです。
特に、高額な教材やスクール、継続的なサポート契約への加入を勧められた際には、契約金額だけでなく、サービス内容、解約条件、返金保証の適用条件などを十分に確認する必要があります。
副業に関する高額契約や借金トラブルについては、関連記事「『簡単に稼げる副業』に注意|AI副業・高額スクール・借金トラブルの実例と見分け方」でも解説しています。
古着販売を始める前に確認したい法律と仕入れ先
古着を継続的に仕入れて販売する場合には、商品の真贋や収益だけでなく、法律上の確認も必要です。
まず、中古の衣類を買い取って販売するなど、古物営業法上の古物営業に該当する場合は、原則として古物商許可が必要になります。
自分で使用していた衣服を売却する場合とは扱いが異なるため、仕入れ方法や販売形態に応じた確認が欠かせません。
古物商許可が必要となる代表的なケースや申請上の注意点については、既存記事「古着せどりに古物商許可は必要?自分の服を売る場合との違いと副業勧誘の注意点」で詳しく紹介しています。
また、海外から古着を仕入れる場合には、模倣品の輸入規制にも注意が必要です。
財務省・税関によると、2022年10月1日から、海外の事業者が郵送等で日本へ送る商標権・意匠権侵害の模倣品については、個人使用目的であっても輸入できない制度が施行されています。
税関が知的財産侵害物品に該当すると判断した場合は、輸入が認められず、没収の対象となることがあります。
さらに、輸入者に事業性がある場合には、罰則が問題となる可能性もあります。
海外の卸業者から購入した商品だからといって、日本国内への輸入や販売が認められるとは限らないため、ブランド名やロゴを使用した商品を取り扱う際には慎重な確認が必要です。
商品の仕入れから販売までを事業として行う場合は、古物営業法、商標法、関税法など、それぞれの法律が関係することがあります。
具体的な許可の要否や輸入規制について不明な点がある場合は、所轄の警察署や税関、必要に応じて弁護士などの専門家に確認してください。
まとめ|成長する古着市場だからこそ、仕入れと販売には慎重さが必要
2026年8月、タイ・バンコクの倉庫で、偽ヴィンテージTシャツなどを含む約1万9,000点の模倣品が押収されました。
日本では古着人気が高まり、ファッションリユース市場も拡大しています。
矢野経済研究所の調査では、2025年の市場規模が1兆4,100億円に達し、2026年には1兆5,300億円まで成長すると予測されています。
古着店の増加やフリマアプリの普及によって、消費者が中古衣類を購入する機会だけでなく、個人が販売に参加する機会も広がりました。
一方、古着の卸仕入れには、商品の真贋や品質、在庫、販売後のトラブルなど、さまざまな問題が伴います。
特に、SNSや動画をきっかけに古着転売を始めようと考えている方は、売上だけでなく、仕入れに必要な資金や販売経費、売れ残りのリスクにも目を向けたいところです。
古着には、新品にはないデザインや風合いを楽しめる魅力があります。まだ使用できる衣服を再び流通させることは、資源の有効活用にもつながります。
そうした魅力を安心して楽しみ、事業として長く続けていくためにも、仕入れ先と商品の確認、無理のない資金計画、法律や取引ルールへの理解を大切にしたいものです。
参考情報
確認日:2026年10月31日
株式会社矢野経済研究所「ファッションリユース市場に関する調査を実施(2026年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/4141
株式会社矢野経済研究所「ファッションリユース市場に関する調査を実施(2024年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3584
独立行政法人国民生活センター「購入・出品した商品が偽物?!フリマサービスのトラブルに注意!」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250902_2.html
独立行政法人国民生活センター「『転売ビジネス』で稼ぐつもりが…簡単には儲からない!」
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210210_1.html
財務省・税関「模倣品の水際取締り強化!令和4年(2022年)10月1日施行」
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/d_010/index.html
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