登記受付帳とは?2026年10月の改正内容と相続登記後の営業DMへの影響
親から相続した土地や建物の登記を済ませたところ、突然、不動産会社から売却を勧める手紙が届いた。そんな経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「相続したことを、どうして知られているのだろう」「法務局から個人情報が漏れているのでは」と、不安に感じるのも無理はありません。
実は、こうした営業活動の情報源の一つとして、法務局が管理する「不動産登記受付帳」が利用されてきました。
この登記受付帳について、2026年10月1日、不動産登記規則等の改正が施行され、記録される情報の一部が削除されました。これまで確認できた「登記の目的」と「不動産所在事項」が、新たな受付帳には記録されなくなったのです。
今回の改正は、不動産の所有者や相続人のプライバシーとも関係する制度変更として注目されています。
この記事では、登記受付帳の仕組みや改正内容、相続登記後に不動産会社から手紙が届く背景、登記事項証明書や不動産取引への影響について、順を追って解説します。
登記受付帳とは?法務局が登記申請の受付を記録する帳簿
不動産登記受付帳とは、法務局が受け付けた不動産登記の申請を記録する帳簿です。
不動産登記規則第18条第1号に基づいて登記所に備えられており、登記申請がいつ受け付けられたのか、どの受付番号が付されたのかなどを管理する役割があります。
例えば、土地や建物の売買が行われると、通常は売主から買主への所有権移転登記を申請します。
親が亡くなり、子どもが実家を相続した場合にも、所有者の名義を変更するために相続登記を申請することになります。
こうした登記申請を法務局が受け付けた際、その受付情報を記録するのが登記受付帳です。
2026年9月30日までの申請分については、主に次の情報が記録されていました。
- 登記の目的
- 申請の受付年月日
- 受付番号
- 不動産所在事項
「登記の目的」とは、所有権移転、抵当権設定、抵当権抹消といった登記の種類を示すものです。
一方、「不動産所在事項」は、登記の対象となった土地や建物を特定するための情報を指します。
なお、登記の目的と登記原因は異なります。例えば、相続による所有権移転登記では、登記の目的は「所有権移転」、登記原因は「相続」です。
また、登記受付帳は、一般の方が不動産取引で取得する「登記事項証明書」とも異なります。
登記事項証明書は、特定の土地や建物について、所有者や抵当権などの登記内容を確認するための書類です。これに対し、登記受付帳は、登記所が申請を受け付けた記録を管理するものになります。
登記制度の基本的な仕組みについては、当社の「登記に公信力はない?不動産購入前に知っておきたい登記簿の見方と注意点」でも詳しく解説しています。
2026年10月1日から登記受付帳の何が変わった?
2025年10月10日に公布された「不動産登記規則及び企業担保登記規則の一部を改正する省令」(令和7年法務省令第49号)が、2026年10月1日に施行されました。
これにより、不動産登記規則第56条第1項に定められている登記受付帳の記録事項が変更されています。
改正前と改正後を比較すると、次のとおりです。
| 記録事項 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 申請の受付年月日 | 記録される | 記録される |
| 受付番号 | 記録される | 記録される |
| 登記の目的 | 記録される | 記録されない |
| 不動産所在事項 | 記録される | 記録されない |
今回の改正で削除されたのは、「登記の目的」と「不動産所在事項」の2項目です。
受付年月日と受付番号は引き続き記録されるため、登記申請の受付を管理するという基本的な機能は維持されています。
また、不動産登記規則第158条の14第2項に定められた相続人申出等の受付についても、「申出の目的」と「不動産所在事項」が記録事項から削除されました。
ここで注意したいのは、新しい様式が適用されるのは、2026年10月1日以降にされた登記申請分であることです。
9月30日以前の申請については、従来の様式で受付帳が作成されています。今回の改正によって、過去に作成された受付帳の記録が一律に削除されるわけではありません。
静岡地方法務局の案内でも、2026年10月1日以降の申請分について行政文書の開示請求があった場合には、変更後の様式による受付帳を開示することが明示されています。
なお、今回の様式変更は不動産登記受付帳に関するもので、商業・法人登記受付帳の様式に変更はありません。
なぜ登記受付帳の様式が変更されたのか
今回の改正について、法務省民事局は、登記事務のデジタル化によって不要になった記録事項を見直し、事務処理の適正化と効率化を図ることを趣旨として説明しています。
登記受付帳は、もともと登記所の内部で登記事務を円滑に処理するために設けられた帳簿です。
現在は登記事務のデジタル化が進み、従来の受付帳に記録していた情報の一部を、事務処理のために保持する必要性がなくなっています。
そこで、受付帳に記録する情報を必要な項目に絞ることになりました。
一方、改正に至るまでには、登記受付帳の利用方法について、個人情報やプライバシーの保護を求める意見も出されていました。
東京司法書士会は2025年7月2日、登記受付帳の記録事項や開示手続きの見直しを求める会長声明を発表しています。
声明では、登記受付帳の開示請求によって得られた情報が、不動産売却などの勧誘に利用されているとの指摘に言及しました。
登記受付帳に記録された情報を手がかりに、相続や競売などが行われた不動産を調べ、所有者に営業を行う手法が問題視されていたのです。
ただし、法務省が示した公式な改正趣旨は、登記事務処理の適正化と効率化です。
司法書士会が提起したプライバシー上の問題とは区別して理解する必要があります。
もっとも、今回の改正によって、登記受付帳から特定の不動産を探し出すことが難しくなったのは事実です。
その意味では、登記受付帳を利用した情報収集の方法にも変化をもたらす制度改正といえるでしょう。
相続登記後に不動産会社から手紙が届くのはなぜ?
相続登記を済ませたばかりなのに、知らない不動産会社から突然手紙が届く。
そのタイミングがあまりにも早ければ、「家族の事情をどこかで知られたのでは」と感じる方もいるでしょう。
不動産会社が相続した土地や建物を知る経路は一つではありませんが、従来の登記受付帳は、情報収集の手がかりとして利用されてきました。
これまで登記受付帳が情報収集に使われていた仕組み
2026年9月30日までの申請分については、登記受付帳から、申請された登記の目的や対象不動産を確認できました。
例えば、ある地域で所有権移転登記が申請されたことを調べ、その対象となった土地や建物を把握する方法です。
そこから個別の登記情報を取得すれば、所有権移転の原因が相続なのか売買なのか、現在の登記名義人が誰なのかといった情報を確認できます。
つまり、登記受付帳で登記が行われた不動産を探し、その後、登記事項証明書などの情報と照合することで、相続した不動産の所有者を把握することが可能だったのです。
このようにして得られた情報が、売却を勧めるダイレクトメールなどに利用されていたとの指摘があります。
ただし、登記受付帳そのものに、相続人の氏名や住所が一覧として掲載されていたわけではありません。
受付帳は、あくまでも登記申請の情報を管理する帳簿です。所有者の氏名や住所を調べるには、別途、個別の登記情報を確認する必要がありました。
また、不動産会社から届くすべての営業DMが、登記受付帳を情報源としているわけでもありません。
改正後は相続登記をした物件を探しにくくなった
2026年10月1日以降の登記申請分については、登記受付帳に「登記の目的」と「不動産所在事項」が記録されなくなりました。
これにより、受付帳を確認しても、どの土地や建物について、どのような登記が申請されたのかを従来のように把握することはできません。
例えば、市原市内で相続登記が申請された不動産を探そうとしても、新しい受付帳には対象不動産の所在事項が記録されていないため、従来の方法では特定が難しくなります。
不動産会社などが、受付帳を手がかりに新たな登記申請のあった物件を抽出する方法は、大きな制約を受けることになります。
一方、特定の土地や建物について登記事項証明書を取得する制度は、これまでどおり利用できます。
そのため、今回の改正によって、不動産の所有者に関する登記情報がすべて非公開になったわけではありません。
営業DMについても、別の情報源が利用される可能性は残ります。
ただ、登記受付帳を使って最近の登記申請を一覧的に調べることが難しくなった点は、今回の改正による大きな変化です。
改正後も登記受付帳の開示請求はできる?
登記受付帳は、改正後も法務局が管理する帳簿として存続しています。
また、行政文書としての開示請求制度が廃止されたわけでもありません。
不動産登記受付帳は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づく開示請求の対象となります。
この法律では、個人や法人を問わず、行政文書の開示を請求できる仕組みが設けられています。
開示請求を行う際には、対象となる行政文書を特定し、所定の請求書を提出するなどの手続きが必要です。開示の可否や範囲は、情報公開制度に基づいて判断されます。
ただし、2026年10月1日以降にされた登記申請については、変更後の様式で記録されているため、開示される受付帳にも「登記の目的」と「不動産所在事項」は記載されません。
つまり、開示請求そのものは引き続き可能でも、取得できる帳簿の内容が変わったということです。
なお、2026年9月30日以前の申請分については、従来の様式で記録されています。過去の受付帳の保存状況や開示の取扱いについては、対象となる法務局に確認してください。
また、行政文書の開示請求には所定の手数料があり、開示の実施方法によって費用が異なります。
登記事項証明書の交付請求とは別の手続きですので、どのような情報が必要なのかを明確にしたうえで、法務局の案内を確認するとよいでしょう。
登記事項証明書や不動産取引への影響は?
今回の改正は、不動産登記受付帳の記録事項に関するものです。
土地や建物の登記記録そのものを変更する制度改正ではありません。
不動産を購入するときや売却するときには、現在も登記事項証明書などを利用して、所有者や権利関係を確認できます。
例えば、中古戸建を購入する場合、対象不動産を特定したうえで、登記事項証明書から所有権や抵当権などの登記内容を確認します。
売却する際にも、売主が登記名義人となっているか、共有者がいるか、抵当権が残っているかなどを調査します。
これらの確認方法は、今回の登記受付帳の改正によって変更されたものではありません。
不動産取引で必要となる通常の登記調査と、受付帳を利用して最近登記が行われた不動産を探す方法は、もともと目的が異なります。
今回、主に影響を受けるのは後者です。
また、売買による所有権移転登記、相続登記、抵当権の設定・抹消といった登記申請の基本的な手続きも、今回の受付帳の様式変更によって廃止されたものではありません。
不動産を売買する方にとっては、従来どおり、登記名義や権利関係を確認しながら取引を進めることになります。
個別の不動産について、登記上の権利関係に疑問がある場合や、登記記録と実際の権利関係が一致しているか確認したい場合には、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続した不動産の所有者が知っておきたいこと
今回の改正は、相続した不動産の所有者にとっても関係のある制度変更です。
特に、相続登記後に見知らぬ不動産会社から営業の手紙が届き、不安を感じたことのある方にとっては、従来の情報収集の仕組みを知るきっかけになるでしょう。
ただし、相続した不動産について手紙が届いたからといって、すぐに売却を判断する必要はありません。
実家を残したい、しばらく管理を続けたい、将来家族が利用するかもしれない。そうした事情があるなら、ご自身やご家族の考えを優先して構いません。
営業の手紙に返事をする義務もありません。
売却を検討する場合でも、届いた手紙に書かれた内容だけで判断せず、不動産の状態や売却価格の目安、必要な費用などを確かめてから進めることが大切です。
一方で、今回の改正を理由に、相続登記そのものを先延ばしにする必要はありません。
相続登記の申請義務は、登記受付帳の改正後も変わっていません。
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した相続人は、原則として、相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。
2024年4月1日より前に発生した相続についても対象となり、すでに不動産の取得を知っていた場合は、原則として2027年3月31日までに申請する必要があります。
正当な理由なく期限内の申請を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性もあります。
相続人間の話し合いがまとまっていない場合などには、相続人申告登記を利用する方法もあります。ただし、遺産分割が成立した後には、別途必要となる登記手続きがあるため、状況に応じた確認が必要です。
詳しくは、当社の「相続登記義務化と不動産売却の注意点」で解説しています。
また、相続した土地や建物が遠方にあり、現地の状態を把握できていないという方もいらっしゃるでしょう。
不動産を売却するかどうかは、相続登記とは別に考えてよい問題です。
例えば、千葉県内にある実家や空き家についても、まずは登記名義、建物の状態、道路や境界などを確認し、管理を続ける場合と売却する場合を比較するところから始められます。
当社では、「内房・外房エリアの不動産を相続した県外在住の方からのご相談が増えています」という記事でも、相続不動産を調査・売却する際の考え方をご紹介しています。
相続登記と不動産の売却は、それぞれ異なる目的を持つ手続きです。
必要な登記は適切に進めながら、不動産を今後どうするかについては、ご自身の事情に合わせて判断していくとよいでしょう。
まとめ|登記受付帳の改正で変わったこと、変わらないこと
2026年10月1日に施行された不動産登記規則等の改正によって、不動産登記受付帳の記録事項から「登記の目的」と「不動産所在事項」が削除されました。
これまで登記受付帳を利用して、最近登記が行われた不動産を調べていた場合には、従来と同じ方法で情報を収集することが難しくなっています。
特に、相続登記をした不動産の所有者を探すために受付帳を利用していた手法には、影響が生じると考えられます。
一方、登記受付帳そのものや行政文書の開示請求制度は存続しており、登記事項証明書の取得制度にも変更はありません。
不動産の所有者や相続人にとって大切なのは、今回の改正で何が変わり、何が従来どおり利用できるのかを正しく理解することです。
相続した不動産について、突然営業の手紙が届くことに戸惑う方もいらっしゃるでしょう。しかし、売却するか、保有するか、今後どのように利用するかを決めるのは所有者自身です。
登記制度の仕組みを理解したうえで、必要な手続きを進め、ご自身やご家族が納得できる方法を選んでいただければと思います。
参考情報
確認日:2026年10月28日
法務省民事局「不動産登記規則等の一部を改正する省令案の概要」
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000294998
e-Govパブリック・コメント「不動産登記規則等の一部を改正する省令案の概要に関する意見募集結果について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040CLASSNAME=PCM1040&Mode=1&id=300080327
静岡地方法務局「不動産登記受付帳の様式変更について」https://houmukyoku.moj.go.jp/shizuoka/page000001_03148.html
e-Gov法令検索「不動産登記規則」
https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
東京司法書士会「国民の個人情報やプライバシーの保護の観点から、不動産登記受付帳の記録事項や開示手続の在り方の見直しを求める会長声明」https://www.tokyokai.jp/news/2025/07/post-602.html
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
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